英国の情報誌Time Outが2026年の「世界のベストストリートフード都市」ランキングを発表し、ホーチミンが初めて1位に立った。バンコクは9位、常連だったシンガポールは10位内から姿を消した。次の旅で屋台街をどう歩くか迷っているベトナム好きにとって、この結果は行き先を絞る手がかりになる。
ランキングは市民の満足度調査に専門家の評価を組み合わせたもので、ホーチミンの支持率は63%。上位は僅差で、この街の何が評価されたのかを具体の料理とエリアからほどいていく。
ホーチミンが63%で初の首位、ハノイも7位に入った
Time Outは2026年8月4日にランキングを公開した。都市生活者への聞き取りに専門家パネルの採点を加えた指標で、料理の質・価格・食べ方の多様さを住民の実感から測っている。ベトナムからは2都市が10位内に入り、ホーチミンが最高評価を得た。
| 順位 | 都市 | 支持率 |
|---|---|---|
| 1 | ホーチミン(ベトナム) | 63% |
| 2 | クアラルンプール(マレーシア) | 62% |
| 3 | ジャカルタ(インドネシア) | 59% |
| 4 | 台北(台湾) | 59% |
| 5 | メキシコシティ(メキシコ) | 58% |
| 7 | ハノイ(ベトナム) | 57% |
| 9 | バンコク(タイ) | 56% |
| 10 | ムンバイ(インド) | 55% |
出典:Time Out 2026年ランキング。支持率は住民調査に基づく満足度の割合。
路地と市場が評価の中心、6軒のミシュラン星も後押し
この調査でホーチミンを押し上げたのは、観光名所ではなく生活圏の食だった。専門家の採点は70%前後、地元住民が地域の食を「おいしい」「非常においしい」と答えた割合は7割超に達したとされる。値段の手頃さと、路地(ヘム)から市場、街角の屋台まで食べ方の幅が広いことが数字に表れている。
料理ではフォー、バインミー、フーティウが軸に挙がる。エリアでは中心部のベンタイン市場に加え、華人街のチョロン、3区を南北に貫くナムキーコイギア通りが名前を連ねた。高級店の層も厚く、街には6軒のミシュラン星付きレストランがある。その象徴が、ベトナムの屋台料理をファインダイニングに仕立てるアナン・サイゴンだ。和牛を挟んだ8ドルのバインミーが論争を呼んだ一皿は、路上の味が価格の階段を駆け上がる今のサイゴンを映している。
地元の受け止めも評価を裏づける。ホーチミン料理協会で広報を担う副会長のズオン・タイン・ダオ氏は、この街には現代の旅行者が求める要素——おいしさ、多様さ、アクセスのよさ、手頃な価格、生き生きとした体験——がほぼ一通りそろっている、と首位の理由を説明する。全国から人が集まる街に各地方の味が持ち込まれ、路地の選択肢が厚くなったことがその土台にある。VnExpress International読者を対象にしたベトナム国内の食都市投票でも、約1,600票のうちホーチミンが1位、ハノイが2位に並んだ。
バンコクとシンガポールを分けたもの
今回の結果で目を引くのは、東南アジアの屋台の代名詞だった2都市の後退だ。バンコクは56%で9位、シンガポールは10位内に残らなかった。両都市の屋台文化が衰えたわけではない。差を生んだのは「日常の食がどれだけ路上に残っているか」という評価軸だ。
シンガポールの食は屋外の屋台から屋内のホーカーセンターへ移り、衛生と快適さと引き換えに路上の熱気が薄れた。バンコクは観光地の屋台整理が進み、旅行者が集まる通りほど「見せる屋台」の色が濃くなっている。対してホーチミンは、住民が毎朝しゃがんでフォーをすする光景がそのまま観光資源になっている。作られた屋台街ではなく、生活のなかの食が評価された点で、この1位は他都市と質が違う。
日本人旅行者はどう歩くか
数字の裏づけを実際の一食に落とすなら、動線は三段構えがいい。まず朝はベンタイン市場周辺で麺類を一杯。観光客慣れした店が多く、値段も指差しで通じる。次に昼から夕方にかけて、大通りから一本入った路地の屋台へ。地元客の回転が速い店は当たりが多く、客の大半が地元の人なら味は間違いないという現地の目安が役に立つ。夜はチョロンで華人系のフーティウや点心を試すと、同じ街でも別の食文化に触れられる。
衛生と価格の勘所も押さえておきたい。屋台選びは、注文が入ってから火を通す店、氷ではなく熱い出汁で出す麺を基準にすると外しにくい。会計は先に値段を確認してから頼めば、旅行者価格のすれ違いを避けられる。ハノイと比べたいなら、世界7位ハノイ旧市街の朝昼晩の歩き方も合わせて読むと、南北で屋台の顔が違うことがわかる。
次の旅の一皿を決める
ホーチミンの1位は、ミシュランの星でも観光向けの屋台街でもなく、住民が日々食べているものが世界の物差しで上位に立ったことを示している。旅程を組むなら、ベンタイン市場を起点に路地とチョロンへ足を延ばし、朝・昼・夜で店を変えるだけで、この街が評価された理由をひと通り味わえる。地図に載る名店を追うより、地元客が並ぶ一杯を狙う——それがサイゴンの屋台を最も深く楽しむ順路になる。
