ホーチミン市内を走るバス134路線は、2026年12月31日まで運賃が0ドンで乗れる。無料化が始まったのは7月1日で、9月24日に開かれた有権者との会合で、市党委書記のチャン・ルー・クアン氏が「12月31日まで」という現在の期限と、ガソリン車の使用を禁止しない方針を語った。区域を限った規制は別の草案で、市全域で乗れなくなる話ではない。市の公共交通管理センターの集計では、7月1日から9月15日までの利用は2,384万2,373人。9月15日の1日だけで46万1,918人が乗っている。市内の短い移動なら、配車アプリより先にバスを見る期間があと3か月ある。
バス134路線は12月31日まで0ドン、市党委書記が有権者に答えたこと
会合はクアン氏の国会選挙区で開かれ、有権者のファン・ティ・ゴック・フオン氏が、渋滞が市の出入口や幹線道路から他の地域へ広がっていると訴えた。同氏は、労働者や低所得層の生活に直接影響するとして、ガソリン車から電気自動車への移行を慎重に評価するようにも求めた。
クアン氏は、人口の多いホーチミン市では渋滞の解決が他の地域より難しいと述べた。朝夕の同じ時間帯に車両が一斉に道路へ出るためだ。単独の対策では足りないとして、公共交通、私的車両の規制、技術、交通マナーの変化を組み合わせる必要があると語り、「第一の対策は、私的な乗り物の代わりとなる公共交通だ」と続けた。
ガソリン車の使用は禁止しない、では何が規制されるのか
「市民がガソリン車を使うことを禁止はしない」。クアン氏の答えはこの一文に集約される。市は代わりに、乗り換えを促す経済的・財政的な政策を検討し、地域ごとに異なるルールを置く可能性があるとした。移行にかかる費用は国・住民・企業で分担し、一度に全部を切り替えず段階的に進めるという説明である。中国の例も引かれた。一部の地域では電気自動車が優先されて速く走れ、ガソリン車は規制区域の外に駐車して、その先は電気の乗り物で移動するという。
混ぜてはいけないのは、使用を禁止しないという話と、区域を限った規制の案は別だという点である。後述する低排出ゾーンの草案は市の建設局が別途まとめたもので、特定の区域に入る条件を定める形になっている。「禁止しない」を「どこでも何も変わらない」と読むと、2027年以降の話を取り違える。
スマートカメラでEVを優遇する案はどこまで決まっているか
クアン氏は、スマートカメラで車両を識別し、電気自動車の利用者に優遇と優先を与え、ガソリン車には別の政策を当てる形も語った。ただしこれは可能性として示された段階で、この日の発言からは優遇の金額や開始時期までは確認できない。社用車の入れ替えや通勤手当に織り込むのは早い。
1日46万人が乗る無料バス、77日間の累計は2,384万人
この記事に出てくる利用者数は、どちらも市公共交通管理センターの集計である。締め日が9月15日のものと9月22日のものが並んで流通していて、同じ134路線を指しながら期間と比較のとり方が違う。
7月1日から9月15日で2,384万人、1日平均は約31万人
センターの公表では、7月1日から9月15日までの77日間で対象134路線が運んだのは2,384万2,373人。77日で割ると1日平均は約30万9,600人になる。一方で9月15日の単日は46万1,918人と平均を大きく上回る。前日の9月14日比では1.7%減だが、1週間前の同じ曜日の9月8日(45万5,282人)からは1%増え、前年同日比では40%多い。同じセンターの集計を9月22日まで伸ばした数字がクアン氏の発言とともに報じられ、累計2,680万人超、前年同期比48%増とされている。累計同士と単日同士は別の物差しなので、40%と48%を並べて伸びが加速したと読むことはできない。
1便あたり26.1人、混雑は時間帯で偏る
9月15日の運行は1万7,684便で、1便あたりの平均は約26.1人。センターは同日、乗客が急増して車両を追加投入する事態は記録していないとしている。平均26人なら、常に満員という前提は実態と合わない。市は混雑時に大型車、需要が少ない時間に小型車を投入して輸送力を合わせる方針を示しており、需要が時間帯で偏ること自体は市の側も前提にしている。
| Item | Figures and details | 対象期間 |
|---|---|---|
| Free coverage | 市内バス134路線 | 7月1日〜12月31日(現在の説明) |
| 累計利用 | 2,384万2,373人 | 7月1日〜9月15日(管理センター) |
| 累計利用(別の締め日) | 2,680万人超・前年同期比48%増 | 7月1日〜9月22日(同センター) |
| 単日利用 | 46万1,918人・前年同日比40%増 | 9月15日 |
