甘酸っぱいいちごに、唐辛子と干しエビの粉末塩をたっぷりまぶして食べる。ベトナムの路上で昔から見かける光景だが、TikTokの短尺動画で火がつき、レビュー動画が大量に投稿される事態になっている。「Dau Lac Muoi Tom(ダウ・ラック・ムォイトム)」と呼ばれるこのスナックが、ベトナムのZ世代を中心にバズっている理由を掘り下げる。
エビ塩(ムォイトム)とは何か
ムォイ・オット・トム(Muoi Ot Tom)は、塩・唐辛子・ニンニク・砂糖・干しエビを混合した調味料だ。タイニン省が本場とされ、その歴史は約80年前にまで遡る。
フランス占領時代、兵士がコメと一緒に携帯する保存食として重宝されたのが起源だ。ベトナム戦争中もゲリラ兵への差し入れとして流通した。2023年にはタイニン省のムォイトムが「国家無形文化遺産」に認定されている。
| 原料 | 役割 |
|---|---|
| 干しエビ | 旨味と粉状の甘み |
| 唐辛子 | 辛味とピリッとした後味 |
| 塩 | 味の土台 |
| ニンニク | 香ばしさ |
| 砂糖 | 辛味の角を取るバランサー |
| レモングラス(一部製品) | 爽やかな風味のアクセント |
製法のカギは「焙煎」工程にある。材料を混ぜた後、フライパンで15分ほど絶えずかき混ぜながら乾煎りする。この火加減が味を決定的に左右する。
なぜいちごなのか
ベトナムでフルーツに塩をつけて食べる習慣は日常的だ。マンゴー、グアバ、青りんご、スイカ、パイナップルなど、酸味のある果物とムォイトムの組み合わせは屋台の定番メニューとして長く存在してきた。
いちごが注目された背景には、ダラット産いちごの流通拡大がある。冷涼な高原地帯ダラットはベトナム最大のいちご産地であり、ホーチミンやハノイのスーパーにも安定供給されるようになった。手頃な価格と鮮やかな赤色がTikTok映えし、撮影素材として広まった。
TikTokでバイラル化した構造
TikTokでバズるスナックには共通パターンがある。
- 調理ステップが3つ以内: いちごを洗う → ムォイトムをまぶす → 食べる。動画尺15秒で完結する
- ASMR要素: ムォイトムのザリザリした食感が音で伝わる
- リアクション映え: 初めて食べる外国人の「甘い? 辛い? しょっぱい?」という混乱顔が再生数を稼ぐ
- 材料費が安い: いちご1パック+ムォイトム1袋で完成。参入障壁がゼロに近い
いちご×ムォイトムだけでなく、タイ風マンゴーロールやタマリンドペーストを使った酸辛系スナックも同時にトレンド入りしている。Z世代が「甘いだけ」のスイーツから「酸+辛+塩」の複雑な味覚体験へシフトしている傾向がTikTok上で可視化されている。
Z世代スナック事情を数字で見る
| 項目 | 内容 |
|---|---|
| ムォイトム国家遺産認定 | 2023年(タイニン省) |
| 主なバズプラットフォーム | TikTok、YouTube Shorts |
| 関連ハッシュタグ | #muoitom #daumuoitom #vietnamesesnack |
| 併走トレンド | タイ風マンゴーロール、タマリンドペースト、チーズパウダースナック |
| ターゲット層 | ベトナム国内Z世代(15〜27歳)+ 海外のベトナム料理ファン |
現地の反応
- ホーチミンの屋台では「いちごムォイトム」を単品メニューとして出す店が増加。従来はフルーツ盛り合わせの一部だったが、単品注文が成立するようになった
- スーパーのムォイトム売場面積が拡大。タイニン産の”元祖”を訴求するブランドと、ダラット産いちごとのセット販売が目立つ
- 在米ベトナム人コミュニティでも再現動画が急増。Etsyでは「Muoi Ot Tom Tay Ninh」がベトナム調味料カテゴリの売れ筋になっている
日本で試すには
ムォイトムは日本のアジア食材店やAmazonで購入できる。いちごは国産のもので問題ない。
食べ方はシンプルだ。いちごを半分に切り、断面にムォイトムを軽くつけるだけ。つけすぎると辛味が勝つため、最初は少量から試すのがよい。
マンゴーやキウイでも応用できる。酸味のある果物ほどムォイトムとの相性がよい。
食品業界への波及
ムォイトムのバイラル化は、東南アジアの伝統的調味料がSNS経由で世界市場へ出るパターンの一例だ。バインチャンチョン(ライスペーパースナック)のTikTokバズと構造が似ている。
| 項目 | 詳細 |
|---|---|
| スナック名 | いちご×ムォイトム(Dau Lac Muoi Tom) |
| ムォイトム産地 | タイニン省(本場) |
| いちご産地 | ダラット(ラムドン省) |
| 食べ方 | いちごを半分に切り、断面にムォイトムをつける |
| 国内購入先 | アジア食材店、Amazon(「ムォイトム」で検索) |
まとめ
80年の歴史を持つタイニン省の調味料が、TikTokの15秒動画で世界に広まっている。いちご×ムォイトムは「甘+酸+辛+塩」の四重奏であり、一度食べると忘れられない味覚体験だ。ベトナム旅行中に屋台で試すもよし、日本で再現するもよし。
バインチャンチョンのTikTokバズ記事では、ライスペーパースナックの世界的ヒットを取り上げている。バインミー屋台のTikTok特集やフーコック島のヌクマムも、ベトナムの食文化を深掘りする記事としてあわせて読んでほしい。
