ホーチミン市の南側を東西に横切るベンルック〜ロンタイン高速道路(全長57.8キロ)が、9月30日の全線開通を目標に最後の工事に入っている。2014年7月の着工から12年目で、工事量の約80%まで進んだところで資金と制度の問題により止まっていた路線だ。つながればメコンデルタ側から、ホーチミン中心部の渋滞を抜けずにドンナイ省側のロンタイン新空港やカイメップ・チーバイ港の方向へ向かえる。ただし9月30日は「行ける場所が一気に増える日」ではない。降りられる出入口は限られ、目的地になるはずのロンタイン空港はまだ商業運航前だ。何が使えて何が使えないのかを整理する。
9月30日は目標日で、29日まで橋に25トンのダンプを並べる
最後まで残ったのはフォックカイン橋と国道51号の立体交差
事業主体のVEC(ベトナム高速道路投資開発総公社)が9月下旬に抱えていた残作業は3つ。国道51号立体交差の仕上げ、ロンタウ川を渡るフォックカイン橋の完成、後述するJ2工区の橋脚のひび割れ補強だ。フォックカイン橋は舗装を終えたあと、9月25日から29日にかけて荷重試験に入った。25トン積みのダンプを取付部で12〜16台、本体部で16〜24台並べ、桁のセンサーで通過時のたわみを測る作業だ。
国道51号立体交差のほうは、ビエンホア〜ブンタウ高速のタンヒエップ立体交差への接続部を含む主要工事を終え、検査・引き渡しの手続きに進む段階まで来ている。
開通日は前後する余地を残して報じられている
9月30日という日付は、施工者とVECが掲げる目標として現地報道に出ているものだ。VECは最終工程を9月30日に終える見通しとしつつ、1〜2日の短縮も目指すとしている。荷重試験の結果や検査の手続きが挟まるため、旅行の予定に組み込むなら前後数日の幅を見ておきたい。開業目標が動く例はベトナムのインフラでは珍しくなく、2027年11月開業予定のフーコックLRTのように、工事の締め切りと開業日が別々に管理されている案件もある。
開通してもカンジオで高速を降りることはできない
2025年から使えていたのは東西2区間の約30キロ
この路線は全線がいちどに開いたわけではない。西側はトゥンルオン高速との接続点からグエンフート(グエンバンタオ)立体交差まで、東側はフォックアン立体交差から国道51号立体交差まで。この2区間、合計約30キロが2025年から供用され、課金も始まっていた。9月30日に加わるのは、その間のグエンフート〜フォックアン区間で、ビンカイン橋・ソンチャ橋・フォックカイン橋を含む部分だ。
| Section | 主な構造物 | Situation |
|---|---|---|
| 西側(トゥンルオン高速接続点〜グエンフート立体交差) | 平面部中心 | 2025年から供用・課金中 |
| 中間(グエンフート〜フォックアン立体交差) | ビンカイン橋、ソンチャ橋、フォックカイン橋 | 9月30日の開通目標 |
| 東側(フォックアン立体交差〜国道51号立体交差) | 国道51号跨線橋 | 2025年から供用・課金中 |
ルンサック立体交差の完成予定は2028年
中間区間は旧カンジオ県ビンカイン一帯の湿地帯を高架橋で越えていく。この区間には、カンジオへ降りるための出入口がまだない。カンジオ側から市中心部へ向かう道はルンサック通りの一本だけという状態が続いており、高速との直接の接続は工事中だ。総額2兆9,690億ドン(約185億円)のルンサック立体交差は7月1日に着工し、完成予定は2028年。地下道2本と環状交差を組み合わせた多層構造で、カンジオ側6車線・ビンカインのフェリー方向4車線の接続路をつくる。9月26日にクジラを迎える海の祭りで船団が沖へ出たカンジオを高速で訪ねられるのは、当面はまだ先ということになる。
426本のひび割れは、113基のうち24基を抜き取った数字だった
2016年12月と2025年2月の調査より本数も幅も増えていた
開通直前まで続く作業のうち性格が違うのが、橋脚上部(xà mũ、柱頭部)のひび割れ補強だ。対象はJ2工区の113基。全長4.6キロが全て橋梁の工区で、住友とCienco4の共同企業体が施工し、ソンチャ橋が主要構造物にあたる。2024年10月に政府が品質鑑定を指示し、2025年半ばに実施された検定では、113基から抜き取った24基だけで幅0.1ミリ未満から0.5ミリ超まで426本のひび割れが見つかった。2016年12月と2025年2月の調査結果より本数が多く、幅も広がっており、以前は出ていなかった橋脚にも発生していた。
