世界一のコーヒー輸出国として知られるベトナムで、ここ数年、若者たちが手に取る一杯が静かに変わってきている。緑色の粉を茶せんで点てる抹茶だ。ホーチミンやハノイ、ダナンには抹茶を主役にしたカフェが次々と生まれ、Landmark 81に店を構えるNagocha matchaもその流れの中で名前が知られるようになった。コーヒーの国でなぜ今、抹茶なのか。そして数ある抹茶カフェの中で、Nagochaは何を選んでいる店なのか。図鑑ページでは触れきれなかった背景から読み解いてみたい。
コーヒーの国で抹茶が広がった理由
抹茶の人気はベトナムだけの現象ではない。日本の緑茶輸出額は2024年に過去最高水準へ伸び、抹茶を含む市場は世界規模で拡大している。背景にあるのはSNSの広がりと、円安を追い風にした訪日旅行の増加だ。日本を訪れた旅行者が抹茶スイーツや茶道体験を持ち帰り、帰国後も自国で同じ味を探す。その連鎖が各国の需要を押し上げてきた。
ベトナムでこの流れが強く出たのは、若い世代のカフェ文化と相性が良かったからだろう。もともとベトナムには路上のカフェから高層ビルのチェーンまで、外で飲み物を楽しむ習慣が根づいている。そこに写真映えする鮮やかな緑色と、点てる所作の珍しさが加わった。抹茶ラテはもちろん、ベトナムらしくココナッツジュースと合わせた飲み方がZ世代の間で話題になり、SNS経由で一気に広がっていった。EC上でも抹茶関連商品の購入が伸び、20代から30代がオンラインで日常的に買う対象になりつつある。
コーヒーと抹茶は対立するものではなく、選択肢が一つ増えたと捉えるほうが実態に近い。朝はカフェスダ、午後は抹茶ラテ、というように時間帯や気分で飲み分ける。ベトナムの若者にとって抹茶は、舶来の珍しい飲み物から、生活に溶け込む選択肢へと変わってきている。
「日本式」を選んだNagochaの立ち位置
抹茶カフェが増えると、その中身は店ごとに分かれていく。シロップやパウダーで手軽に提供する店もあれば、茶葉の産地や点て方にこだわる店もある。Nagochaは後者に軸足を置いている。客が抹茶のブランドや産地、濃さを選び、店側がその場で一杯ずつ点てるという流れを取っているのが特徴だ。メニューを決めて出すのではなく、飲み手が自分の好みを言葉にしながら選ぶ。この体験設計そのものが、日本の茶店の作法を意識したものになっている。
「目の前で点てる」という一点は、抹茶という飲み物の性格をそのまま映している。抹茶は茶葉を粉にして湯と混ぜるため、点ててから時間が経つと風味が落ちやすい。作り置きが難しいぶん、注文を受けてから点てる店は、抹茶本来の状態に近い一杯を出せる。Nagochaがこの手間を省かないのは、抹茶を「ドリンクの一種」ではなく「点てて味わうもの」として扱っている姿勢の表れと言える。
店内に畳席を設け、和の設えで空間を作っているのも同じ文脈にある。ベトナムの若者にとって日本式の茶店は、味だけでなく雰囲気ごと体験する対象だ。点てる所作を眺め、和の空間で過ごす時間が、一杯の価値を形づくっている。
日本産の茶葉が持つもの
Nagochaが宇治や鹿児島など日本の産地の茶葉を扱う点は、立ち位置を理解するうえで大きい。抹茶の原料は「碾茶(てんちゃ)」と呼ばれる、覆いをかけて育てた茶葉だ。日光を遮って栽培することで葉がやわらかくなり、甘みやうまみが乗る。これを乾燥させ、石臼でゆっくりと挽くことで、きめ細かい粉になる。手間のかかる工程を経ているぶん、産地や等級によって味わいの幅が大きい。
日本国内でも産地によって個性が分かれる。代表的な二つを並べると、輪郭がつかみやすい。
| Growing regions | 背景 | 味わいの傾向 |
|---|---|---|
| 宇治(京都) | 古くから碾茶を生産し、栽培・加工の技術を積み上げてきた産地。手摘みの上級品も多い | 上品な甘みと香りが出やすい |
| 鹿児島 | 温暖な気候を生かした生産で出荷量が伸び、抹茶原料の産地としても知られるようになった | すっきりとした飲み口が得やすい |
同じ日本産でも、宇治と鹿児島では育つ環境も歴史も違う。だからこそ、産地を選べることに意味が出てくる。Nagochaのように複数の産地を扱い、客が選んで点ててもらえる店は、こうした味の違いを飲み比べる場にもなる。
ベトナム産抹茶が増える中での「日本式」の意味
抹茶の需要が世界で伸びる一方、日本では原料の供給が追いついていない。猛暑による生産への影響もあり、増産は進むものの需要の伸びには届かず、価格は上がっている。この隙間を埋めるように、ベトナムやタイ、ケニアなどでも抹茶用の茶葉生産が始まった。ベトナム国内ではラムドン省やバオロクといった茶産地で設備投資や技術導入が進み、手頃な価格と安定供給を武器にした現地ブランドが台頭しつつある。
こうした動きは抹茶市場の裾野を広げるうえで意味がある。価格を抑えた抹茶風ドリンクが増えれば、初めての人が気軽に試せる入り口になる。日常的にカフェで楽しむ層にとって、選択肢が増えるのは歓迎すべきことだろう。
そのうえで、日本産の茶葉を直接仕入れて一杯ずつ点てる店の役割も別にある。産地ごとの個性、碾茶や石臼挽きといった手間のかかる作り方、点てたての状態で味わう体験。これらは価格だけでは置き換えにくい部分だ。ベトナム産が広く出回るようになるほど、「日本式の本格派」という立ち位置はかえって輪郭がはっきりしてくる。Nagochaは、抹茶が珍しいものだった時期から日常に近づいた今だからこそ、産地と点て方にこだわる意味を持つ店だと言える。
どう楽しむか、ひとつの目安
初めて本格的な抹茶を試すなら、まずは産地や濃さを選べる店で、店の人に好みを伝えてみるのがいい。甘みのある飲み口が好きか、すっきりした後味が好きか。それだけでも提案される一杯が変わってくる。点てたての抹茶は香りが立っているうちに飲むと、味の違いがわかりやすい。
抹茶ラテやアレンジ系の飲み物に慣れている人ほど、一度は茶葉だけで点てた抹茶を口にしてみると、産地による違いに気づきやすい。慣れてきたら、同じ店で別の産地を頼んで飲み比べてみる。日本式の抹茶カフェは、そうやって少しずつ自分の好みを見つけていく場でもある。
コーヒーの国で抹茶が広がる流れは、まだ続いている。ベトナム産が増え、価格帯も体験の幅も多様になる中で、日本産の茶葉を点てる店は、抹茶という飲み物の奥行きを伝える役割を担っている。Nagochaを訪れるなら、メニューを決め打ちするのではなく、産地を選んで点ててもらう時間そのものを楽しんでほしい。
🗺️ Nagocha Matchaの基本情報・看板メニュー・地図・口コミは店舗ガイド(カード)でまとめています。
🗺️ If you also want to compare it with other cafés,Vietnam's 30 Popular Cafés: A Thorough Comparison Guidelets you browse from a single list.
