コーヒーと音楽を積んで走る、ジャライ省の若者3人の移動カフェ

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ベトナム中部高原のジャライ省(Gia Lai)西部で、20代から30代の若者3人が、改造したワゴン車を連ねて田園や湖畔を走り回っている。売るのはコーヒー、焼き菓子、そして青パパイヤのサラダ(nộm đu đủ)。それだけなら珍しくないが、彼らは車を停めた絶景スポットで、地元のミュージシャンを招いて無料のアコースティックライブまで開いてしまう。食べて、飲んで、生演奏を聴く——その全部が、屋根もない田んぼのそばで起こる。地方紙Báo Gia Laiが2026年6月に報じたこの取り組みは、ベトナムの地方でいま何が起きているかを映す小さな実例だ。彼らが何をしているのかを整理し、中部高原という土地の楽しみ方まで掘り下げる。

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移動カフェ車の正体

地元紙Báo Gia Laiによると、この取り組みを始めたのは3人。ビエンホー(Biển Hồ)地区でカフェ「Tén Café」を営むグエン・ヴィエット・ティエン氏(1995年生まれ、コーヒー担当の車「A Tén」)、チュー・パー(Chư Păh)地区出身でデジタルコンテンツ制作を手がけるヴァン・ヴー・ヴオン氏(1992年生まれ、パパイヤサラダの屋台担当)、そしてプレイク(Pleiku)出身でフリーランス写真家のタ・ゴック・アイン・コア氏(1998年生まれ、焼き菓子の車担当)だ。スタートは2026年4月下旬。

営業は1日2回、午前6〜11時と午後2〜7時の枠で、天候と場所の条件が合えば動く。メニューはコーヒー、焼き菓子、青パパイヤサラダ、タピオカ系ドリンク、デザートなど。そこに地元ミュージシャンの屋外アコースティックセッションが無料で加わる。停車場所はタンソン(Tân Sơn)のダム、ビエンホー地区ゴーソン(Ngô Sơn)の田んぼ、ビエンホー観光エリアなど、ジャライ西部の景色のいい場所が選ばれている。

なぜ「移動」で「食×音楽」なのか

3人の動機は、報道の端々から読み取れる。ヴオン氏は「こうした巡回が、故郷の美しさを身近で自然なかたちで広める手助けになると、うれしい」と語っている。つまりこれは単なる飲食ビジネスというより、自分たちの土地を見てもらうための仕掛けに近い。固定店舗だと客は店に来るだけだが、車なら客を景色のいい場所まで連れ出せる。コーヒーやサラダは、その場所に足を運ぶ口実なのだ。

背景にはジャライ省という土地の性格もある。中部高原(Tây Nguyên)はベトナム有数のコーヒー産地で、標高の高い赤土の高原に農園が広がる。日本でなじみのあるアラビカ種の華やかさとは違い、この一帯で多く育つロブスタ種は、苦味とコクが強く、練乳と合わせる濃厚なベトナムコーヒーの味の核になっている。地元の若者にとってコーヒーは農作物であり、日常であり、誇りでもある。その土地でコーヒーを積んで走るという発想は、都市のカフェチェーンとはまったく別の文脈から出てきている。

何がこの取り組みを特別にしているか

注目したいのは、3つの要素の組み合わせ方だ。

場所が「店」になる

普通のカフェは建物が主役だが、彼らの場合は田んぼやダム、湖畔そのものが店になる。同じ車でも停める場所が変われば体験が変わる。報道によれば、1回ごとに下見をして、空間の配置を整え、音楽グループとの段取りを組んでから出発しているという。即興のようでいて、毎回が小さなイベント設営なのだ。

音楽が無料であること

ライブを有料チケットにせず、コーヒーやサラダの売上で回している点も効いている。客は「ライブを観に行く」という構えなしに、たまたま通りかかって音楽に出会える。このハードルの低さが、若者がふらっと集まる空気をつくっている。

収益を地域に還す

さらに彼らは売上の一部を使い、ビエンホー、イアグライ(Ia Grai)、イアクオル(Ia Khươl)といった遠隔の地区で、月に一度、恵まれない子どもたちにドリンクや菓子を無料で配る活動も続けている。商売と地域貢献が地続きになっている。

現地の反応

地元の受け止めを、報道や周辺情報からいくつか拾ってみる(いずれも趣旨を意訳・要約したもの)。

プレイク在住の20代前半の女性は「食を楽しめて音楽ともつながれる移動の車は、いつもの遊び場とは違う体験をくれる」と話したという。決まった繁華街やモールに飽きた若者層が、新鮮さを感じている様子がうかがえる。

創業メンバーのひとりは、巡回が故郷の風景を知ってもらう機会になることに手応えを語っている。売る側自身が「土地を見せたい」という思いで動いているのが、この取り組みの体温になっている。

