ベトナムは世界2位のコーヒー生産国として知られていますが、ここ数年で「抹茶」が新たな主役として台頭しています。ホーチミンやハノイでは抹茶専門カフェが急増し、若者が長蛇の列をつくる風景は、もはやコーヒーチェーンの専売特許ではなくなりました。その背景にあるのが、ラムドン省バオロックで進む日本式抹茶生産の本格化と、Doi Dep(ドイデップ)をはじめとする現地ブランドの台頭です。本記事ではベトナム在住者の視点から、ベトナム抹茶の最新事情と、お土産として持ち帰る際の選び方まで網羅的に解説します。
急成長するベトナム抹茶市場とその背景
ベトナムで抹茶が一気に注目を集めるようになったのは2020年代以降。世界の抹茶市場は42億ドル規模・年9.5%成長と推計されており、その波がアジアの新興国にも広がっています。ベトナム国内ではTikTok ShopやShopeeでの抹茶ラテ用パウダーの売上が急増し、カフェ・スーパー・コンビニまで広く流通するようになりました。
ブームを牽引している要素は3つあります。1つ目はカフェ文化の進化。Highlands CoffeeやThe Coffee Houseといった大手チェーンが抹茶ドリンクをメニューに取り入れ、ホーチミン市内には抹茶専門カフェが10店舗以上オープン。2つ目は健康志向の高まり。若者世代がカテキン・テアニンに注目し、コーヒーの代替として抹茶を選ぶ流れが生まれました。3つ目は日本食ブーム。寿司・ラーメンに続く「日本らしい体験」として、抹茶が選ばれています。
カフェ巡りやお土産選びの場面で抹茶に出会う機会は急増しており、ベトナム旅行のテーマとしても無視できない存在になっています。
ベトナム抹茶の主要産地:ラムドン省バオロック
ベトナム産抹茶を語るうえで欠かせないのが、ラムドン省のバオロック(Bao Loc)です。ホーチミンから車で北東に約4時間、標高約800mの高原地帯に位置するこの街は「ベトナムの茶の都」と呼ばれてきました。フランス植民地時代に茶の栽培が始まり、現在も国内最大級の茶畑が広がっています。
標高800mの高原と霧が育てる茶葉
バオロックの茶栽培に適した条件は3つ。年平均気温22度前後の冷涼な気候、年間を通じて発生する霧、そして粒子の細かい玄武岩質の土壌です。霧が直射日光を遮ることで、自然な被覆栽培に近い状態が作られ、テアニンを豊富に含む柔らかな茶葉が育ちます。日本の抹茶産地である宇治・西尾と気候条件が一部似ていることも、近年の品質向上を後押ししています。
日本式被覆栽培の導入
2010年代後半から、バオロックの茶園では日本式の被覆栽培(シェーディング)技術が本格的に導入されました。茶葉を黒い遮光ネットで20日ほど覆うことで、テアニン含有量を高め、苦味成分のカテキンを抑えるこの技術は、日本産高級抹茶の根幹技術。バオロックではこの方法に加え、専用の石臼で茶葉を粉砕する工程まで一貫して行う工場が複数稼働しています。
VietGAPとオーガニック認証
欧州・北米輸出を視野に入れた茶園では、ベトナム独自の良農業規範であるVietGAPに加え、有機JAS・USDAオーガニックなど国際認証の取得が進んでいます。残留農薬基準が厳しい先進国市場への対応が、産地全体の品質底上げにつながっています。
Doi Dep(ドイデップ)—バオロック発のプレミアム抹茶ブランド
ベトナム抹茶のトップランナーとして名前が挙がるのが、バオロックを拠点とするDoi Dep(ドイデップ)です。広大な自社茶園と日本式設備を組み合わせ、ベトナム国内のプレミアム抹茶市場を切り開いてきた存在で、抹茶愛好家のあいだでは「ベトナム産でここまで仕上がるのか」という驚きの対象になっています。
ブランド名の由来「一足のサンダル」
「Doi Dep」とはベトナム語で「一足のサンダル」を意味する言葉。サンダルは2つで一対になって初めて機能することから、「人と人、土地と人、自然と人の切っても切れない関係」を象徴するブランドコンセプトとして掲げられています。茶園・職人・消費者の縁を大切にする思想は、和のおもてなし文化とも通じる部分があります。
