ラオカイ省ギアロー坊(phường Nghĩa Lộ)で、タイ族の輪舞シュエ・タイ(xòe Thái)がユネスコの無形文化遺産に登録されてから5年の節目にあたるムオンロー文化・観光祭が、2026年10月16日の夜に開幕する。目玉は2,026人が同時に手をつないで回る「大シュエ」で、ベトナム語の記事には「超結婚式(siêu đám cưới)」という言葉が並ぶ。ただし本物の合同結婚式ではなく、開幕公演の第3章に置かれた村の婚礼場面のことだ。祭り本体は10月15日から21日まで。日本から現地に行くなら、先に知っておくと得をする事実が3つある。開幕時刻が公式発表の中で2通り流れていること、前日の10月14日に本番と同じ通し稽古があること、そしてギアロー坊のホテル客室216室が来賓用に割り当てられていることだ。

8月に公表された計画では9月26日開幕だった日程が10月16日に動いた
ラオカイ省が8月11日に出した実施計画では、この祭りは9月25日から10月2日までで、開幕式は9月26日の夜だった。大シュエの人数は当時から2,026人と書かれている。それが10月6日午後の省人民委員会の記者会見では、会期が10月15日から21日、開幕式は10月16日20時という形で発表された。3週間ほど後ろにずれた格好だ。
場所の名前も去年までとは違う。ムオンローの中心にあるギアローは長くイエンバイ省の町として紹介されてきたが、現在はラオカイ省に属する。日本語のガイドブックや個人ブログは「イエンバイ省ギアロー」と書いたまま残っているものが多く、検索する側はこの食い違いで取りこぼす。宿やバスを探すときは、省名ではなく「Nghĩa Lộ」「Mường Lò」という地名そのもので当たったほうが早い。
行政の線が引き直されたことは、祭りの中身にも出ている。10月の会期に並ぶ地域行事の開催地として記者会見で挙がったのは、ヴァンチャン、トゥーレ、リエンソン、ギアロー、カウティア、チュンタムだ。いずれも旧イエンバイ側の地名で、それがサパやバクハーを抱える省の観光カレンダーに同居することになった。省としては棚田・茶・パラグライダーを1週間に並べて売れる形で、日程が10月中旬に動いても「mùa vàng(黄金の季節)」を冠した行事がそのまま残っている。
「超結婚式」は合同結婚式ではなく第3章で村の婚礼が輪に溶ける演出
開幕公演の題は「Xòe Thái – Trọn một vòng yêu」。構成は3章で、第1章「Mầm thương」がムオンローの開拓から村ができるまでを扱い、若い男女が「xai peng」と呼ばれる愛の糸を交わす場面を置く。第2章「Sợi nhớ」が結ばれるまでの試練、第3章「Vòng yêu」が婚礼の喜びが村中に広がって輪が大きくなっていく流れだ。種になっているのはタイ・デン族の韻文物語『Xống chụ xon xao』で、ベトナムでは「タイ族の『キエウ物語』」として紹介される長編である。
つまり「超結婚式」は、この第3章の婚礼が2,026人の大シュエに流れ込んでいく見せ場に付いた通称だ。現地メディアの見出しが「ムオンローは超結婚式で皆さんをお待ちしている」という言い回しを使ったことで、参加型の巨大な婚礼が開かれるという読み方が日本語側にも出回っている。実際に新郎新婦が登録されるわけではないので、そこを期待して行くと空振りする。
この公演を作っているのは総監督のレ・ハイイエン(Lê Hải Yến)で、ムオンローでの演出はこれが3回目、この地域に戻ってから10年目になると本人が述べている。省文化スポーツ観光局はこの祭りが核に据える遺産を「ムオンローのタイ族の古い6つのシュエの型(6 điệu Xòe cổ)」だと説明しており、公演はその型を素材に、現代的な音楽舞踊劇として組み直す形になる。遺産登録の記念という名目の行事が、実質は同じ演出家が10年がかりで育ててきた舞台作品になっている。
2,026人という人数は本文では「2,000人超」と丸められて流れている
人数の表記は媒体によって揺れる。ラオカイ省が8月に出した計画と、ティエンフォン紙が10月11日に出した記事の本文は2,026人。同じ記事は10月6日の記者会見での説明を「hơn 2.000 người(2,000人超)」と伝え、トゥオイチェー紙の10月7日の記事は「2.000 bà con dân tộc Thái」と書く。年号と同じ2,026という数に合わせて組み、原稿では切りのいい2,000に丸める。この二重表記が日本語の要約に入ると人数が2,000人で固定されるが、発表ベースの数は2,026人だ。
