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「ハー・ザンは私の第二の故郷になりました」——そう語るのは、69歳の日本人・安浦靖(やすうら やすし)さんです。ベトナム語を独学で習得し、ベトナム最北の山岳地帯ハー・ザン省に30年以上関わり続けた彼の物語は、多くのベトナム人の心を動かしています。
安浦さんが初めてベトナムを訪れたのは1995年。バックパッカーとしてベトナム全土を旅するなかで、ハー・ザン省の雄大な自然と少数民族の文化に魅了されました。
その後も何度もこの地を訪れ、2010年に再びロロチャイ村(Lũng Cẩm村)を訪れた際、変わり果てた村の姿に心を痛めます。かつての200年以上の歴史を持つ土壁造りの家々が次々とコンクリート建築に建て替えられ、伝統的な景観が失われていたのです。
安浦さんは2014年、わずか約2億ベトナムドン(当時約760ドル)を投じて、200年の歴史を持つ土壁建築の中に「クックバックカフェ(Cúc Bắc Café)」を開設しました。
その発想はシンプルながら革新的でした——「伝統的な家屋の中でカフェを営めば安定した収入が生まれ、人々が建築遺産を守る動機になる」。観光業と文化保護を結びつけるこのモデルは、その後の村の発展の礎となります。
| 年 | 出来事 |
|---|---|
| 1995年 | 初めてベトナムを旅行、ハー・ザンに魅了される |
| 2010年 | 再訪し、伝統家屋の消滅に危機感を覚える |
| 2014年 | クックバックカフェを開設(投資額約760ドル) |
| 2025年 | ロロチャイ村が「世界最高の観光村」に認定 |
安浦さんの取り組みは、村全体を変えました。ハノイの大学生2名を村に派遣してコーヒーのいれ方とベトナム語を教え、ホームステイ施設や石壁の整備費用も支援。観光客が安心して泊まれる環境を整えていきました。
現在、ロロチャイ村では52世帯が観光業に従事し、月平均収入は約3,000万ベトナムドン(約1,140ドル)に達しています。そして2025年、この村はなんと国連世界観光機関(UNWTO)から「世界最高の観光村」のひとつに認定されました。
村長は安浦さんについて「彼はもう家族です」と語っており、村の人々からも深く愛されています。
ハー・ザン省は、ベトナム最北端に位置する秘境の地。カルスト地形が織りなす絶景と、モン族・ロロ族などの少数民族文化が共存するこの地域は、近年日本人旅行者にも人気が高まっています。
安浦さんのように、ベトナムを「一度訪れる旅行先」から「人生を変える場所」として体験する日本人が増えています。最新データでも日本人観光客は前年比39%増と急増しており、ベトナムへの関心の高さが伺えます。
ベトナム北部の旅を計画するなら、ハー・ザン省と合わせてダナンの水かけ祭り(4月)も日程に組み込むのもおすすめです。ビザ取得についてはフーコック島のビザ免除情報も参考にしてください。
69歳にしてベトナム語を操り、山岳地帯の村の文化保護に30年を捧げた安浦靖さんの物語は、ベトナムの魅力が単なる観光を超えたものであることを教えてくれます。ハー・ザン省を訪れる際は、彼が守り続けた土壁の家々とコーヒーの香りを、ぜひ体感してください。
引用元:VnExpress International – Japanese man makes Ha Giang his home away from home