ベトナムで2026年7月1日から、公務員の基本給や年金の引き上げ、そして所得税法の改正がまとめて動き出しました(2026年7月1日報道)。地元メディアは同日施行の法令が29本にのぼると伝えていますが、現地で働く・暮らす日本人にとって手取りや生活実感に効いてくるのは、所得税の控除拡大・税率の簡素化、公務員の基本給改定、年金の8%引き上げの3つです。この記事では、通達の丸写しではなく「在住者にどう影響するか」を軸に、制度の中身と実務への向き合い方を整理します。
7月1日に何が起きたのか
2026年7月1日を境に、給与・税金・年金にまたがる制度がほぼ同時に切り替わりました。柱は改正個人所得税法の施行、公務員の基本給(mức lương cơ sở)の引き上げ、年金・社会保険給付の底上げです。とくに個人所得税は、外国人であってもベトナム国内で得た給与所得に課税されるため、駐在員や現地採用で働く日本人にも無関係ではありません。一方で、よく一緒に語られる地域別最低賃金の引き上げは、この7月ではなく2026年1月1日に先行して施行済みで、時期が異なる点は押さえておきたいところです。
所得税:基礎控除が上がり、税率は7段階から5段階へ
改正の目玉は、家族控除(giảm trừ gia cảnh)の引き上げです。本人分の基礎控除は月1,100万ドンから1,550万ドンへ、扶養家族1人あたりの控除は月440万ドンから620万ドンへと拡大しました。これにより、扶養がいない人は月収1,700万ドンまで、扶養1人なら月収2,400万ドン、扶養2人なら月収3,100万ドンまで所得税がかからない計算になります。
あわせて累進税率の区分が7段階から5段階へと簡素化され、最高税率35%が適用される所得ラインは月1億ドン超に引き上げられました。区分が減ったこと自体は税額の直接の増減を意味しませんが、控除拡大と合わせて中〜高所得層の負担感が変わります。なお、法律の正式な発効日は7月1日ですが、給与・賃金・事業所得に関する規定は2026年1月1日にさかのぼって適用され、2026年分の確定申告から新しい控除額が使えるとされています。年の途中で「いつから効くのか」を取り違えると精算時に混乱するため、時系列は分けて理解しておくと安全です。
公務員の基本給と年金:8%の引き上げ
公務員の基本給は234万ドンから253万ドンへ、およそ8%引き上げられました。この基本給はベトナムの制度で幅広く「係数×基本給」の計算基礎になっており、社会保険料の一部の上限などにも波及します。年金・社会保険給付も6月水準から一律8%引き上げられ、受給額が月350万ドン以下の人には月30万ドンの上乗せ、350万〜380万ドンの層は380万ドンまで底上げされます。低年金層ほど手厚くする設計です。
日本人在住者が公務員年金を直接受け取る場面は多くありませんが、基本給が上がると社会保険まわりの計算基礎が動くため、現地法人で給与計算に関わる立場の人は自社の控除額・保険料の再確認が要ります。「自分の給与明細のどの行が変わるのか」を早めに人事・会計に確認しておくと、7月以降の支給額のズレに慌てずに済みます。
数字で見る主な改定
| Item | 改定前 | 改定後(2026年7月〜) |
|---|---|---|
| 本人の基礎控除(月) | 1,100万ドン | 1,550万ドン |
| 扶養1人あたり控除(月) | 440万ドン | 620万ドン |
| 所得税の税率区分 | 7段階 | 5段階 |
| 公務員基本給(月) | 234万ドン | 253万ドン |
| 年金・社会保険給付 | ― | 一律8%引き上げ |
在住者・出張者にとっての実務ポイント
まず給与所得者が確認したいのは、扶養控除の適用です。控除額が上がったぶん、扶養している家族をきちんと登録しているかどうかで手取りの差が広がります。配偶者や子ども、扶養する親などが対象になり得るため、登録が漏れていないか会社の経理に確認する価値があります。次に、2026年分の年末調整・確定申告のタイミング。給与所得への新控除は2026年1月1日にさかのぼって適用されるため、年の前半に多めに源泉徴収されていた場合は精算で戻る可能性があります。
物価や交通など日々の暮らしについては、ホーチミンの路線バス134路線が7月から無料になる動きのように、家計に直接効く変化も同時期に進んでいます。税制と生活コストの両面が同じ夏に動くので、給与の手取りと固定費をセットで見直すと変化を把握しやすくなります。入国手続き面では、7月から健康申告が復活する運用も始まっており、出張・帰任のたびに事前準備の項目が増えています。
制度改定の背景と、これからの見通し
今回の一連の改定は、賃金上昇と物価に合わせて控除や給与の基準を実態に近づける流れの一部です。所得税の基礎控除は長らく据え置かれてきたため、生活コストの上昇に対して控除が追いついていないという指摘が続いていました。控除の引き上げと税率区分の簡素化は、中間層の可処分所得を下支えする狙いがあると読めます。地域別最低賃金が1月に7.2%上がり、7月に基本給と年金が8%動いたことを合わせると、2026年は制度側の底上げがまとまって進んだ年になりました。
現地で働く日本人にとっては、手取りが増える方向の変化が中心ですが、恩恵を取りこぼさないためには扶養登録と申告の正確さが前提になります。制度は今後も賃金・物価に応じて調整が続くとみられるため、給与明細と控除の中身を年に一度は棚卸しする習慣を持っておくと安心です。
Frequently asked questions
Q. 外国人でもベトナムの所得税改正の対象になりますか?
A. ベトナム国内で得た給与所得は、居住者・非居住者を問わず個人所得税の対象になります。居住者であれば家族控除の引き上げも適用されるため、扶養の登録状況によって手取りが変わります。自分がどの区分に当たるかは会社の経理や税務の担当に確認するのが確実です。
Q. 新しい控除はいつの給与から反映されますか?
A. 改正法の正式な発効は2026年7月1日ですが、給与・賃金・事業所得に関する規定は2026年1月1日にさかのぼって適用され、2026年分の確定申告から新しい控除額が使えるとされています。年の前半に多めに源泉徴収されていた場合は、精算で調整される可能性があります。
Q. 最低賃金も7月に上がったのですか?
A. 地域別最低賃金の約7.2%引き上げは、7月ではなく2026年1月1日に先行して施行されています。7月1日に動いたのは公務員の基本給と年金の8%引き上げ、そして所得税法の施行で、時期が分かれている点に注意してください。
Sources
VnExpress: Những chính sách nổi bật có hiệu lực từ tháng 7
Vietnam Briefing: Vietnam Amends Personal Income Tax Law
Vietnam+: Base salary set to rise to 2.53 million VND from July 1
Vietnam Briefing: Vietnam’s Regional Minimum Wage Effective from January 1, 2026
