2026年、ロンドン南部ペッカム地区のRye Laneに構えるベトナム料理レストラン「Lai Rai」が、英国のベトナム料理店として初めてミシュランBib Gourmand(ビブグルマン)を獲得した。共同創業者のBlair NguyenとIvy Voが率いるこの小さな食堂は、ベトナムの「bia hơi(ビアホイ)」文化を再解釈した空間で、£4〜£24(約800〜4,800円)の小皿料理を提供している。
ニュースの詳細
ミシュランBib Gourmandは、質の高い料理を手頃な価格で提供するレストランに与えられる評価だ。星付きレストランとは異なり、「コストパフォーマンスに優れた食事体験」を基準としている。
ミシュランガイドはLai Raiについて、スパイスの使い方と素材本来の味を引き出す調理を高く評価。2026年版ロンドンのBib Gourmandリストに新規掲載された13店のうちの1つとして選出された。英国でベトナム料理店がこの評価を受けるのは、ガイドの歴史上初めてのことになる。
ニューヨークのベトナム料理店「Ngon」がBib Gourmandを連続受賞したのに続き、欧米圏でベトナム料理の評価が着実に上がっていることを示す動きだ。
背景
Vinaxoaコレクティブとペッカムの土壌
Lai Raiの母体は、Blair NguyenとIvy Voが立ち上げたフード&レイヴ・コレクティブ「Vinaxoa」だ。チームの多くは、ペッカムで営業していたベトナム料理店「Bánh Bánh」の出身。ペッカムはもともとアフリカ系・カリブ系コミュニティが多い地域だったが、ここ数年で多国籍のフードシーンが急速に発展している。
「異世界」をまとう店内空間
店名の「Lai Rai」はベトナム語で「ちょっと飲みに行こう」を意味する。内装デザインはJoseph LosperとTomio Shota(House of Baby)が手がけ、日本のサブカルチャーから借用した「異世界(Isekai)」のコンセプトを空間に落とし込んだ。ルビーレッドとミルキーイエローのLEDストリップ、反射するミラー面、ベトナムの大衆食堂を思わせるプラスチック製の赤いハイチェアが並ぶ。通りから見える赤く光る丸窓が、この店の入口を示している。
アーティストのAP Nguyenがオペレーション責任者を務め、料理だけでなくビジュアル面でも「ベトナムのストリートカルチャーを、ロンドンの文脈で再構築する」という姿勢が一貫している。
メニュー・価格
Lai Raiのメニューは小皿スタイルで、2人でシェアすると約£120(約24,000円)が目安になる。昼はバインミーとベトナムコーヒー、夜は小皿料理とカクテルで構成が変わる。
フード
| 料理名 | 内容 | 価格(GBP) | 価格(円換算) |
|---|---|---|---|
| Choạ cổm(エビロリポップ) | 看板メニュー。揚げたエビをスティック仕立てに | £4/本 | 約800円 |
| Thịt kho tàu(豚バラ煮込み) | ベトナム家庭料理の定番。甘辛いカラメル風味 | £9 | 約1,800円 |
| Bò lá lốt xốt cà phê(牛肉のコーヒーBBQソース) | ロットの葉で巻いた牛肉にベトナムコーヒーのBBQソースを合わせた一品 | £16 | 約3,200円 |
| Xôi vò chiên(揚げココナッツもち米) | 緑豆とココナッツのもち米を揚げたスナック。3個入り | £4 | 約800円 |
| Vẹm cốt dừa(ムール貝のココナッツブロス) | ココナッツミルクベースのスープ仕立て | £18 | 約3,600円 |
カクテル・デザート
| 品名 | 内容 | 価格(GBP) | 価格(円換算) |
|---|---|---|---|
| Gá nhảy | 六(Roku)ジン、ライチ、ベルモット | £13 | 約2,600円 |
| Xoài dá | テキーラ、マンゴー、チリ | £12 | 約2,400円 |
| Cà phê martini | ベトナムコーヒーのエスプレッソマティーニ | £12 | 約2,400円 |
