ベトナム商工省(Bộ Công Thương)と財政省は9月24日15時から燃料の小売価格を改定し、主力のバイオ燃料ガソリンE10 RON95-IIIが1リットル27,080ドンになった。前回の小売値から1,450ドン高く、VnExpress英語版は5.67%の上昇と伝えた。ところが同じ1週間の世界の製品価格は、品目によってむしろ下がっていた。元売り側は、価格安定基金の「支え」を使わなかったことも要因のひとつだと説明している。レンタカー、Grab、長距離バスで効き方は同じにならない。
27,080ドンはどの油種の価格か
英語報道では「RON95」と短く書かれるが、発表文と現地紙の表記はE10 RON95-III、エタノールを10%混合したユーロ3相当のガソリンだ。E5 RON92は別の油種で26,390ドン、ディーゼル0.05S(mức II)は30,490ドン。価格も上げ幅も違う。
国が上限を示すのは4品目だけ
現地紙の解説によれば、事業者は販売価格を自ら決められるが、商工省が公表した価格を上回ることはできない。通達文でもディーゼルとマズートの行には「không cao hơn(これを上回らない)」と明記されている。国が出すのは上限で、店頭価格ではない。ペトロリメックス(Petrolimex)、PVオイル、サイゴンペトロが公示した価格は通達の数字より7ドン下だった。上限を示す対象は下表の上4品目に限られ、残りは各社が決める。
| Fuel type | 国の上限 | 小売公示(9/25時点) | 前回比 |
|---|---|---|---|
| E10 RON95-III | 27,087ドン/L | 27,080ドン/L(約1.04ドル) | +1,451ドン |
| E5 RON92(mức II) | 26,397ドン/L | 26,390ドン/L(約1.01ドル) | +1,258ドン |
| ディーゼル 0.05S | 30,497ドン/L | 30,490ドン/L(約1.17ドル) | +552ドン |
| マズート 180CST 3.5S | 19,472ドン/kg | 19,470ドン/kg(約0.75ドル) | +276ドン |
| E10 RON95-V(ユーロ5) | Exception | 28,080〜28,640ドン/L | +1,250〜1,280ドン |
| ディーゼル 0.001S(mức V) | Exception | 32,090ドン/L | — |
ユーロ5ガソリンは28,000ドン台、給油する地域でも変わる
ペトロリメックスのE10 RON95-Vは、油槽所に近いvùng 1で28,080ドン、遠隔地のvùng 2で28,640ドン。トゥオイチェー紙は、ユーロ5規格が上級車種やガソリン乗用車向けだと説明する。地域差は上限対象の油種にも及び、アンファット・ペトロはE10 RON95-IIIをvùng 2で27,620ドンと公示した。ヘッドラインより1リットル500ドン以上高い値札が現実にある。ドル換算は9月24日時点で27,080ドン=1.04ドルとするVnExpress表記から逆算した1ドル≒26,040ドンによる。
世界価格は品目で分かれた、では1,450ドンはどこから来たのか
ここが今回いちばん読み違えやすい。トゥオイチェー紙は、9月17日と24日の改定期の平均でみた世界の製品価格を数字で示す。全体の傾向は下向きだが、E10 RON95-IIIの原料になるRON95だけは0.66%上がっている。世界の原油は同じ週に一時1バレル100ドルを割り込んだ。
| Item | 世界の製品価格(前期比) | 国内の改定 |
|---|---|---|
| E5 RON92用の RON92 | −0.252ドル/バレル(−0.18%) | +1,258ドン/L |
| E10 RON95-III用の RON95 | +0.970ドル/バレル(+0.66%) | +1,451ドン/L |
| ディーゼル 0.05S | −9.306ドル/バレル(−5.10%) | +552ドン/L |
支出を止めた安定基金の1,250ドンと2,000ドン
答えは価格安定基金(Quỹ bình ổn)の扱いにある。前回まで基金からは、バイオ燃料ガソリンに1リットル1,250ドン、ディーゼルに2,000ドン、マズートに1kgあたり1,250ドンが充てられていた。9月24日の改定で当局は積み立てを止めたままにし、基金からの支出も停止した。トゥオイチェー紙の取材に応じた元売りの担当者は、世界価格が下がる中での値上げには基金という「支え」を使わなかった要素があると話す。
数字を並べると裏づけが取れる。E5 RON92は原料価格が0.18%下がったのに国内で1,258ドン上がった。消えた支出が1,250ドンなので、上げ幅のほぼ全額が基金の停止分にあたる。ディーゼルは2,000ドンの支出が消えた一方で世界価格が5.10%下がり、差し引き552ドンの上昇で収まった。原文は2つを並べるだけで因果を断定していないが、筆算すると相場より制度が効いていた。当メディアが9月10日の改定局面で「基金を取り崩せば上げ幅は圧縮されうる」と書いた変数が、逆向きに働いた形だ。
