バオダイ帝が避暑したニャチャンの丘、仏式別荘「望月」「迎風」が再公開

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ニャチャン中心部から南へ約6km、カインロン山の緑に埋もれた5棟のフランス式別荘群がある。阮朝(グエン朝)最後の皇帝バオダイ帝と南芳(ナムフォン)皇后が1940年から1945年まで避暑に使った「カウダー別荘」だ。10年以上閉ざされていた2棟が2026年4月から見学できるようになり、8月16日にはトゥオイチェ紙が館内を写真で伝えた。ニャチャンをビーチと海鮮だけで終わらせず、ベトナム近代史の実物を歩いて確かめたい旅行者にとって、行き先が一つ増えた。

この記事は、ニャチャン旅行を計画している人と、カインホアに住む在住者に向けて書いている。派手なテーマパークではなく、静かな丘の上で王朝の終わりに触れる半日の使い方を整理する。

目次

1923年にフランスが建て、17年後に皇帝の夏の住まいになった

別荘群が建てられたのは1923年で、当初はフランス人によるものだった。皇帝が使い始めたのはその17年後、1940年からになる。バオダイ帝は1926年に即位し1945年まで在位した阮朝13代・最後の皇帝で、退位までの晩期をこのニャチャンの丘で過ごした。皇后の南芳もここに滞在した記録が残る。王宮のあるフエでも、後に別荘を構えるダラットでもなく、海に張り出した岬に夏の拠点を置いた点に、当時の皇室が海辺の避暑をどう捉えていたかがのぞく。

この地はカウダー(Cau Da)と呼ばれる港のそばにあり、別荘群そのものも「カウダー別荘」の通称で知られてきた。フランス統治期の1920年代に造られた石造の階段や、風を通す大きな窓、手入れされた庭木がそのまま残り、100年前の避暑地の空気を今に伝える。皇帝の私邸としてだけでなく、当時の南部沿岸に築かれた植民地建築の一例としても読める建物だ。

建物はカインホア省人民委員会から「歴史文化遺跡・景勝地」として認定されている。観光施設として作られた復元ではなく、行政が遺跡として位置づけた本物という点は、訪れる前に押さえておきたい。派手な演出はないが、そのぶん静かに歴史と向き合える。

公開されたのは「望月」と「迎風」の2棟、残る3棟はまだ扉の向こう

5棟のうち今回入れるようになったのは望月(ヴォングエット)楼と迎風(ギンフォン)楼の2棟だ。10年あまり閉鎖されていた建物を修復し、館内には当時の調度や歴史資料が並ぶ。残る3棟は今のところ非公開で、名前も公表されていない。つまり見学できるのは複合施設の一部にすぎず、敷地全体が一度に開かれたわけではない。この「2棟だけ」という現状を知らずに行くと、期待した規模との差に戸惑うかもしれない。

建物そのものより価値があるのは立地だ。岬の高みからはニャチャン湾、カウダー港、そして沖に浮かぶホンチェ島まで見渡せる。海を上から眺める体験はニャチャン湾クルーズで海面から島々を巡るのと対になり、同じ湾を陸と海の両方から味わう組み立てができる。上空からの眺めを狙うカインホア3湾の水上飛行機構想が実現すれば、丘・海・空の三方向がそろうことになる。

日本の旅行者が半日を割く価値はどこにあるか

バオダイ帝が退位した1945年は、日本の敗戦と同じ年だ。フランス植民地下で建てられた別荘に、日本軍の進駐とその後の独立運動が重なる時期に皇帝が身を置いていた——そう考えると、この丘は東南アジアの近代と日本史が交差する場所として読める。ビーチリゾートの記憶しか持ち帰らない旅から一歩踏み込み、王朝が終わっていく現場に立てるのが、この2棟の最大の意味だ。日本人にとってベトナムの近代史は距離が遠く感じられがちだが、同じ1945年という年号を手がかりにすれば、丘の上の別荘は一気に自分ごとに引き寄せられる。

実利の面でも使い勝手はいい。中心部から6kmと近く、午前に別荘、午後にビーチや海鮮という組み方が成立する。夏のニャチャン海フェスの時期に合わせれば、祭りの喧騒と丘の静けさを一日で往復できる。

行く前に確認したい3点

  • 開館は月曜から金曜。週末は閉まっているため、土日中心の旅程だと入れない。カウダー地区は中心部からタクシーやGrabで15分ほど。
  • 公開は望月楼と迎風楼の2棟のみ。全5棟を回れると思って行かない。入場料や開館時間の詳細は現地掲示や最新情報で必ず確認する。
  • 丘の上で日陰が少ない。帽子と水を持ち、午前の早い時間か夕方の光がやわらぐ時間帯を狙うと、湾の眺めもきれいに収まる。

ニャチャンは海の街として知られてきたが、この2棟が開いたことで「阮朝最後の皇帝が海を見た丘」という新しい入口ができた。次にニャチャンへ行くなら、ビーチへ下りる前にまずカインロン山の別荘へ上がってみてほしい。海面からでは決して見えない角度で、湾とホンチェ島が一望できる。

参照元

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この記事を書いた人

ベトナム・ホーチミン在住3年目|旅行で来るだけでは知ることができない、現地にいるからこそわかるローカル情報を中心に発信していければと思いベトナム旅行の専門情報サイトを立ち上げました。

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