| フィッシュソース・バニラキャラメルアイス | Clingy Wrap製。魚醤×バニラの意外な組み合わせ | £6.50 | 約1,300円 |
現地の反応
「ペッカムにはベトナム料理店がいくつかあるが、Lai Raiだけが『ここでしか食べられない』と思わせる。エビロリポップは3本頼んでも足りない」
──ロンドン在住のフードライター
「ベトナム系の両親を持つ自分にとって、bia hơiの雰囲気をロンドンで体験できること自体が特別だった。Bib Gourmandは遅すぎたぐらい」
──ペッカム在住のベトナム系英国人
「内装の赤い光とミラーの空間がSNS映えするのは間違いない。でもそれ以上に、コーヒーBBQソースの牛肉が記憶に残る。値段も良心的」
──Instagramでロンドンの食を発信するレビュアー
SNS上では「ペッカムの隠れ家」「ロンドンで一番面白いベトナム料理」といった投稿が目立ち、Bib Gourmand発表後は予約の取りにくさを嘆く声も増えている。
日本人旅行者への影響
アクセスと予算
Lai RaiがあるRye Laneは、ロンドン中心部からOverground線で約15分のPeckham Rye駅が最寄り。Victoria線のBrixton駅からバスでもアクセスできる。中心部のレストランに比べて価格が抑えられており、2人で小皿5〜6品+カクテル2杯で約£120(約24,000円)が目安だ。
他のベトナム料理店との比較
海外で評価されるベトナム料理店が増えている。バンクーバーのLunch Ladyは「世界ベストレストラン」9位に選出され、NYの「Ngon」もBib Gourmandを連続受賞している。Lai Raiはこれらとは異なり、高級路線ではなくストリートフード的なアプローチで評価を得た点に特徴がある。日本からロンドンを訪れる際、ミシュラン星付きレストランだけでなく、こうした「手頃で質の高い一軒」を選択肢に入れる価値は十分ある。
業界への波及
ベトナム料理の国際評価の転換点
フォーやバインミーは世界中で定着したが、ミシュランガイドにおけるベトナム料理の評価は長らく限定的だった。2020年代に入り、NYやバンクーバーで受賞が相次ぎ、英国でもLai Raiが初のBib Gourmandを獲得したことで、ベトナム料理が「安くてうまいストリートフード」から「評価される料理ジャンル」へ移行しつつある。
ファッション・カルチャーとの接続
ベトナム発のブランドが国際舞台で注目される動きは、食の世界だけに限らない。IVY modaがニューヨークファッションウィークに初参加したことにも表れているように、ベトナムのクリエイティブ産業全体が海外での存在感を高めている。Lai Raiの「異世界」コンセプトも、料理とデザイン・音楽を融合させるベトナム系ディアスポラの文化的発信力を反映したものだ。
実用情報
| 項目 | 詳細 |
|---|---|
| 店名 | Lai Rai |
| 住所 | 181 Rye Lane, Peckham, London SE15 4TP |
| 最寄り駅 | Peckham Rye駅(Overground線)徒歩約3分 |
| 中心部からのアクセス | London Bridge駅からOverground線で約12分 |
| 営業形態 | 昼:バインミー&ベトナムコーヒー/夜:小皿料理&カクテル |
| 価格帯 | 小皿£4〜£24(約800〜4,800円)、2名で約£120(約24,000円) |
| 予約 | Bib Gourmand獲得後は混雑が予想される。事前予約を推奨 |
| 支払い | カード決済対応 |
まとめ
Lai Raiは、ベトナムのbia hơi文化と日本のサブカルチャー概念「異世界」を掛け合わせた独自の空間で、英国初のベトナム料理Bib Gourmandを勝ち取った。ペッカムという多文化地区の土壌、Vinaxoaコレクティブの食とカルチャーを融合させるアプローチが、ミシュランの目に留まった形だ。
ロンドン旅行を計画中なら、平日の夜に訪れるのがおすすめだ。週末は混み合うため、エビロリポップやコーヒーBBQソースの牛肉をゆっくり楽しむなら火〜木曜が狙い目になる。Peckham Rye駅からRye Laneを南へ歩けば、赤く光る丸窓がすぐに見つかるはずだ。
