ホーチミンから近隣ASEAN諸国へ飛ぶ航空券が、8月から9月にかけて大きく下がっている。シンガポール、バンコク、クアラルンプールといった週末でも往復できる路線が中心で、片道1万円前後、往復でも2万円台という値付けが並ぶ。夏の帰省・旅行ラッシュが引いたあとの端境期に、複数の航空会社が同じ路線で価格をぶつけ合った結果だ。ホーチミン在住者と、出張でサイゴンに滞在する人にとっては、動けば得をする2カ月になる。
片道1万円前後、往復でも2万円台の値付け
ホーチミン発シンガポール行きは、ベトジェットが基本運賃1万9,000ドン(税・手数料込みで約1.6百万ドン)、スクートが1.4〜1.8百万ドンの片道を出している。円に直すとおよそ8,000〜1万1,000円だ。バンコク行きは片道1.9百万ドンを切る水準で、往復でも3.5〜4百万ドンにおさまる。クアラルンプールやプーケットは往復4百万ドン前後、ジャカルタは往復6.3百万ドンほど。同じ時期のホーチミン〜ハノイ国内線が片道2.2〜2.5百万ドンすることを考えると、国内を飛ぶより近隣国へ出たほうが安い逆転が起きている。
| 路線(ホーチミン発) | 運賃(片道/往復) | 円換算(概算) |
|---|---|---|
| シンガポール(LCC) | 片道 1.4〜1.8百万ドン | 約8,000〜1万1,000円 |
| バンコク | 片道 1.9百万ドン未満 | 約1万1,000円未満 |
| クアラルンプール | 往復 約4百万ドン | 約2万3,000円 |
| プーケット | 往復 4百万ドン強 | 約2万3,000円 |
| ジャカルタ | 往復 約6.3百万ドン | 約3万7,000円 |
円換算は1円≒170ドンで計算した概算。運賃は取得時期・予約タイミングで変動する。
なぜ8〜9月に下がるのか
理由は大きく三つある。ひとつは需要の谷。ベトナムの夏休みとお盆にあたる旅行ピークが7月で一段落し、学校が始まる9月に向けて客足が落ちる。座席を埋めきれない航空会社が値を下げる。
ふたつめは供給の増加。ベトナム航空はホーチミン〜プーケット線を開設し、ベトナム航空とベトジェットはそろって8月にホーチミン〜コロンボ(スリランカ)線を飛ばし始めた。近隣路線に機材と座席が増えれば、既存路線の運賃にも下押し圧力がかかる。ホーチミンから就航する新路線の広がりは越スリランカ初の直行便の記事でも触れている。
三つめは競争。シンガポール、バンコク、クアラルンプールはベトナム航空・ベトジェット・スクートなど複数社が重なる激戦区で、1社が下げれば横並びで下がる。同じ構図は国内線でも起きていて、深夜帯に安値が出る仕組みは国内線の値下がりを解く記事で書いた通りだ。
市場は伸びているのに運賃は下がる背景
需要そのものは細っていない。2026年上半期のベトナム発着国際線旅客は2,620万人で、前年同期から15.4%増えた。ベトナム系航空会社が国際線109路線、外国の航空会社が235の定期路線をベトナムに乗り入れている。全体のパイが広がる一方で、同じ近隣路線に各社が座席を積み増すため、端境期には運賃だけが局所的に崩れる。旅行者にとっては、就航が増えるほど選べる便が増え、価格の底も深くなるという追い風になる。
在住者・出張者はこの2カ月をどう使うか
安いのは「ホーチミン起点・近隣ASEAN・平日発」の組み合わせだ。使い方を具体的に挙げる。
- 金曜夜発・日曜夜帰りの週末弾丸。シンガポールやバンコクなら片道3時間圏で、往復2万円台に食事や街歩きを足しても週末の予算で完結する。
- ビザや在留の都合で一度出国したい在住者の区切り旅。近隣路線が安い今なら、出入国のための移動コストを最小化しつつ観光も兼ねられる。
- 出張の前後泊を近隣国に伸ばす使い方。ホーチミン滞在に1〜2日足してバンコクやKLへ寄る行程が組みやすい。
- 年末年始や旧正月の高い時期を避けたい人の前倒し。9月の底値で近隣国を先に消化しておく。
予約で損をしないための実務
- LCCの表示運賃は座席指定・受託手荷物・機内食が別料金。総額で他社と比べる。手荷物を預けると価格差が縮むことがある。
- 片道ずつ別会社で組むと安くなる場合がある。往路スクート・復路ベトジェットのような組み合わせを検討する。
- 平日発・平日帰りに1日ずらすだけで数千円動く。金曜発より木曜発が安いことが多い。
- ロンタイン新空港への一部国際線移転が控えるため、年末以降はどの空港発かを予約時に確認する。
- 遅延・欠航時の払い戻しルールは変わっている。トラブル時に取り戻せる金額は遅延4時間で全額返金の新ルールを押さえておく。
動くなら9月まで
この安値は端境期の需給と新路線の増便が重なった一時的なものだ。10月以降は行楽シーズンと年末需要で戻る可能性が高い。近隣ASEANに用がある在住者・出張者は、片道1万円前後で飛べる8〜9月のうちに日程を先に押さえるのが得策だ。総額とオプション料金を確かめ、平日発で組めば、週末や区切り旅を安く仕上げられる。