基金の残高は年初の3.5%まで細っていた
基金そのものが薄い。財政省の集計では、6月末に事業者が持つ残高は1,960億ドン超(196 tỷ 超、約750万ドル)で、年初水準の約3.5%相当だった。予算からの立替として追う別枠には1兆7,150億ドン近くが残る。政府は3月の急騰後にこの立替の仕組みを設け、第2四半期に7,000億ドン超を投入した。緩衝材が細ったうえ支出も止めたので、次に世界価格が動けば、上下どちらでも店頭に出るまでの目減りが小さい。
Grabは燃料費が運賃表に自動で乗る仕組みではない
「ガソリンが上がったからGrabも上がる」という連想は、いまのベトナムでは素直に成り立たない。Grabは二輪20%・四輪25%の固定控除に加え、2024年以降は変動するアプリ利用料を重ねる方式をとっており、燃料費が運賃表に自動で足される仕組みではない。
実質受取は50〜75%、バイクの平均は62%
VnExpressは9月10〜12日、2kmから18.5kmまでの配車26件でドライバー側のアプリ画面を集計した。実質受取は二輪50〜75%、四輪約55〜75%、平均は二輪約62%、四輪約66%。以前は運賃の70〜75%で固定だったという。プラットフォーム料もこの3年で四輪1件あたり4,000ドンから5,000〜19,000ドンへ上がった。EBCフィナンシャル・グループのシニア市場アナリスト、サナ・ウル・レーマン氏は、Grabが競合のGreen SMとの競争で運賃を上げにくく、燃料費が上がる局面では、収入の振れをドライバーが引き受ける構図になりうると指摘する。さらに商工省の国家競争委員会が9月8日、Grabに運賃・手数料・控除の資料提出を求め算定方法を照会中だ。この最中に運賃表を上げる判断は取りにくい。1,450ドンの上昇は、まず運転する側の財布から出ていく。
乗客側に出るのは料金改定より待ち時間
乗客が体感しやすいのは、料金表の書き換えより配車の付きにくさだ。ドライバー側は9月12〜13日に一斉にアプリを切る呼びかけを行った。VnExpressが伝えた証言では、短距離で実質受取が5割台になる一方、誰も受けたがらない遠距離では運賃が上がって控除が下がり、8kmの配車でドライバーの受取が84,000ドン、受取率83%になった例がある。燃料費が上がるほど短距離や渋滞路は受け手が減る。ホーチミン中心部の迂回が必要なルートでは、走行距離が伸びる分この影響が重なる。
レンタカーとバスで効き方が分かれるのは油種が違うから
満タン1回の差は約65,000ドン
レンタカーやレンタルバイクは燃料が借りた人の負担なので、値札がそのまま効く。45リットルのタンクを満タンにすると、E10 RON95-IIIなら1,451ドン×45で約65,300ドン(約2.5ドル)増える。ユーロ5指定なら1,250ドンの上げ幅で約56,250ドン(約2.2ドル)。バイクの4リットル給油は約5,800ドン(約0.2ドル)と小さい。
4週間でガソリンは約19%、ディーゼルは約9%
長距離バスや観光バス、貨物はディーゼルで走る。その上げ幅はガソリンよりはるかに小さい。トゥオイチェー紙の集計では、8月27日の改定から今回まででE10 RON95は1リットル4,400ドン超(19%超)上がったのに対し、ディーゼルは2,500ドン近く(約9%)にとどまる。8月27日のE10が22,600ドンだったことから筆算すると4,480ドン・19.8%で数字が合う。今回の発表が決めるのは4品目の上限までだ。ディーゼルが9%規模なら、輸送料金への圧力は見出しの5.67%から受ける印象より穏やかだ。中国からの鉄道貨物のように輸送手段を替えた区間では、影響の出方もまた変わる。
次の定例改定はいつか、何を見ておくか
切り替えは毎週木曜の15時、9月は4回続けて上がった
トゥオイチェー紙は、9月に入って4回続けて値上げの改定があったと書いている。いずれも木曜15時の切り替えだ。この曜日サイクルからいくと次は10月1日15時にあたるが、発表文に次回日付の明示はなく、ここは筆者の推定である。なお同紙は減税措置が間もなく失効するとも書き添えている。値上げが続いた1か月の小売の取り分(chiết khấu)は1リットル10〜30ドンに張り付いていたと、ホーチミンの小売事業者が同紙に話す。
10月までに決めておきたい2点
借りる車の指定油種を先に確認すると見積もりがぶれない。ユーロ5指定なら28,080ドン以上、給油地が遠隔地ならさらに上、という順で見る。Grabで動く日は、料金表の上げ幅より朝夕の配車の付きにくさを見込んで出発を早めるほうが実利がある。次の木曜15時までに、この2点だけ決めておけば足りる。


