K-POPグループWINNERのイ・スンフンが7月上旬にハノイを訪れ、SNSで「ベトナムで一番うまいフォーはどこ?」とファンに問いかけた。返ってきた答えは、一つの店名に集中する。西湖(タイホー)地区の下町にあるフォー・ホー・ロイ(Phở Hồ Lợi)だ。看板らしい看板もなく、朝しか開けないこの店が、韓国スターの一言で一気に注目を集めた。ハノイのフォーはすでに17時間煮込みの鶏スープでミシュランに載る高級店まで生まれているが、ホー・ロイが人を引きつける理由は真逆の「飾らなさ」にある。旅行者が実際に行って、いくら払って、どう味わうのかを整理した。
「ベトナム一のフォーはどこ?」WINNERの一問がきっかけ
発端は、7月2〜4日にハノイの国立コンベンションセンターで開かれた韓国ブランド見本市「KBEE & ASEAN K-Food Fair 2026」だった。3日間で2万人超が訪れたこのイベントに合わせてWINNERのイ・スンフンとカン・スンユンが来越し、到着早々に地元のフォー店へ直行した。
二人はミーディン地区の老舗Phở Thìnで湯気の立つ一杯を平らげ、その様子を動画に撮ってInstagramへ投稿。ベトナム語で「ベトナムで一番のフォーはどこ?」と添えた。1992年生まれのスンフンは自らを「ベトナムの婿」と名乗るほどの知越派で、流暢なベトナム語とローカルネタで現地ファンの心をつかんできた人物だ。その彼の問いかけに、コメント欄は判で押したように同じ店名を返した。それがホー・ロイだった。
看板のない下町店、フォー・ホー・ロイの正体
店は西湖の北側、プートゥオン(Phú Thượng)地区の路地の奥にある。始まりは1990年代、ロイさんという店主が屋台の一杯から起こした小さな商いで、そこから世代を越えてハノイっ子の「行きつけ」として根を張ってきた。ガイドブックにはほとんど載らず、目立つ看板も出していない。それでも朝から地元客が列をつくる、典型的な「知る人ぞ知る」の一軒だ。
売りは牛骨からじっくり引いた澄んだスープにある。元記事によれば煮込みは18時間に及び、焼いた生姜と玉ねぎを合わせて雑味を抑える。過剰な調味に頼らない、北部ハノイらしい上品な味づくりで、薄切りの牛肉と揚げたてのクアイ(揚げパン)を添えて出す。派手さで勝負する店ではなく、スープの一点で客を通わせてきた。
一杯30,000ドンから、メニューと値段の目安
気になる値段は良心的だ。一杯おおむね30,000〜80,000ドン(VND)。日本円にすると、1万ドンが約60円なので、180円前後から、高くても500円弱に収まる。部位や仕立てで細かく分かれ、店頭の目安は次の通り。
| メニュー | 内容 | 価格(VND) | 日本円の目安 |
|---|---|---|---|
| フォー・ボー・タイ | 牛の生肉(レア) | 45,000〜50,000 | 約270〜300円 |
| フォー・ボー・ガウ | バラ肉の脂身 | 50,000〜55,000 | 約300〜330円 |
| フォー・ボー・ナム | ブリスケット(肩バラ) | 50,000 | 約300円 |
| フォー・ボー・ソットヴァン | 牛肉の赤ワイン煮込み | 60,000〜65,000 | 約360〜390円 |
ベトナムのフォーは世界的にも別格の扱いで、2026年のTasteAtlas世界ランキングでは麺料理の世界2位にフォーが選ばれている。その本場で、日本円にして数百円で本格的な一杯にありつけるのは、西湖まで足を延ばす十分な理由になる。
地元客とファンが語る、この一杯の磁力
ホー・ロイをめぐる声を拾うと、味そのものより「通い続ける理由」へ話が向かう。
- スンフンへのファンの返信——コメント欄はほぼ全員がホー・ロイを推薦し、「ハノイで一番なら迷わずここ」という声が並んだ。
- 地元の常連——「配給時代のような行列」と評されるほど朝の混雑が名物で、看板がなくても客足が途切れない。
- フォー愛好家——澄んだスープと揚げたてのクアイの組み合わせを、この店ならではの朝の楽しみとして挙げる声が目立つ。
スンフン自身は今回で8年連続の来越とされ、バインミーの食べ方まで現地流という知越ぶりだ。その彼が投げた問いに集まった答えだからこそ、店名の信頼度が跳ね上がった。
旅行者はこう使う——西湖の朝を組み立てる
在住者にも旅行者にも、この店には具体的な「使い方」がある。押さえどころは3つだ。
第一に、「朝だけ・看板なし」を逆手に取ること。営業は午前6時から10時30分まで。昼以降しか動かない旅程だと、確実に閉まっている。裏を返せば、観光客の動線から外れているぶん、早朝に組み込めば行列のピーク前に滑り込める。西湖は蓮の名所でもあり、早朝の散歩や写真とセットにすれば、フォーが観光そのものの一部になる。
第二に、有名人バズは「行くなら早いうち」の合図だという読み方。スンフンの投稿以降、店には新しい客が押し寄せている。こうした店は静けさそのものが価値でもあるので、混雑が定着する前の平日早朝が狙い目だ。話題になった直後こそ、ローカルの空気が残る最後のタイミングかもしれない。
第三に、ローカル店の見極め方を一つ持っておくこと。看板のなさや観光ガイド不掲載は、むしろ地元密着の裏返しになりうる。客席の多くが地元客で埋まっているか——それが失敗しない店選びの目安になるという現地の経験則は、ホー・ロイのような下町の一軒にこそ当てはまる。
フォー・ホー・ロイ 基本情報
| 項目 | 内容 |
|---|---|
| 店名 | Phở Hồ Lợi(フォー・ホー・ロイ) |
| 住所 | 28 Ngõ 209 An Dương Vương, Phú Thượng, Tây Hồ, Hà Nội(西湖区プートゥオン) |
| 営業時間 | 6:00〜10:30(午前のみ) |
| 価格帯 | 一杯 30,000〜80,000 VND(約180〜480円) |
| 名物 | 18時間煮込みの牛骨スープ/薄切り牛肉/揚げたてのクアイ |
| アクセス | 旧市街から西湖北岸へ。タクシーやGrabでの移動が現実的 |
まとめ——次の朝、西湖まで足を延ばす価値
韓国スターの何気ない一問が、看板もない下町のフォー店を一躍主役に押し上げた。ホー・ロイの強みは話題性ではなく、18時間のスープと地元客の支持という中身にある。旅行者が今すぐ動くなら、確かめるべきは3点だ。まず営業が午前6時〜10時30分に限られること。次に一杯30,000ドンから、日本円で数百円という価格。そして西湖北岸という、旧市街からひと足延ばす立地。朝の予定を1時間早めて、Grabで西湖へ向かう——それだけで、ガイドブックに載らないハノイの一杯に手が届く。次にハノイを歩く朝は、この店を旅程の先頭に置いてみてほしい。
