ベトナム南部の島フーコック島で、2027年のAPEC首脳会議に向けた巨大なコンベンションセンターの建設が進んでいる。総延床面積は約15万2,000平方メートル。地上4階・地下1階の建物には11,050平方メートルの無柱ホールや2,000席のシアターが組み込まれ、リゾート地として知られた島が国際会議都市へと姿を変えようとしている。ビーチと海上ケーブルカーを目当てに通ってきた日本人旅行者にとって、この変化は「次にフーコックへ行く理由」を一つ増やすニュースだ。
波の形をした巨大施設、その中身
VnExpressが2026年6月に公開した完成予想図によると、この施設の総延床面積は152,166平方メートル。地上4階と地下1階で構成される。設計を担ったのは、ベトナムの大手デベロッパーSun Group(サングループ)と、世界的な建築設計事務所SOM(スキッドモア・オーウィングス・アンド・メリル)だ。
外観のモチーフはフーコックの海の波。石・金属・テラゾーを主材に使い、過剰な装飾を抑えた静かな高級感でまとめられている。リゾートにありがちな派手さではなく、落ち着いたトーンで国際会議の格に寄せた点が目を引く。
建物の核となるのが、柱のない11,050平方メートルの大ホールだ。柱がないということは、レイアウトを自由に組めるということ。数千人規模の全体会議も、ブースを敷き詰めた展示会も、晩餐会も、一つの空間で切り替えられる。会議室は30室以上を備え、二国間会談から分科会まで並行して回せる構造になっている。
なぜフーコックが、なぜ2027年なのか
フーコックは2027年のAPEC首脳会議の開催地に選ばれた。ベトナムがAPECの議長国を務めるのは3回目で、開催地としてリゾート島が選ばれたのは異例だ。ハノイでもホーチミンでもなく、観光の島が国家の表舞台に立つ。ここに、ベトナムが描く狙いが透けて見える。
フーコックには、他の都市にはない武器がある。外国人とベトナム系外国人パスポート保持者は、ビザなしで最大30日間滞在できる。ベトナム本土が日本人向けに45日間のビザ免除を設けているのとは別枠で、島単位の特例が効いている。各国の代表団や随行者を煩雑な手続きなしで迎えられるこの制度は、国際会議の開催地としては大きな追い風になる。
SOMが手がけたのは建物単体ではない。約78ヘクタールにおよぶ「ビジョンプラン」として、島の南海岸そのものを設計し直している。式典の動線となる大通り、屋外イベント用の公園、2キロを超える新しいウォーターフロント。コンベンションセンターを含む複合施設は、最大で約1万5,000人を収容する想定だ。会議のためだけの箱を造るのではなく、首脳会議が終わった後も島の資産として残る街区を造る——そこにこのプロジェクトの本質がある。
検証できた規模・特徴
大型施設のニュースは数字が独り歩きしやすい。ここでは主ソースで裏取りできた項目だけを並べる。
| 項目 | 内容 |
|---|---|
| 総延床面積 | 152,166平方メートル |
| 構造 | 地上4階・地下1階 |
| 無柱メインホール | 11,050平方メートル |
| 会議室 | 30室以上 |
| シアター(晩餐ショー会場) | 2,000席 |
| 設計 | Sun Group + SOM |
| ビジョンプラン範囲 | 約78ヘクタール |
| 複合施設の想定収容 | 最大約15,000人 |
| デザインモチーフ | フーコックの海の波 |
注目したいのが2,000席のシアターだ。会議施設に晩餐ショーの劇場を組み込むという発想は、ビジネス目的の箱もの開発とは一線を画す。演出を担うのは、ベルギーを拠点に大規模ライブショーを手がけてきたDragone(ドラゴン)。多層構造の舞台と最新の音響・照明、そして地元文化との融合を掲げており、会議の合間に「観る」体験まで完結させる設計思想がうかがえる。
業界・専門家の反応
専門家筋は、このセンターがフーコックの国際的な地位を押し上げ、島を大規模MICE(会議・報奨旅行・国際会議・展示会)の目的地へと変える起爆剤になると見ている。リゾートとしての知名度に、会議インフラという別の評価軸が加わる構図だ。
Sun Group側の言葉も具体的だ。会長のダン・ミン・チュオン氏はAPEC 2027を「観光・経済ハブとして台頭する節目」と位置づけ、首脳会議を一過性のイベントではなく島の発展モデルの転換点と捉えている。
