ダナンといえば、花火大会やビーチ、賑やかな夜市を思い浮かべる人が多い。その同じ街が、2026年7月25日から真逆の商品を売り始めた。標高700メートルの山頂で、1回あたりわずか6名だけを迎える茶会だ。人を集めて盛り上げるのではなく、人を絞って静けさを届ける——ダナンが単価重視へ舵を切ったことが、この小さなツアーに表れている。
標高700mのバンコー山頂で、1日2回・時間外に6名だけを迎える
ベトナムニュースが2026年7月25日に報じたところによると、この茶ツアーはダナンのソンチャ半島にあるバンコー山(Bàn Cờ)の頂上で行われる。標高700メートルで、地元では「ダナンの屋根」と呼ばれる場所だ。1回のセッションで受け入れるのは6名まで。開催は1日2回、通常の入山時間の外に設定され、午前は日の出、夕方は日没に合わせて茶を楽しむ。運営はソンチャ半島とダナンの観光ビーチを管理する委員会が市当局と組んで手がけ、開始は「Enjoy Đà Nẵng Festival 2026」の期間に合わせられた。担当者は、日の出と日没という一日で最も美しい瞬間を静かな自然のなかで味わってもらうツアーだと説明している。
着想は2024年3月、ビル・ゲイツが山頂で楽しんだ午後の茶
このツアーが生まれたきっかけは、2024年3月にビル・ゲイツ氏がこの山頂を訪れ、午後のお茶を楽しんだことにある。世界有数の富豪が、賑やかなリゾートではなく標高700メートルの静かな頂上で茶を選んだ——その事実が、地元にこの場所の価値を再認識させた。眺望や施設そのものは以前から存在していた。変わったのは、それを「1回6名・時間外・作法つき」というかたちで切り出し、希少性を付け足した設計だ。同じ山頂でも大型バスで団体を運び込めば単なる展望スポットにしかならないが、人数を絞れば風景は独占できる体験に変わる。「ビル・ゲイツが訪れた場所」という物語も効いている。有名人の来訪は一過性で終わりがちだが、ダナンはそれを6名という枠で追体験できる恒常的な商品へ翻訳した。
花火や光る凧の集客型から、単価と満足度の重視へ
ダナンはこれまで、集客の分かりやすさで勝負してきた街だ。国際花火大会で世界中の観客を呼び、夜のビーチには500の光る凧が舞うような大がかりな仕掛けで賑わいをつくってきた。だが賑わい型の観光は混雑と価格競争を宿命的に抱え、誰でも来られる場所はいずれ「安くないと選ばれない場所」になりやすい。今回の茶ツアーはその反対側に賭ける試みで、1回6名という上限は収益の最大化ではなく単価と満足度を狙う。同じダナンでも、早朝に漁師と網を引き、浜辺でイカ入りの麺を食べるような素朴で安価な体験と、山頂の茶会は価格帯も客層もまるで違う。ひとつの都市が庶民的な体験と富裕層向けの静けさを同時に品揃えする動きだ。
タイグエンの茶師が、産地の作法ごと山頂に持ち込む
茶をふるまうのは、タイグエン省のスオンマイ茶(Sương Mai Tea)の茶師たちだ。急須の準備から湯の注ぎ方、供し方、すすり方まで、伝統的な作法をひと通り実演しながらベトナムの茶文化を語る。主役がコーヒーではなく茶だという点も、この体験の芯にある。ベトナムはコーヒーのイメージが先行するが、タイグエン省は国内有数の茶の産地で緑茶文化の土台がある。ハノイには中国有数の茶葉チェーンが初上陸し若者向けのカジュアルな茶飲料が広がる一方、ダナンの山頂では手仕事の作法を伴う伝統茶が高付加価値商品として立ち上がる。茶葉を土産に売るのではなく「誰が、どう淹れるか」まで見せることで、離れた産地の職人と観光地が一つの体験に束ねられている。
日の出か日没に予定を丸ごとあて、羽織りと歩きやすい靴を用意する
このツアーを狙うなら、1回6名という枠の小ささをまず意識したい。日の出・日没に合わせた1日2回・時間外開催は、通常の観光時間で山を訪れる旅程とはかみ合わない。早朝や夕方の時間を丸ごとこの体験に充てる前提で組む必要がある。天候で日の出・日没の見え方が大きく変わるため、晴天日を選べる余裕のある日程が望ましい。山頂は日中でも風が強く気温が下がりやすいので、羽織るものを一枚持参し、足元は歩きやすい靴に。ダナンへのアクセスは改善が続き、日本からはベトナム航空がダナンへ週11便を飛ばすなど直行の選択肢が広がっている。料金や予約方法は開始直後で流動的なため、訪問前にソンチャ半島の管理委員会やダナン観光の公式案内で最新情報を確認するのが確実だ。
