2026年7月10日、ベトナム南部ドンナイ省が、建設中のロンタイン国際空港へ通じる幹線道路3本の起工式を一斉に行いました。投じられる総額は約12兆ドン、米ドルにして約4億5,600万ドル(1USドル≒2万6,000ドンで換算)。空港本体は2025年12月に技術開港を済ませ、年末の商業運航開始が目前に迫っています。ホーチミン市の中心から東へ約40km、これまで「遠い田んぼの中の空港」と言われてきた場所に、いよいよ足回りが組み上がり始めた格好です。年内の開港が見えてきたロンタイン新空港を実際に使う立場から見ると、この道路着工こそが「本当に便利になるのか」を左右する分かれ目になります。
何が着工したのか、3本の道路の中身
今回同時に鍬入れされたのは、ドンナイ省が整備する省道3本です。いずれも空港と既存の高速道路・国道・港湾をつなぐ役割を担い、単なる「空港前の道」ではなく地域の物流動線そのものを作り替える計画になっています。
目玉は新設される省道770Bで、全長は約43km。国道1号や環状4号、工業団地群と空港を結ぶ新しい貨物回廊として設計され、用地だけで370ヘクタール超を要します。省道769は空港の第2ゲートに直結する連絡路で、国道1号(ダウザイ交差点)と国道51号(ロクアン交差点)をつなぎます。省道773は既存路を6〜8車線へ拡幅し、設計速度は時速80kmです。
年末開港へ、なぜ今このタイミングなのか
ロンタイン空港は第1期で年間2,500万人の旅客をさばく計画で、完成すればホーチミン圏の国際線の主役がタンソンニャットからここへ移ります。すでにホーチミン発の国際線がロンタインへ移る計画が具体化しており、滑走路やターミラルが仕上がっても、空港へたどり着く道が細ければ利用者は移動で消耗します。
ファム・ミン・チン首相は商業運航の期限を2026年第4四半期に設定し、ビエンホア〜ブンタウ、ベンルック〜ロンタイン、ホーチミン〜ロンタイン〜ダウザイといった高速道路の整備を急ぐよう繰り返し求めてきました。今回の省道3本は、その高速網と空港ゲートの「最後の数キロ」を埋めるピースにあたります。開港と道路整備の足並みをそろえるための、ぎりぎりの起工だと見るのが自然です。
数字で見る投資規模
3本の道路と空港本体の規模を並べると、この事業がドンナイ省一県の話にとどまらないことが分かります。
| Item | Scale | Investment amount |
|---|---|---|
| 省道770B(新設) | 約43km・6車線+混在2車線 | 約4.7兆ドン(約1.79億ドル) |
| 省道769(拡幅・空港直結) | 約29km・6車線以上 | 約2.8兆ドン(約1.06億ドル) |
| 省道773(拡幅) | 約39km・6〜8車線 | 約4.3兆ドン(約1.64億ドル) |
| 道路3本の合計 | 約111km | 約12兆ドン(約4.56億ドル) |
| ロンタイン空港本体 | 第1期・年2,500万人 | 約336兆ドン(約128億ドル) |
道路への4.56億ドルは、空港本体128億ドルの3.5%ほどに過ぎません。それでも旅客の体感を決めるのは、往々にしてこの「3.5%」の側です。
現地で語られていること
起工をめぐる関係者や報道の論点を拾うと、道路の狙いが観光より先に物流と渋滞対策へ向いていることが見えてきます。
- 省道770Bは高速道路・工業団地・物流拠点・空港を結ぶ基幹回廊で、完成後は新たな貨物ルートを開き、既存道路の渋滞緩和と輸送コスト低減が見込まれる、とドンナイ省側が説明しています。
- 首相はスオイティエン〜ビエンホア〜ロンタインを結ぶ都市鉄道の計画も挙げ、道路と鉄道の両面で空港アクセスを組み上げる方針を示しています。
- 並行して進むホーチミン〜ロンタイン高速の拡幅(8〜10車線、約6.1億ドル)は2026年12月の供用を目標としており、道路群全体が開港時期に合わせて動いています。
旅行者・在住者にとっての現実的な意味
この着工が私たちの移動に何をもたらすのか、実用の視点で3点に絞って考えます。
First,「開港=すぐ便利」ではないという冷静さが要ります。年末に商業運航が始まっても、省道770Bや773のような大型の新設・拡幅は数年がかりの工事です。開港直後にロンタインを発着する便を使うなら、当面はホーチミン〜ロンタイン高速に流れが集中し、市中心から40kmの移動に1時間前後、渋滞やイベント時はそれ以上を見込んでおくのが安全です。空港の華やかな開業ニュースと、地上の所要時間は分けて考える必要があります。
Second,出発空港の確認が旅程管理の最重要ポイントになることです。ホーチミン圏には当面、市内近くの第3ターミナルで拡張したタンソンニャット空港と、東40kmのロンタインが併存します。同じ「ホーチミン行き」でも発着空港が異なれば、市内までの距離も手段も別物です。航空券やeチケットの空港コード(タンソンニャットはSGN、ロンタインは新コード)を必ず見て、送迎やホテルの立地を決めるのが賢明です。
第三に、ドンナイ省側に泊まる・遊ぶ選択肢が現実味を帯びることです。道路網が整えば、空港周辺やビエンホア方面が「乗り継ぎのついでに寄れる圏内」に変わります。ブンタウのビーチや東部の工業地帯へ向かう出張者にとっては、わざわざホーチミン市内を経由せず空港から直行できる動線が生まれます。短い滞在でも、拠点をホーチミン中心から東へずらす発想が使えるようになります。
ロンタイン空港アクセスの基本情報
| Item | Details |
|---|---|
| 空港位置 | ドンナイ省ロンタイン(ホーチミン中心から東へ約40km) |
| 技術開港 | 2025年12月19日 |
| 商業運航の目標 | 2026年第4四半期(年末) |
| 第1期の処理能力 | 年間2,500万人 |
| 主なアクセス高速 | ホーチミン〜ロンタイン〜ダウザイ高速、ビエンホア〜ブンタウ高速 |
| 今回着工の省道 | 770B・769・773(合計約111km・約4.56億ドル) |
まとめ——確かめておきたい3つのこと
ドンナイ省の道路一斉着工は、ロンタイン空港が「箱だけ」で終わらないための地に足のついた一歩です。ただし旅行者や在住者にとっての利便は、開港のテープカットではなく道路の供用時期で決まります。渡航前に押さえておきたいのは3点です。第一に、自分の便がタンソンニャットとロンタインのどちらを使うか。第二に、ロンタイン発着なら市内までの移動手段と所要時間、そして料金の相場。第三に、ホーチミン〜ロンタイン高速の拡幅が予定どおり2026年末に開くかどうか。空港の開業日だけでなく、この道路群の進捗を追うことが、ベトナム南部の移動を賢く組み立てる近道になります。
