ベトナム中部クアンガイ沖のリーソン島に、ベトナム最大と認定された二体のクジラの骨が祀られている。大きい方は全長22メートル。祠の名はランタン(別名ソーダイズオン)で、海で命を落としたクジラを「海の守り神」として弔う漁師たちの信仰が、二百年近く受け継がれてきた場所だ。ビーチやグルメが主役になりがちなベトナム旅行のなかで、海の暮らしと信仰に触れられる離島の一角として押さえておきたい。
ベトナム記録機構が「国内最大」と認定
VnExpressによると、ランタンに安置された二体のクジラの骨格は、2025年6月にベトナム記録機構から「国内最大」と認定された。二体にはそれぞれ「ドンディン大王」「ドックグー二位尊神」という神名が与えられている。前者が全長22メートル、後者が18メートル。いずれも19世紀初めにこの海岸へ打ち上げられたと伝わる。
骨格の一つひとつが大きい。椎骨は50個、肋骨は28本を数え、頭骨は高さ4メートル、突き出た部分は4.7メートルに達する。祠そのものも古く、1832年に建てられ、1901年に再建、海岸侵食のため2002年に再び建て直された歴史を持つ。
クジラ信仰はどこから来たのか
クジラを海の守護神として祀る文化は、もともとチャム族に始まり、のちにベトナム人や華人へと広がったとされる。伝承では、阮朝の初代・嘉隆帝がクジラを海を守る神として神格化したと語り継がれている。海に出れば命の保証がない漁師にとって、荒波から船を助けると信じられたクジラは、崇拝の対象そのものだった。
リーソン島には、こうしたクジラを祀る祠が全部で七つある。安置された骨は数十年前のものから300年以上前のものまでと幅広い。島全体が、海と生きてきた人びとの記憶の集積になっている。
| Item | Details |
|---|---|
| Location | クアンガイ省リーソン島 アンヴィン集落 ランタン(ソーダイズオン) |
| 骨格 | 二体(ドンディン大王22m/ドックグー二位尊神18m) |
| 骨の内訳 | 椎骨50個・肋骨28本・頭骨高さ4m・突き出た部分4.7m |
| Certification | 2025年6月 ベトナム記録機構「国内最大」 |
| 祠の由来 | 1832年創建・1901年再建・2002年再建 |
| Admission | 無料(静粛・服装への配慮を) |
展示ではなく、今も祈りが続く場
ランタンは博物館ではなく、地元の人が今も手を合わせる信仰の場だ。骨の保存にも手がかけられている。2022年には約140億ドン(1万ドン=約59円換算で約8,300万円)を投じた修復事業が行われ、劣化した部分を複合素材で補い、泳ぐ姿を思わせる形に骨格が組み直された。単に古い骨を保管しているのではなく、崇拝の対象として次の世代へ引き継ぐための手当てが続いている。
ベトナム記録機構による認定(2025年6月)も、この場所の価値を外部から裏づけた。二体を合わせて「国内最大」とされる骨格の規模は、写真で見るより実物のほうがはるかに迫力がある。祈りの場である以上、観光地のような賑わいはないが、その静けさ自体が訪れる意味になっている。
ビーチ以外のベトナムを探す人へ
リゾートや街歩きが定番のベトナム旅行で、離島の祠は「海と信仰」というもう一つの切り口になる。22メートルの骨格を間近で見られる場所は国内でもここだけで、ベトナムの民間信仰や漁村の歴史に関心がある人には行程に組み込む価値がある。逆に、賑やかな観光地やアクティビティを求める人には向かない。目的を分けて考えるのが失敗しないコツだ。
訪れる際は、祈りの場であることを忘れないでほしい。入場は無料だが、露出を控えた服装で、静かに、宗教的な対象に触れないよう配慮するのが基本だ。同じく離島や漁村の暮らしに触れたい人は、卵形の丸石が浜を埋めるニャチャン沖のビックダム島や、夜の浜でウミガメが産卵するコンダオ島の限定体験が近い雰囲気を持つ。民話や祠に惹かれるなら、ホーチミンの祠に灯る中秋の民話もあわせて読みたい。
船便と天候、訪問前に確認すること
リーソン島はクアンガイ本土から船で渡る離島で、便は天候や海況に左右される。計画するなら、まず本土までの移動と島への船便の運航を確認し、日帰りより宿泊を前提に日程を組むのが現実的だ。祠は無料で開かれているが、地元の生活と信仰の場でもあるため、祭事の日は静かな見学が難しいこともある。落ち着いて見たいなら、島の観光案内で行事の予定を確かめてから訪れると安心だ。
Sources
VnExpress: Nơi lưu giữ hai bộ xương cá voi lớn nhất Việt Nam