設計を担当したSOMは、このプロジェクトを「レジリエンス(回復力)とレガシー(遺産)」という言葉で説明している。サミットが終わった後も、都市・経済・環境の長期目標に資する街区として残すという考え方だ。一過性の式典会場で終わらせない、という設計者の意志がここに表れている。
日本人旅行者の旅は、どう変わるか
「会議施設の話と自分の旅行に何の関係が?」と思うかもしれない。だがMICE目的地化は、レジャー旅行者の体験も静かに底上げする。
国際会議の開催地に選ばれると、まず宿泊・飲食・交通といったインフラが会議水準に引き上げられる。各国の要人を迎えるために整えられた送迎動線やハイエンドな宿は、サミットが終わればそのまま一般の旅行者にも開かれる。ウォーターフロントの遊歩道や屋外公園も同じだ。会議のために造られた公共空間が、平時には島の散策ルートになる。
Dragoneのシアターは、その象徴になりそうだ。これまでフーコックの夜の楽しみといえばナイトマーケットや海上ケーブルカーだったが、ここに本格的な舞台演出が加わる。会議参加者向けに磨かれたショーは、家族旅行やカップル旅行の夜の選択肢としても残るだろう。ビーチで過ごす昼と、劇場で過ごす夜——島の一日の組み立て方そのものが変わる可能性がある。
観光・MICE市場への波及
フーコックは現在、ベトナムで特別なビザ政策が敷かれている唯一の島であり、ここ数年でMICE開催地として急速に注目を集めてきた。ビザの特例、増え続けるアクティビティ、そして高水準のインフラ——この三つがそろう場所は、東南アジアでも限られる。
ベトナムへの来訪者のうち、旅行会社が扱うMICE参加者は平均で15〜20パーセントを占め、繁忙期には最大60パーセントに達する事業者もあるとされる。会議で訪れた人がリゾートに滞在を延ばし、満足すれば家族や同僚を連れて再訪する——MICEとレジャーが地続きになる島だからこそ、コンベンションセンターは集客の入り口として機能する。
日本の旅行者にとっても、これは無関係ではない。企業の報奨旅行や研修先の候補として、ビザ免除で渡航しやすいフーコックの存在感は増していくはずだ。観光で知った島が、いつか出張で再訪する島になる。その逆もある。リゾートと会議都市、二つの顔を一つの島が併せ持つ流れが加速していく。
フーコックへの行き方と見どころ
日本からフーコック島への直行便は、2026年時点では運航されていない。ホーチミン(タンソンニャット国際空港)やハノイで国内線に乗り継ぐルートが一般的で、ホーチミンからの飛行時間は約1時間だ。ビザは、フーコック島であれば外国人は最大30日間まで免除される。
島の代表的な見どころは次のとおり。
- 手つかずの自然が残るフーコック国立公園
- 遊園地やウォーターパークを集めたヴィンワンダーズ
- 地元のB級グルメがそろうナイトマーケット
- 全長7,899.9メートルでギネス世界記録に認定された海上ケーブルカー
- 西海岸に約20キロ続く白砂のロングビーチ
コンベンションセンターが完成すれば、ここに「国際会議都市の現代建築を眺める」という新しい楽しみ方が加わる。波を模した外観は、それ自体がフォトスポットになりそうだ。
まとめ
15万2,000平方メートルの延床、柱のない大ホール、2,000席のシアター。フーコックに建つコンベンションセンターは、APEC 2027という一度きりの首脳会議のためだけに造られるのではない。会議が去った後も島に残り、リゾートと国際会議都市という二つの顔をつなぐ装置として機能する設計になっている。ビーチと海上ケーブルカーで知られた島が、世界のMICE目的地へと進化していく。次にフーコックを訪れるとき、その旅の選択肢は今より一つ二つ増えているだろう。
よくある質問
Q. APEC 2027のコンベンションセンターは観光客も見学できますか
A. 現時点では建設中で、一般見学に関する公式な案内は出ていません。完成後の外観は波を模したデザインで、島の新しいランドマークになると見込まれます。最新情報は渡航前に確認してください。
Q. フーコック島へ日本から行くにはどうすればいいですか
A. 2026年時点で直行便はなく、ホーチミンやハノイで国内線に乗り継ぐのが一般的です。ホーチミンからフーコックまでの飛行時間は約1時間です。
Q. フーコック島はビザが必要ですか
A. フーコック島では外国人は最大30日間までビザが免除されます。ベトナム本土での観光は日本国籍の場合、別途45日間のビザ免除制度が適用されます(適用期間や条件は変わることがあるため渡航前に確認を)。
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