ベトナム中部高原のマンデン(Măng Đen)で、茶畑の一角が紫に沈む季節が来ている。舞台は国道24号沿いに広がる東チュオンソン茶畑(Đồi chè Đông Trường Sơn)。ここには豪州から導入されたムア花が当初およそ1,000本植えられ、8月の初旬から紫の花を咲かせてきた。標高およそ1,200メートルの涼しい高原に、濃い紫の花帯と緑の茶葉が重なる眺めが生まれ、写真を撮りに来る人が増えていると地元紙が伝えた。旅行の予定を立てている人にとって、9月は花の残る貴重な時期と重なる。
東チュオンソン茶畑で紫に咲いているのは何か
紫の正体は、ベトナム語で「hoa mua」と呼ばれるノボタンの仲間で、そのなかでも豪州から導入された品種だ。学名はMelastoma affineとして各紙が伝えている。茶畑を運営するのは、グエン・ティ・ハン(Nguyễn Thị Hằng)氏の東チュオンソン・クリーン茶合作社。ハン氏の一家は2018年にハノイからコンプロンに移り、農業への投資先を探してこの地で茶づくりを始めた。集客の目玉としてムア花を植えたのは2022年からで、当初は1,000本を植えたものの、手入れが行き届かず一部は枯れたと地元紙は伝えている。数年かけて残った株が育ち、人の背丈を超える花になった。
在来のムアと、豪州から入った品種の見た目の違い
ベトナムの山地には元から野生のムアが自生している。豪州から入った品種はその近縁種にあたるが、花弁が厚く、紫の色がより濃いと現地メディアは説明する。株の背丈も3〜3.5メートルに達し、人の目線より高い花のトンネルのように立ち上がる。茶畑の低い緑と、その上に浮かぶ濃紫という高低差が、平地の花畑では出せない立体感を生んでいる。SNSに上がる写真で花の壁が背景に回り込んで見えるのは、この背の高さのためだ。
マンデンはどこにあり、なぜ写真スポットが増えたのか
マンデンは、旧コントゥム省コンプロン郡にあった高原の避暑地だ。2025年の行政区再編で省の枠組みが変わり、現在はクアンガイ省コンプロン(xã Kon Plông)として整理されている。「マンデン」は行政上の地名というより、コンプロン一帯の高原観光エリアの通称として使われている。茶畑の所在はコンプロンのビチョオン集落(thôn Vi Choong)。ダラットほど混まず、年間を通じて涼しい気候から「第二のダラット」と呼ばれてきた土地に、写真映えする花のスポットが加わった形だ。
アクセスと観光地化の後押し
マンデンへの入り口は国道24号だ。VnExpressは、行政がマンデンを国家観光地(Khu du lịch quốc gia)にすることを目指していると伝えている。近くの丘にはカフェを併設したスポットもあり、花の名所は、こうした「行きやすくなりつつある高原」に来る理由をもう一つ足した。北部の絶景を集めたニンビン・ハザン・ホイアンが入った東南アジア絶景15選と読み比べると、ハザンのような険しい岩山の迫力とは別種の、なだらかな茶畑と花という中部高原らしい絵づくりの違いが見えてくる。
マンデンの紫スポットは一か所ではない
報道で並んで取り上げられているのが、東チュオンソン茶畑ともう一つの丘だ。旅程を組むなら、二つをセットで考えると動きやすい。
| スポット | 場所 | 花の種類 | 特徴 |
|---|---|---|---|
| 東チュオンソン茶畑 | コンプロン・ビチョオン集落 | 豪州系ムア(当初1,000本を植栽) | 茶畑の緑に濃紫の花帯。背丈3〜3.5m |
| ティエンニャンの丘(Đồi Tiên Nhân) | コントゥラン村(Kon Tu Rằng) | 在来ムア(紫〜ピンク) | カフェ併設。棚田を見下ろす構図 |
ティエンニャンの丘はもともとカフェから棚田を見下ろす写真で知られてきた場所で、そこに在来ムアの紫が乗る。茶畑側が「花の壁」なら、こちらは「花越しの棚田」。撮れる絵の方向が違うので、同じ紫でも一日で二つの構図を回収できる。座って一杯飲みながら季節の被写体を押さえるという点では、満月を待たずに撮れるハノイの中秋フォトが撮れるカフェ5選と楽しみ方が重なる。
見頃・入場料・アクセスの早わかり
裏の取れている範囲で、計画に使える情報を表にまとめた。ヘクタール規模はThanh Nienが40ha、VnExpressが30haと媒体で分かれるため、面積は目安として受け取ってほしい。
| 項目 | 内容 |
|---|---|
| 場所 | 東チュオンソン茶畑(クアンガイ省コンプロン、マンデン)、国道24号沿い |
| 花の見頃 | 8月初旬から9月(VnExpressは9月中旬、Thanh Nienは9月末までとする) |
| 入場料 | 無料(Thanh Nien報道) |
| 標高 | 約1,200メートル |
| 運営 | 東チュオンソン・クリーン茶合作社(代表グエン・ティ・ハン氏) |
| アクセス | 国道24号沿い。クアンガイ市街・コントゥム市街から入る |
いつ、どの時間に行くと外さないか
今が9月なかばなので、開花の後半にあたる。花が一度に全部咲きそろうとは限らないため、行く直前にSNSで最新の開花状況を確認してから動くと空振りが減る。高原は日中に雲や霧が出ることもあるので、光がやわらかい早朝を狙うと花の色は撮りやすい。無料で入れる場所とはいえ現役の茶畑なので、株の間に分け入って茶樹を踏まないなど、撮影のマナーは守りたい。
花の写真と一緒に、その土地の茶葉を
この茶畑がただの花畑と違うのは、運営が茶をつくる合作社だという点だ。地元紙は、合作社が茶の生産と農業観光の体験を結びつける狙いでムア花を植えたと伝えている。花を見に来た人にとって、同じ土地で育つ茶葉は自然な土産の候補になる。遠くの工場でつくられた土産物にはない「その土地の一次産品」という価値があり、贈り物にしたときの話のタネにもなりやすい。棚田や松林で世界の観光村に推された事例を集めたベトナムが世界最優秀観光村へ推した5村のように、風景と地場産品がセットになった場所は、写真の一枚で終わらず次の楽しみまで残す。
旅程に落とすなら
マンデンはクアンガイ市街やコントゥム市街から国道24号で入る高原で、日帰りよりは一泊して早朝の花を狙う方が満足度は高い。初日の午後にティエンニャンの丘のカフェで棚田と在来ムアを撮り、翌朝に東チュオンソン茶畑で豪州系ムアの花壁を撮る。この順番なら、光の良い時間帯と二つの違う構図を一度の旅で押さえられる。まず動くなら、出発前にコンプロン(マンデン)の宿を一泊分だけ確保し、当日は朝いちばんに茶畑へ向かう計画にしておくとよい。
