ベトナム南部フーコック島で、魚醤(ヌクマム)づくりを6世代にわたって守る家がある。木樽でカタクチイワシと塩だけを10〜12か月以上発酵させる昔ながらの製法は、いまも一部の生産者に受け継がれている。フランスやドイツなど欧州へ輸出する老舗もある一方、後継者難で組合の操業数はこの10年で大きく減っている。
カタクチイワシと塩だけ、木樽で1年
伝統的なヌクマムは、新鮮なカタクチイワシと塩だけで仕込む。冷凍魚は使わず、添加物も入れない。発酵にはリツェア材の木樽を籐のロープで締めたものを使い、10〜12か月以上ねかせる。じっくり熟成させた魚醤はたんぱく質の濃度が高く、標準的な製品より凝縮した味わいになるという。
1895年創業、生産の半分を欧州へ
老舗「ヌクマム・フンタイン(Hung Thanh)」は1895年創業。当主のダン・ディン・ヴァンさん(69)の代まで家業を継ぐ。年間およそ200万リットルを生産し、その半分を輸出する。輸出先はフランス、ドイツ、オランダなど欧州で、唯一の市場が欧州だ。EUの輸出認可基準もクリアしている。下の表に要点をまとめた。
| 項目 | 内容 |
|---|---|
| 製法 | カタクチイワシ+塩のみ/リツェア材の木樽/籐で締結 |
| 発酵期間 | 10〜12か月以上 |
| フンタイン創業 | 1895年 |
| 年間生産量 | 約200万リットル(うち約半分を輸出) |
| 輸出先 | フランス・ドイツ・オランダなど欧州 |
| 文化遺産 | 2022年に国の無形文化遺産に認定 |
6世代の担い手と、途絶えかけた継承
46歳のハー・タン・タイさんの家は、19世紀半ばから6世代にわたって魚醤を作ってきた。だがタイさんは独身で後継者が決まっていない。フンタインのヴァンさんも、2人の息子は家業に関心がなく、弟が「あと20〜30年」続けられるかもしれない、という状況だ。両者とも若い世代に魚醤の魅力を伝える活動に力を入れている。
組合員は半減、操業はわずか
フーコック魚醤組合の登録会員は45で、実際に操業しているのは約20にとどまる。10年前の100から大きく減った。手間と時間のかかる伝統製法を続ける生産者は限られ、産地全体が縮小傾向にある。2022年には国の無形文化遺産に認定されたが、担い手の確保が課題として残る。
「国産発酵調味料」を考える視点
フーコックの魚醤は、原料と塩だけで1年かけて仕込む発酵食品だ。手間をかけた一次産品が欧州市場で評価される一方、継承の難しさが浮き彫りになっている点は、地域の伝統食を扱う作り手にとって示唆に富む。製法の価値をどう次世代と海外に伝えるかが、産地存続のカギになる。
まとめ
6世代続くフーコックの魚醤は、木樽発酵と欧州輸出という強みを持ちながら、後継者難と組合の縮小という現実に直面している。2022年の無形文化遺産認定は追い風だが、担い手の確保はこれからの課題だ。原料と時間に向き合う伝統製法を、どう次の世代へ橋渡しするかが問われている。
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出典:The Star / The craft lives on: Vietnam fish sauce / The Star / ASEAN Plus News