舞台装置の数字も出ている。3Dマッピング用のプロジェクター24台が、スタジアムの3,000平方メートル超の面に投影する。山並みや民具を使ってタイ族の村が立ち上がるような空間を作るという説明だ。
この規模を収める会場は収容約1万人のギアロー坊スタジアムで、そこに演者2,026人が入る。後方支援・接遇の小委員会が10月7日に確認した数字では、受け入れ対象は来賓384人と運営スタッフ428人の計約812人、うち中央および省外からの来賓が293人。残る席を一般の観客で埋めることになるため、省がギアロー坊人民委員会に指示して、広場など複数の中心地点にLEDスクリーンを置くことになった。入れなかった人はそこで見るという前提だ。開幕公演の直後、21時15分ごろには低空用の花火90基が上がる予定で、こちらは省の予算ではなく社会化資金(xã hội hóa)で手配されている。
10月14日の総通し稽古は本番と同じ内容が無料で見られる
日程の細部で、観光客にとって一番使えるのは本番前のリハーサルだ。小委員会の確認によると、10月13日に予備審査(sơ duyệt)、10月14日に総通し稽古(tổng duyệt)が組まれている。ベトナムのこの種の行事では、総通し稽古は衣装も照明も本番と同じ形で流すのが通例で、警備も本番より緩い。16日の夜に席が取れない見込みなら、14日の夜にスタジアム周辺にいるほうが見やすい。
16日当日は、17時30分から19時までストリートパレードがある。ルートはディエンビエン通りからグエン・クアン・ビック通りを経てギアロー坊スタジアムまでで、規模は8ブロックの約400人。開幕式の開始時刻は、10月6日の記者会見では20時、10月8日に報じられた接遇小委員会の会議では19時30分からとなっており、公式発表の中で2通り流れている。19時前にはスタジアム前に着いているほうが安全だ。開幕式はVTV2、VTV5、ラオカイのTHLCで生中継される。
ギアローは山あいの盆地で、祭りの夜は人が一点に集まる。現地で連絡や配車を使うなら、入国時点でデータ回線を確保しておいたほうが確実だ。ベトテルのeSIMはアプリで買えるので、空港のカウンターに並ぶ必要がない。
ギアローのホテル216室は来賓に割り当てられ、運営側はホームステイ456人分に回る
宿の内訳は10月8日の報道でかなり細かく出ている。ホテル・リゾート・ゲストハウスを合わせた客室216室(うちVIP客室128室)で来賓約364人を受け、コミュニティ宿泊施設・ホームステイの456人分の寝床に運営スタッフと観光事業者の代表約410人を振る。いずれも主催側が割り当てを決める枠で、一般の予約に回る部屋はこの外にどれだけ残るかで決まる。一般の旅行者が16日前後に泊まるなら、タイ族の集落に点在するホームステイを早めに押さえるか、ギアロー坊の外に宿を取って夜だけ入るかのどちらかになる。
会期中の周辺行事は、10月15日から21日にゴールドフィールド広場で「西北観光フェア2026(Hội chợ Du lịch Tây Bắc 2026)」とOCOP産品の展示、同じ期間に写真展「Du lịch Tây Bắc và Lào Cai」がゴールドフィールド広場とホーチミン主席記念地区で開かれる。料理コンテスト「Lào Cai – Chạm đỉnh vị giác」2026の決勝も会期に入る。周辺ではヴァンチャンのスオイザンでシャンティエット茶の祭り、トゥーレでパラグライダー体験「Bay trên mùa vàng」、各地で「タイ族の集落で一日暮らす」体験や田んぼでの魚つかみ大会という並びだ。土産目的なら、ギアロー坊の市街より先にフェアのOCOPブースを回ったほうが、同じ省内の茶や米加工品がまとまって見られる。
同じラオカイ省では中秋にサパで山車14基が石造教会前に並ぶ行列が出ていて、ムオンローの輪舞とは客層も動線も違う。北部山間部の自治体が観光の発信に自前で手を動かしはじめている流れは、旧ハザン省ドンヴァンの役場トップがスマホ動画で客を呼んだ件とも地続きだ。ムオンローの場合は省が主催に立ち、国営放送の枠と花火90基を社会化資金で載せるところまで来ている。
シュエ・タイがユネスコの代表一覧に載ったのは2021年12月15日、パリで開かれた第16回政府間委員会の会議だった。その輪は5年後、年号と同じ2,026人分の円に組み直されて、10月16日の夜にギアロー坊のスタジアムで回る。


