ホーチミン市チャンフン坊(phường Chánh Hưng)のタークアンブー(Tạ Quang Bửu)通りで、1階がバインセオ店、4階の屋上が200㎡近い野菜畑という家が営業している。店主のグエン・ティ・ビック・ニさん(34)が屋上に立てた栽培塔は100本。客は1階に置かれた2〜3本の塔から自分でレタスを摘み、希望すれば4階まで上がって畑を見て収穫も体験できる。バインセオは1皿55,000〜60,000ドン、1日に100食を超えて出る。VnExpressが9月26日に写真記事として伝えた。
旅行者にとって意味があるのは「屋上で野菜を作っている店」という話ではなく、生野菜を大量に添えて食べる西部式バインセオで、葉物の出どころが目で確認できる店が市内にあるという点だ。ただし自家栽培の対象は限られる。そこまで含めて整理する。
4階の屋上に栽培塔が100本、1階の客はそこからレタスを摘む
根を空中に出して霧を当てる、水耕とどう違うか
栽培方法はエアロポニックス(ベトナム語で khí canh、噴霧式)で、土をほとんど使わない。VnExpressは水耕(thủy canh)との違いを、根を完全に空気中に置き、養液をタイマーで細かい霧にして吹き付けるやり方だと説明している。根が酸素に触れながら養分を吸う形になるため、水の使用量が少なくて済み、塔を立てて高さ方向に面積を稼げる。屋上という限られた床面積で葉物を回すには都合がよい。
塔1本に約60株、毎日3〜4本を植え替える
塔は高さ2m超で自動潅水が付き、1本の収容は約60株。栽培は一度に全部を植えるのではなく、毎日3〜4本を新しく植え、順に刈り取っていく巻き取り式で回している。畑には少量の土と有機肥料だけを入れる。表に出ているのは葉物のカイ(からし菜類)とサラダ菜で、この2種が店の消費量の中心になる。
庭が先にでき、バインセオは後から習った
4年の試行と1億ドン超の設備投資
順番が一般的な飲食店と逆になっている。ビック・ニさん夫婦はこの栽培モデルを約4年試し、何度も失敗したうえで園芸のコミュニティから情報を集め、ホーチミンの気候に合う耐暑性・耐病性の品種を選び直した。畑が安定してから、広い屋上を生かして野菜を自前で確保できると判断し、バインセオの作り方を習って店を開いた。つまり店が畑を必要としたのではなく、畑が店を呼んだ形だ。設備には100本の塔を含めて1億ドン超(hơn 100 triệu đồng。triệu=100万なので100 triệu=1億ドン)を投じている。ただしVnExpressのリード文は「chi 100 triệu đồng」=1億ドンちょうどと書いており、本文の「超」と揃っていない。2026年9月26日のレート1円=約165ドンで換算すると約61万円、塔1本あたりに割り戻すと100万ドン強、約6,000円という筆者の概算になる。
チャビン省出身、生野菜を大量に使う西部式
ビック・ニさんの出身はメコンデルタのチャビン省で、店のバインセオも西部式だ。生地が大判で、具はもやし・エビ・豚肉・卵・クズイモ(củ sắn)・緑豆。西部式は生野菜をたくさん添えて包んで食べるため、葉物の消費が最初から多い。屋上の畑と店のメニューが噛み合っているのは、この地域性があるからだ。バインコット(bánh khọt)も出しており、つけだれは甘酸っぱいヌクマム。
1日35kgの収穫で100食超、1皿の野菜はどれくらいか
100本を3本ずつ回すと33日、公表の30〜35日と合う
発表されている数字は内部で整合している。植え付けから収穫までが30〜35日、1日の収穫量が約35kgで塔3本分。塔は全部で100本あるから、毎日3本ずつ刈って植え直せば1周は約33日で、収穫までの日数とほぼ一致する。1本あたりの収量は35kg÷3本で約11kg強、1株あたり約190gという筆者の割り算になり、サラダ菜1株の重さとして不自然ではない。数字が後付けでないことの一応の裏づけになる。
収穫・投資・価格を1枚に並べる
| Item | VnExpressが伝えている数値 |
|---|---|
| 屋上農園の面積 | 200㎡近く(4階の屋上) |
| 栽培塔 | 100本/高さ2m超/1本あたり約60株 |
