Google幹部を辞め、シンガポールで肉を焼く──越僑女性のバインミー

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「机の上の仕事では、本当の労働の価値が分からなかった」。そう語るのは、Googleアジア太平洋地域の広報ディレクターを務めたハー・ラム・トゥー・クイン氏だ。10年勤めたテック大手を離れ、シンガポールで越僑(海外在住ベトナム人)としてバインミーのブランドを立ち上げた。1年で常連の再来店率は85%、AmazonやMetaのオフィスにも配達が入る。「ベトナム屋台料理=安い」という思い込みを覆す、キャリア転身と食の物語だ。記事の公開日は2026年6月28日。

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安定を捨てて、自ら肉を焼く

クイン氏はGoogleで約10年のキャリアを積んだのち、シンガポールでベトナム式バインミーの店を共同創業した。開業から約1年。繁忙期には1日15〜16時間も働き、自ら肉を焼く日々だという。月の売上が、かつての月給を下回る月もある。それでも彼女は「成功は肩書きや口座残高と必ずしも結びつかない」と言い切る。

もう一つの印象的な言葉がある。「ベトナム料理が美味しくて安いのは、ベトナムの労働の価値が安く据え置かれているからだ」。自ら立って料理して初めて、その「安さ」の裏にある労働の重みを理解したという。

高級路線で勝負する理由

クイン氏の店の客層は、シンガポール在住の外国人駐在員や観光客が中心だ。立地・客層・価格帯のいずれも、いわゆる「安い屋台フード」とは一線を画す。AmazonやMetaといったテック大手のオフィスへの配達が入るのも、職場での上質な食事需要をつかんでいるからだ。

ItemDetails
創業者ハー・ラム・トゥー・クイン氏(元GoogleアジアPRディレクター)
業態シンガポールのベトナム式バインミー店
開業からの期間約1年
常連再来店率85%
配達先Amazon・Meta等のオフィス
働き方繁忙期は1日15〜16時間

品質へのこだわりも徹底している。肉は手焼き、ハーブは伝統に忠実、バゲットは温度と食感を管理する。コストが下がるからといってベトナムの食材を安い代替品に置き換えることはしない。シンガポールの飲食業は規制が厳しく、消費者の目も肥え、廃業率も高い。そのなかで再来店率報道される再来店率の高さは、品質本位の路線が支持されていることをうかがわせる。

越僑が運ぶ「故郷の味」という文脈

海外に渡ったベトナム人が、現地で本物の故郷の味を再現する動きは各地で見られる。ギリシャの庭でナンプラーを2年かけて発酵させた越僑夫婦の物語(Related articles)と同じく、クイン氏の挑戦も「移住先で母国の食文化を高い完成度で立ち上げる」系譜にある。

屋台料理がミシュランに評価される時代でもある(Related articles)。ベトナム料理は「安さ」から「価値」へと評価軸が動きつつあり、クイン氏の高級バインミーはその最前線に立つ。

日本の読者・旅行者への発見

日本ではバインミーといえば手頃なテイクアウトの印象が強い。だがクイン氏の店は、同じバインミーでも「誰が・どんな哲学で・どの食材で作るか」によって、まったく別の価値を持ち得ることを示す。シンガポールを訪れる際、クラーク・キー周辺で「キャリアを捨てて焼く一本」を味わうのは、食を超えた体験になる。コンビニのバインミーが日本でも面白がられている今(Related articles)、その対極にある作り手の物語を知っておく価値は大きい。

Summary

Googleの広報幹部から、自ら肉を焼くバインミー店主へ。クイン氏の転身は、肩書きではなく労働そのものに価値を見いだす生き方の選択だ。再来店率85%という結果は、品質本位と物語性が、混雑するシンガポールの飲食市場でも通用することを証明している。次にシンガポールやベトナム料理に触れるとき、「この一本の裏にある選択」を思い出したい。

シンガポールの食シーンという舞台

クイン氏が挑むシンガポールは、ホーカーセンターの安価な一皿からファインダイニングまで、価格帯と品質の幅が極端に広い市場だ。家賃と人件費は高く、規制も厳しく、消費者の舌も肥えている。この環境で「高級バインミー」という新しいカテゴリーを成立させること自体が、相当に高いハードルである。再来店率85%は、その壁を越えつつあることを示す数字だ。

彼女の物語が刺さるのは、単なる成功譚ではないからだ。月の売上がかつての月給を下回る月もあると率直に明かし、それでも「肩書きや残高ではない価値」を選んだと語る。働き方の問い直しが世界的なテーマになるなか、テック大手の幹部が自ら厨房に立つという選択は、日本の読者にとっても他人事ではない。次にバインミーを口にするとき、「誰がどんな覚悟で作ったのか」という視点が一つ増えるはずだ。

Frequently asked questions

このバインミー店はどこにありますか?

シンガポール中心部・クラーク・キー周辺で営業しています。在住外国人や観光客が主な客層です。

普通のバインミーと何が違いますか?

肉は手焼き、ハーブは伝統に忠実、バゲットは温度と食感を管理し、安い代替食材を使わない方針です。価格より作り手の哲学で差別化しています。

人気はどのくらいですか?

開業から約1年で常連の再来店率は85%。AmazonやMetaのオフィスにも配達が入っています。

Sources

CafeBiz: Googleディレクターからシンガポールでバインミーを焼く人へ

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Author of this article

In my third year living in Ho Chi Minh City, Vietnam. I launched this specialist Vietnam travel information site hoping to share local knowledge you simply can’t get by visiting as a tourist — the kind of thing you only understand by being here.

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