検定側の結論は、開口幅が規定値を超えており耐久性と寿命に懸念が残る、というもの。ダンチーの取材に応じた交通運輸大学の専門家は、橋脚上部は桁と車両の荷重が集中してひび割れに敏感で、走行中の動的な荷重は静止時より大きいことを挙げ、開通前の補強は避けられないとしている。旧カンジオ県の湿地は湿度も塩分も高く、ひびから侵食が進めば寿命が縮むという指摘も出ている。
壊してやり直さず、ケーブルで締めて閉じる
採られたのはプレストレスケーブルによる補強だ。橋脚上部の端に溝を切ってケーブルを通し、両端で緊張・定着させてコンクリートを圧縮し、ひびを狭めたうえでたわみの進行を抑える。試験施工と試験体での載荷では、ひびが狭まり、たわみも応力も許容範囲内に収まったとされている。同じ専門家は、コンクリートのひびは一度生じれば完全には閉じず、狭めて進行を抑えるのが限界だとも述べている。桁・床版・舗装まで仕上がった状態では作業空間が狭く、上層を撤去してやり直す案は費用が大きくなりすぎる。
ロンタイン空港の商業運航は12月予定で、道路が先に届いた
旅客ターミナルの進捗は77%超
この高速の売りは「メコンデルタからロンタイン空港へ」だが、空港側の商業運航開始は2026年12月の予定だ。ACV(ベトナム空港総公社)によると、最も複雑な旅客ターミナルの全体進捗は77%超、建築仕上げが約83%、機器据付が71%。主要16工区の出来高は9月中旬で契約額の約80%、第2滑走路と誘導路は約81%。総事業費は約50億ドル、面積5,364ヘクタールで、将来は年間1億人の処理能力を持つ計画だ。
いま高速で空港まで行っても、乗れる便はない
つまり9月30日以降しばらくは、この高速は「空港連絡道路」としてはまだ機能しない。効くのは既存路線の負荷分散のほうだ。いまホーチミン中心部から空港方向へ抜ける主要路はホーチミン〜ロンタイン〜ザウザイ高速で、ここに1本増えてその混雑が緩む、という位置づけで報じられている。
9月30日以降にこの道を使うなら、先に決めておくこと
料金の払い方とタグを、車を借りる前に確認する
VECはフォックアン港立体交差の料金所にノンストップ収受(ETC)の設備を設置している。早期の課金開始は投資効率と安定運営、財務の安全を保つためだと説明されている。2025年から供用中の約30キロでも既に課金されているので、レンタカーやチャーター車で走るならETCタグの登録状況と残高を借りる前に確認しておきたい。燃料費の転嫁はレンタカーとGrabで効き方が違い、E10が1リットル27,080ドンになった局面では配車料金より自走コストのほうに先に響いた。
地名が変わっているので、古い案内と地図を突き合わせる
行政区の再編で、この路線の周辺は名前が大きく変わった。路線名のベンルックは旧ロンアン省ベンルック県で、現在はタイニン省。旧カンジオ県・旧ニャーベ県はホーチミン市の行政区として整理され、カイメップ・チーバイ港群もホーチミン市として報じられる。数年前のガイドブックやカーナビの地名表記と一致しない箇所が出るので、経路は現在の行政名で確認したい。
| Item | Details |
|---|---|
| Line name | ベンルック〜ロンタイン高速道路 |
| Total length | 57.8キロ(報道では58キロ、約60キロの表記もある) |
| 両端 | タンヒエップ立体交差(ビエンホア〜ブンタウ高速側)〜ホーチミン市〜トゥンルオン高速との接続点 |
| Lanes | 走行4車線+非常駐車帯2車線 |
| 最高速度 | 時速100キロ |
| 全線開通の目標 | 2026年9月30日(荷重試験は9月25〜29日) |
| 通行料 | ノンストップ収受。約30キロで2025年から課金中 |
| Total project cost | 31兆3,000億ドン(約1,950億円/約12.1億ドル) |
| 事業主体 | VEC(ベトナム高速道路投資開発総公社) |
| Long Thanh Airport | 商業運航は2026年12月予定 |
円換算は1円=160.34ドン、1ドル=25,790ドン(ベトコムバンク2026年9月26日の送金レート)。なお総事業費は9月26日の記事が31兆3,000億ドン、同紙9月13日の記事が約29兆6,000億ドンで、報道間で数字が揃っていない。
最初の週末は避けて、10月の平日に走る
開通直後の週末は交通が集まりやすく、残作業で部分規制が入る可能性もある。走るなら開通を確認してから10月の平日を選び、フォックアン立体交差か国道51号立体交差から入って中間区間へ抜ける経路を試すのが現実的だ。フォックカイン橋とビンカイン橋は船の通行のために55メートルの高さを確保した設計で、主塔は155メートルと135メートル。主径間はそれぞれ300メートル、763メートルある。