また、田園や湖畔という日常の風景が「わざわざ行く価値のある場所」に変わったという反応もある。地元の人にとって見慣れた景色が、コーヒーと生演奏という小さな仕掛けで観光スポット化していくのは興味深い。

日本の読者・旅行者への示唆

では、これを日本から読む私たちはどう受け取ればいいのか。ひとつの楽しみ方として、中部高原という「まだベタ化していないベトナム」への入り口として見ることをすすめたい。

ベトナム旅行というとハノイ、ホーチミン、ダナン、ホイアンが定番だが、ジャライ省の省都プレイクは赤土の高原に湖と火山が点在する、空気感のまったく違うエリアだ。中心市街から約7kmのビエンホー湖(別名トゥヌン湖/T’Nung、地域最大の湖)は、今回の移動カフェが拠点にしている場所でもある。コーヒー農園の風景、火山の地形、そして高原の涼しさは、海辺のリゾートとは別ベクトルの旅になる。同じ中部高原の穴場としては、「20年前のダラット」と呼ばれるマンデン(コントゥム省)も合わせて知っておきたい。コーヒーを土産にするなら、産地名で選ぶ視点としてスペシャルティ受賞のラムドン産「Ant Bee」の話も参考になる。

そして何より、こうした若者発の小さな店は、ガイドブックには載らない。だからこそ、現地で「いま地元の若者が集まっている場所はどこか」を聞いて回る旅のほうが、思い出に残る。固定店舗ではなく日替わりで場所が変わる以上、SNSや現地の口コミで追いかける必要があるが、その不確実さも含めて体験になる。コーヒーの飲み方も、現地ではアイスのカフェスダ(練乳入り)が定番なので、濃いロブスタを甘く冷たく味わうのが土地に合っている。

地域・観光への波及

この事例は、ベトナム地方で起きている「若者発・体験型観光」の流れの一例として読める。行政が大型施設をつくるトップダウン型ではなく、土地に根ざした個人が、自分の故郷を自分の言葉で見せる動きだ。3人がそれぞれカフェ経営、コンテンツ制作、写真という別々の生業を持ち寄っている点も象徴的で、発信力と企画力が地方創生の燃料になっている。

折しもジャライ省は2026年を観光振興の年と位置づけ、プレイク空港(市中心部から約4km)の路線拡充などで外からの人の流れを増やす施策を進めている。大きなインフラ整備と、こうした草の根の取り組みが両輪で回るとき、地方観光は厚みを増す。移動カフェのような小さな点が増えれば、「行ってみたら面白かった」という体験の総量が地域の評判をつくっていく。

実用情報:プレイク/ジャライ省への行き方

確証のある範囲で、アクセスと周辺の楽しみ方を整理する。現地の最新情報は渡航前に必ず確認してほしい。

Item Details
空港 プレイク空港(PXU)。市中心部から約4km
Domestic flights ハノイ・ホーチミンなどから直行便(ベトジェット、ベトナム航空ほか)
市内アクセス 空港〜中心部はタクシー・配車アプリで短時間
主な見どころ ビエンホー湖(市中心から約7km)、チューダンヤ火山、コーヒー農園
移動カフェの拠点例 タンソンのダム、ビエンホー観光エリア、ゴーソンの田園(日替わり)
狙い目 2026年はジャライ省の観光振興の年。関連イベントも増えている

移動カフェ自体は営業場所が日替わりで、観光客向けの予約サービスではない点に注意。出会えたらラッキー、くらいの距離感で構えるのが正しい。

まとめ:高原の風景に「人」を見に行く

ジャライ省の移動カフェは、規模も売上も小さな取り組みだ。けれど、コーヒーと青パパイヤサラダと生演奏を田んぼのそばで差し出すという発想には、土地への愛着と若者らしい身軽さが詰まっている。次にベトナムの行き先を考えるとき、定番都市の少し外側にあるプレイクを候補に入れてみてほしい。空港の近さからすると、思っているよりずっと行きやすい。そして現地では、観光名所だけでなく「いま地元の人が楽しんでいる場所」を一つ聞いてみること。その答えの先に、ガイドブックにない風景と人が待っている。

Frequently asked questions

Q. この移動カフェはどこで会えますか。
A. ジャライ省西部(プレイク〜ビエンホー周辺)で日替わりに出店しており、固定の場所はありません。観光客向けの予約サービスではないため、現地のSNSや口コミで居場所を追うのが現実的です。

Q. プレイクへはどう行けばいいですか。
A. プレイク空港(PXU)が市中心部から約4kmと近く、ハノイ・ホーチミンなどから国内線が出ています。空港から中心部はタクシーや配車アプリで短時間です。

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Author of this article

In my third year living in Ho Chi Minh City, Vietnam. I launched this specialist Vietnam travel information site hoping to share local knowledge you simply can’t get by visiting as a tourist — the kind of thing you only understand by being here.

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