日本式技術導入と専門家招聘
Doi Depの最大の強みは、日本人の茶業専門家を招聘して技術指導を受けている点です。被覆栽培、摘採タイミング、蒸し・乾燥工程、石臼挽きまで、日本産抹茶の標準工程を現地の気候・土壌条件に合わせて最適化。テアニン値で日本産プレミアムグレードに迫る品質を実現したと言われています。
Tea Resort(茶園リゾート)の運営
Doi Depが他ブランドと一線を画すのが、茶園と一体化した高級リゾート「Tea Resort」を運営している点です。茶畑を見渡せるヴィラや、抹茶を点てる体験プログラム、茶懐石風の食事まで揃い、訪問者は「茶を飲む」のではなく「茶の文化に泊まる」体験ができます。バオロック観光の目玉としても紹介されることが増えており、ホーチミンやダラットからの週末旅行先として定着しつつあります。
製品ラインナップ
Doi Depの抹茶製品は大きく3グレードに分かれます。茶道用のセレモニアルグレード、カフェ・ラテ向けのプレミアムグレード、そしてスイーツ・料理用のクッキンググレード。専門店の他、ホーチミンの一部高級スーパーや空港の土産物店でも見かけるようになっています。
日本産抹茶 vs ベトナム産抹茶の違い
ベトナム産抹茶を初めて飲む日本人の多くが驚くのは、味わいが想像していたよりも軽やかであることです。日本産との違いを在住者目線で整理すると以下のようになります。
| 項目 | 日本産抹茶(宇治・西尾) | ベトナム産抹茶(バオロック) |
|---|---|---|
| 色味 | 深く濃い緑色 | 明るい黄緑色 |
| 香り | 海苔のような旨味系 | 新緑のようなgrassy系 |
| 味わい | 濃厚な旨味と甘み | 軽やかで爽やか・わずかな酸味 |
| 価格帯(30g) | 1,500〜5,000円 | 500〜1,500円 |
| 得意な飲み方 | 濃茶・薄茶(ストレート) | ラテ・スイーツ・料理用 |
日本産は「点てて飲む」ことを前提とした旨味重視の設計。一方ベトナム産は気候の違いから旨味は控えめで、ミルクや甘味と合わせるラテ・スイーツ用途で真価を発揮します。日本産の代替ではなく、別ジャンルの選択肢として捉えるのが正解です。
飲み比べ体験のすすめ
ベトナム旅行中に両者を飲み比べる機会があれば、ぜひ試してみることをおすすめします。例えば朝に日本産抹茶を点てて飲み、夕方にベトナム産のラテを楽しむといった「2杯使い」をすると、それぞれの個性がはっきり感じられます。
ベトナム抹茶を体験できる現地カフェ
ベトナム抹茶を一杯から手軽に試せるのが、各都市で増えている抹茶専門カフェです。在住者目線でおすすめの店舗を厳選しました。
MIYAEN(ダラット・バオロック)
バオロック産ベトナム抹茶を主役に据えた専門カフェ。日本の和スタイル空間でローカル産抹茶を楽しめる稀有な存在で、産地直送の鮮度感が魅力です。詳しくはMIYAEN完全ガイドで解説しています。
Atelier Matcha(ホーチミン)
京都・宇治発の抹茶ブランドが2025年に海外1号店を出店。日本産抹茶の品質をベトナムで体験できます。ココナッツミルクMATCHAラテなど現地限定メニューも要チェック。詳しくはAtelier Matcha完全ガイドを参照ください。
Nagocha Matcha(ホーチミン中心)
ベトナム初の日本式抹茶専門チェーン。京都・宇治・鹿児島・福岡・静岡など日本各地のセレモニアルグレード抹茶を使用しています。詳しくはNagocha Matchaガイドへ。
Yakishime(カントー)
メコンデルタの中心都市カントーで、日本の侘び寂び美学を体現する和風抹茶カフェ。詳しくはYakishime完全ガイドで紹介しています。
ベトナム抹茶をお土産として買う方法
カフェで気に入った味を「持ち帰りたい」「家族や友人に渡したい」と考えたら、お土産として買える場所を押さえておきましょう。日本産と比べて手頃な価格でプレミアムグレードを入手できるのがベトナムならではの魅力です。
高級スーパーマーケット
