ベトナム鉄道公社(VNR)が、古都フエと中部の秘境フォンニャを結ぶ観光列車を2026年9月1日に走らせる。世界最大の洞窟ソンドンを擁するフォンニャ・ケバン国立公園の玄関口まで、これまで路線バスや貸切車でつなぐしかなかった約190kmを、朝発・昼着の1本の列車で移動できるようになる。中部を北上する旅の組み立てが、この1本で大きく変わる。
フエ7時15分発、トーロック11時55分着の昼行ルート
下り列車HQ2はフエ駅を7時15分に出発し、ドンハ、ミーチャック、ドンホイを経てトーロック駅に11時55分に到着する。所要は約4時間40分。上り列車HQ1はトーロック駅を13時15分に出て、フエ駅着が17時25分(約4時間10分)。往復とも日中に走るので、車窓を目当てにした乗車が前提の設計だ。夜行寝台で稼ぐ従来のベトナム統一鉄道とは狙いがはっきり違う。
終点トーロックはフォンニャの町に近い駅で、ここがソンドン洞窟や天国の洞窟へ向かう拠点になる。途中のドンホイには空港があり、ハノイやホーチミンから空路で入って列車に乗り継ぐ、あるいはフエから列車で北上する、という二方向の使い方ができる。
8両304席、360度回転シートとVIP車で車内が主役
編成は8両・定員304名。内訳は360度回転するソフトシートを備えた普通車が5両(各56席)、VIP車が1両(24席)、地域文化を紹介するコミュニティ車と、サービス・エンターテインメント車が各1両。座席が回転するのは、進行方向や車窓に合わせて向きを変えられるためで、景色重視の列車らしい仕様だ。
車内では、地域の一村一品運動(OCOP)で選ばれた名産品の展示販売、中部各地の郷土料理、伝統芸能の実演などが提供される。内装はフエ王宮の金褐色、フォンニャ・ケバンの緑、クアンチの平和のモチーフを取り入れたという。移動そのものを中部周遊の体験に仕立てる発想で、クアンチ省人民委員会のホアン・スアン・タン副委員長は「地域の観光協力戦略に沿い、文化遺産の価値を高める」と位置づけている。
片道360,000ドン(約2,100円)から。日本人旅行者の予算感
料金は片道360,000ドン(約2,100円、米ドル建てで約13.72ドル)から。移動時間4時間超で2,000円台という水準は、同区間を車でチャーターする場合と比べても割安で、車窓と車内体験まで込みなら十分に元が取れる価格帯だ。
| 項目 | 内容 |
|---|---|
| 運行開始 | 2026年9月1日 |
| 区間・距離 | フエ〜トーロック 約190km(停車:フエ/ドンハ/ミーチャック/ドンホイ/トーロック) |
| 時刻 | 下りHQ2 フエ7:15→トーロック11:55/上りHQ1 トーロック13:15→フエ17:25 |
| 編成 | 8両304席(普通車5・VIP車1・コミュニティ車1・サービス車1) |
| 料金 | 片道360,000ドン(約2,100円)から |
| 運営 | ベトナム鉄道公社(VNR) |
開業直前の時点では便数や座席種別ごとの料金、正式な発売方法は公表しきられていない。VIP車と普通車で価格差が出る可能性が高いので、確定した運賃・予約手段はベトナム鉄道の公式チャネルで乗車前に確認してほしい。ドンホイ空港と組み合わせれば、フエ入り→列車でフォンニャ→洞窟観光→ドンホイから空路で帰る、という中部だけで完結する行程も引ける。
1本の列車がつなぐ4つの世界遺産級スポット
この列車の値打ちは、沿線に世界遺産クラスの見どころが連なる点にある。起点フエには世界遺産のフエ建造物群、途中のクアンチには古城とベトナム戦争の地下要塞ヴィンモックトンネル、終点側にはフォンニャ・ケバン国立公園と、その内部にある世界最大の洞窟ソンドンが控える。王朝文化・戦争史・カルスト地形の巨大洞窟という毛色の違う遺産を、乗り換えなしの1日で串刺しにできるルートは中部でも他にない。
ソンドン洞窟自体は許可制の高額トレッキングで狭き門だが、天国の洞窟やフォンニャ洞窟はボートや徒歩で気軽に入れる。列車で終点まで来て、翌日フォンニャの洞窟群を回る——という定番の2泊3日が、これまでより安く、乗り換えの手間なく組めるようになる。
まとめ:中部縦断の新しい入口
ダナン・ホイアンに偏りがちだった日本人の中部旅行に、フエから北のフォンニャという選択肢がまっすぐつながる。9月1日以降にフエへ入るなら、朝7時15分発の遺産列車を軸に旅程を引き直す価値がある。
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