| 運行便数 | 1万7,684便・1便平均26.1人 | 9月15日 |
6,300億ドンと2兆ドン超は対象の範囲が違う
ベトナム語のtỷは10億、nghìn tỷは1兆だ。クアン氏の説明では、1年分の無料化として確保したのが2兆ドン超(7,700万米ドル)、7月1日から12月31日までの運賃免除にかかる見込み費用が6,300億ドン(2,400万米ドル)。範囲が違う2つなので、足し合わせたり一方を半年分として割り戻したりはしない。円に直すと、2026年9月25日時点の参考レート(1米ドル=158.69円、1米ドル=25,950ドン、1万ドン≒61円)で6,300億ドンが約38億5,000万円、2兆ドンは約122億3,000万円。併記の米ドル建て(2,400万/7,700万)から計算してもそれぞれ約38億1,000万円、約122億2,000万円で、どちらから追ってもほぼ同じ額になる。
低排出ゾーンは2027年7月開始の案、確定した話と案を分ける
使用を禁止しないという発言と並行して、市は地域別・時間帯別に私的車両を制限する検討も進めている。ここから先は草案の段階で、決定事項として扱うと予定が狂う。
中心部とトゥーティエムから、2029年初にリング2号線まで広げる案
市の建設局がまとめた草案では、2027年7月から中心部とトゥーティエムで低排出ゾーンを試行し、その後2029年初めからリング2号線の範囲へ拡大するとされている。開始時期も範囲も草案に書かれた予定であって、確定した施行日ではない。市はまた、2030年までに公共交通が市内の移動需要の15〜20%を担う目標を掲げている。
2035年に電動が求められるのはゾーンに入るバイク
同じ草案で、2035年までに個人所有のバイクは電動またはグリーン燃料でなければゾーンに入れないとされている。市全域でガソリンバイクを走らせてはいけないという話とは違い、指定区域に乗り入れる条件として書かれている。区域の内と外のどちらで日常が回っているかで、買い替えの急ぎ方が変わる。
在住者と出張者が無料の3か月をどう使うか
センターの公表には、利用者からの申告と処分の件数も並ぶ。
バスが止まってくれないときの連絡先
7月1日から9月15日までに、センターはバスが停留所を通過して乗客を乗せなかったという申告を168件受け付け、処理を進めている。窓口はMultiGoアプリ、ホットライン1022、センターのFanpageだ。停留所の通過については60件の処分が出され、9月15日には122号路線(19/5運輸協同組合)の申告が1件入った。センターは車載カメラと運行管理システムのデータも使って確認を強めるとしている。裏を返せば、待っていても止まらない場面は起こりうる。早めに立って運転手から見える位置に移り、手を挙げる。通過されたら路線番号と時刻を控えて上の窓口に出す。処分まで出ている以上、申告は空振りにならない。
路線と時刻表は動く前提で見る
市はバス路線をメトロへ接続する形に組み替え、停留所と待合設備の改修も進めるとしている。メトロ側は3路線の承認手続きを追った記事で扱った。再編されれば、覚えた番号と時刻がそのまま使えなくなる場面が出てくる。中心部の通行そのものが変わる話も進んでおり、一方通行化に伴う迂回の組み方と合わせて見ておくと、出張の移動計画が崩れにくい。
| 確かめること | Details |
|---|---|
| Fare | 対象134路線は0ドン |
| Period | 2026年7月1日から12月31日まで(現在の説明) |
| 申告窓口 | MultiGoアプリ/ホットライン1022/管理センターのFanpage |
| Crowding guide | 9月15日は1便平均26.1人、時間帯で偏る |
| ガソリン車 | 使用の禁止はしない(9月24日の市党委書記発言) |
| Low-emission zone | 2027年7月開始も2029年初の拡大も建設局の草案 |
年内に一度、通勤ルートをバスに置き換えて測っておく
9月24日の会合で示されたのは、無料化を12月31日まで続ける現在の期限、ガソリン車の使用は禁止しない方針、区域と時間帯で制限を検討しているという三段構えだった。1年分として2兆ドン超を確保したという説明と、12月31日までの見込み費用6,300億ドンが並んでいる状態で、年明け以降の扱いをこの発言だけから読み切ることはできない。燃料価格も動いており、E10の値上げは9月10日の価格改定を扱った記事で触れた。
今できる行動は1つに絞れる。12月31日までに、自分がいちばん使う片道1区間をバスで往復し、所要時間と乗り継ぎ、停留所の位置を測ってメモに残す。無料のうちに数字を取っておけば、年明けに運賃が戻っても、バイクと配車アプリとバスを金額と時間で比べられる。