ホーチミンのAnnam Gourmet Market、ハノイのIntimex、全国チェーンのCo.opMartやWinMartなどで、ベトナム産抹茶のリテールパッケージが買えます。価格帯は30g 100,000〜250,000VND(600〜1,500円)程度。Doi Depなど主要ブランドの製品も取扱店舗が増えています。
ブランド直営店・茶専門店
Doi Depの直営店ではTea Resort内のショップを中心に、Trà Việt(ベトナム茶専門店)など茶専門店でも本格的なベトナム抹茶を購入できます。値段は少し上がりますが、産地や製造日まで明示された安心感が魅力です。
空港免税店
タンソンニャット国際空港(ホーチミン)、ノイバイ国際空港(ハノイ)の出国エリアの土産物店でもベトナム産抹茶を扱っています。帰国直前に買い忘れた場合の最後のチャンスとして覚えておくと安心です。
オンライン(旅行前・旅行後)
Shopee Vietnam・TikTok Shop・Lazadaなどのプラットフォームでも、Doi Depなど主要ブランドの抹茶が購入できます。旅行前に試したい場合や、帰国後に追加注文したい場合に便利です。日本への国際配送に対応している店舗も増えています。
渡す相手別おすすめのベトナム抹茶お土産
「誰に渡すか」によって最適な選び方は変わります。在住者目線で4つのパターン別におすすめを整理します。
抹茶好きの友人へ
セレモニアルグレード(30g 1,000〜1,500円)が最適。日本産との比較を楽しんでもらえる「飲み比べギフト」として機能します。Doi Depなど産地・ブランドが明確なものを選ぶと話題が広がります。
お茶愛好家・両親世代へ
ベトナム緑茶や蓮茶とのセットがおすすめ。ベトナム茶の世界観をまるごと体験してもらえます。ベトナム茶お土産まとめと蓮茶(ハス茶)特集もあわせて参考にしてください。
健康志向の人・職場へのばらまき
カフェ用パウダーやティーバッグタイプ(10〜20包入り、500〜800円)が便利。職場でラテをつくって楽しんでもらえる、実用性の高い土産になります。
自分用・料理好きへ
クッキンググレード(100g 700〜1,200円)はスイーツや料理にたっぷり使えるのでお得。和洋菓子、抹茶ラテ、抹茶ソルトなど用途が広く、毎日の料理に取り入れやすいのが魅力です。
よくある質問
ベトナム抹茶お土産購入前に多く寄せられる疑問をまとめます。
Q. ベトナム産抹茶は日本に持ち帰れますか?
A. 加工された粉末状の抹茶であれば、日本への持ち込みに特別な制限はありません。ただし、商業利用の大量持ち込みは別ルールが適用されるので個人土産の範囲で楽しんでください。
Q. 賞味期限はどのくらいですか?
A. 未開封で製造から1年〜1年半が目安。開封後は冷蔵で1ヶ月以内に飲みきるのが推奨です。
Q. 日本の抹茶と同じように点てられますか?
A. 同じ茶筅で点てられますが、ベトナム産は味が軽いためラテやスイーツに使う方が適しています。点てるなら少量に対しお湯多めで薄めに調整するのがコツです。
Q. Doi DepのTea Resortは観光で訪れられますか?
A. 訪問可能です。バオロックまではホーチミンから車で約4時間、ダラットから約2時間。茶園見学+抹茶体験のデイトリップから宿泊まで対応しています。
Q. オーガニック認証付きのベトナム抹茶はありますか?
A. 一部の高級ブランドで有機JAS・USDA認証取得品があります。パッケージの認証マークを確認して選びましょう。
ベトナム抹茶お土産選びのまとめ
ベトナム産抹茶は、コーヒーに次ぐ「もう一つのベトナム産嗜好品」として急成長しています。バオロック発のDoi Depを筆頭に、日本式技術と現地気候が融合した独自の抹茶文化が、ここ数年で一気に花開きました。日本産抹茶の代替ではなく、ラテ・スイーツ・料理向けの新しい選択肢として、お土産にも自分用にも価値ある選び方ができます。
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