| 設備投資 | 1億ドン超(本文)/1億ドン(リード文)・約61万円、1円=165ドン |
| 収穫までの日数 | 30〜35日 |
| 1日の収穫量/植え替え | 約35kg(塔3本分)/3〜4本 |
| バインセオの価格 | 1皿55,000〜60,000ドン(約330〜360円) |
| Bowls served per day | 100食超 |
| Location | チャンフン坊 タークアンブー通り(番地・店名は記事に出ていない) |
| Hours | 毎日11時30分〜21時 |
1日35kgを100食強で割ると1皿あたり300g超になるが、これは筆者の計算で、店が公表した1皿の盛り量ではない。収穫した野菜は現在の店の需要を満たし、友人に分ける余りも出ているとビック・ニさんは話しているので、35kg全部が皿に乗るわけではない。
自家栽培は青菜とレタスだけ、ほかのハーブは外で買う
「安心」が届く範囲はどこまでか
ここが読み落としやすい。バインセオとバインコットに添えられるのはカイ、サラダ菜、ラーカック(lá cách)、コック(cóc)の葉、ドクダミ(diếp cá)、クエヴィ(quế vị)、フン(húng)といった香草が何種類も乗るが、屋上で育てているのはカイとサラダ菜で、ほかの香草は外から仕入れている。「野菜を店で作っているから安全」と丸ごと受け取ると事実からずれる。生の香草でお腹を壊したくない旅行者は、皿の上の葉が全部屋上産ではないことを前提にしたほうがいい。摘み取りに別料金が付くという記載はなく、価格として出ているのは1皿55,000〜60,000ドンだけだ。
店で拾われた声は初来店の客が中心
VnExpressが載せている声は3人分ある。ビック・ニさん自身は、店の食材の出どころを自分で管理したかったこと、園芸への思い入れを満たしたかったことを動機として語っている。初来店のザーバオさん(30)は西部式の味で価格も妥当、野菜を遠慮なく使える点を挙げ、店が自分で育てていると知って安心したと話した。もう1人、店主と読みが近い名前の女性客ビック・ニー(Bích Ny)さんは、自分で野菜を摘んでバインセオを食べたのは初めてで畑の見学も面白かったとして、また来ると述べている。店主と同名ではない別人なので混同しないほうがいい。
11時30分から21時まで、通り沿いで駐車場は広い
店名と番地が出ていないので通り名で探す
1階の店は開いてまだ3か月ほど。通りに面した立地でバイクを置くスペースは広いと書かれている。一方で記事には店名と番地が出ていないため、地図アプリで一発で出る保証はない。タークアンブー通りとチャンフン坊という2語で当たりを付け、屋上に緑の塔が並ぶ建物を探すのが現実的だ。営業は毎日11時30分から21時まで。畑の見学と収穫体験を目的にするなら、明るいうちの早い時間に入るほうが屋上まで上がりやすい。ホーチミン市内のバスは134路線が12月31日まで運賃0ドンで動いているので、中心部から南に降りる足として使える。
1皿55,000ドンは市内でどのあたりか
| 1人あたりの目安 | 何を食べるか | 円換算(1円=165ドン) |
|---|---|---|
| 55,000〜60,000ドン | 今回の西部式バインセオ(バインコットもあり) | About 330 to 360 yen |
| 約300,000ドン | レタントン通りの路地に朝だけ開く14席の一汁三菜 | About 1,800 yen |
| 790,000ドン(税・サービス料別) | レロイ通り28階のシンガポール風チリロブスター | 約4,800円 |
価格帯としては最下段に近い。屋上の畑と収穫体験が付くことを「体験料込み」と考えれば、市内の観光向けアクティビティと比べて安い側に入る。その分、番地が分からない・店名が公表されていないという到達の手間を引き受ける必要がある。
ビック・ニさんは、客が増えれば家の別の屋上も使って畑と提供規模を広げるつもりだと話している。これは本人の予定で、着工や拡張の決定ではない。今の規模で行くなら、昼の営業が始まる11時30分すぎに入って1階の塔でレタスを摘み、食後に4階まで上がって100本の塔を見る、という順番が無理がない。旅程に入れるなら所要は1時間半ほどを見ておきたい。


