ホーチミン中心部で35年続いた老舗食堂「ドンダット(Đồn Đất)」が、2025年末をもって閉店した。ラップ調で会計を読み上げる女将の独特な接客で知られた店で、客への別れの言葉に女将は涙を見せた。再開発が進むサイゴン中心部で、路地裏の食文化が静かに姿を消しつつある。
35年続いた老舗が閉店
女将のトゥーさんがかつてのドンダット通り(現・タイヴァンルン通り、現在はサイゴン坊に属する)で営んできた食堂が、35年の歴史に幕を下ろした。閉店は2025年12月31日を過ぎてからで、客からの労いの言葉に、女将は思わず涙ぐんだという。20年以上にわたり親しまれてきた店だった。
「ラップで会計」の名物女将
この店が広く知られたのは、会計時に金額をラップ調で読み上げる女将の独特なスタイルだった。テンポよく注文と金額を歌うように告げる姿は常連の楽しみで、店の名物になっていた。料理だけでなく、女将のキャラクターそのものが店の価値を形づくっていた。
女将は閉店について、「何十年も働いてきて、そろそろ休みたい。引退の時期でもある」と語り、加えて「時代の新しい変化に合わせて自分も変わらざるを得ないが、年齢を重ねたいま、ここで立ち止まるのが適切だ」と心境を明かした。個人の引退と、街の変化の両方が背景にある。
店の概要
| 項目 | 内容 |
|---|---|
| 店名 | ドンダット(Đồn Đất) |
| 所在地 | 旧ドンダット通り/現タイヴァンルン通り(サイゴン坊) |
| 営業年数 | 35年 |
| 閉店時期 | 2025年12月31日以降 |
| 名物 | ラップ調で会計を読み上げる女将の接客 |
常連・地元の反応
- 長年通った客から惜しむ声が相次ぎ、別れを告げに訪れる人が続いた
- ラップ会計という唯一無二の接客を懐かしむ声がSNSで広がった
- 中心部で老舗が次々と店を畳む流れの一つとして受け止められた
日本の読者への影響
サイゴンの路地裏食堂は、味だけでなく店主の人柄や物語が旅の記憶になる。ドンダットのような名物店の閉店は、訪ねたい店があるなら早めに足を運ぶべき、という教訓でもある。再開発でテナント返却が進む中心部では、こうした老舗が静かに姿を消すケースが増えている。
いまも息づくローカル食を味わうなら、路地裏の貝専門店「Ốc Đào」や、夜の食ストリートを巡るのがおすすめだ。ハノイ「眠らない食の通り」タドゥイタンのように、地元の生活に根ざした食の現場は、いまのうちに体験しておきたい。
都市の食文化への波及
サイゴン中心部では、地価の上昇やテナント返却を背景に、長年続いた個人店の閉店が相次いでいる。路地店「ネムチュア・ザン」のように、若い世代が支える店が残る一方で、世代交代や引退で消える名店も多い。路地裏の食文化は、街の変化と隣り合わせにある。
まとめ
ドンダットの閉店は、ラップ会計という名物とともに35年の歴史を閉じた。女将の引退と街の再開発が重なった結末だが、こうした個性ある店が街の記憶を形づくってきた。次にサイゴンを訪れるなら、気になる老舗には早めに足を運びたい。
