ホーチミン市のタンディン地区(Tân Định)が、英誌タイムアウトの「世界で最もクールな街ランキング2026」で12位に選ばれた。ピンク色の教会で写真好きに知られるこの一角が、世界40地区の中で上位に食い込んだのだ。発表は2026年9月16日。観光の中心にほど近い一角にありながら、低層の街並みと路地の食が残る点にタイムアウトが目を留めた。有名スポットを一巡した後、次にどこを歩くかを探している旅行者にとって、確かな行き先が一つ増えた。
タイムアウトが選んだ「12位」の中身
タイムアウトのランキングは、食、飲み、ナイトライフ、文化、個人経営の店、地域のまとまりといった観点で世界の街の一角を選ぶ企画だ。2026年版でタンディンは40地区中12位に入り、スペイン・バレンシアのルサファ(Russafa)のすぐ後ろに並んだ。誌面は「高層ビルやルーフトップバーが増える中でも、ホーチミン市中心部で穏やかさを保つ地区」と紹介している。ピンクの教会を撮ってすぐ中心部へ戻る旅行者が多いが、その裏側にこそ落ち着いた街の本体が広がっている、という視点だ。
ピンクの教会と市場、路地の食
タンディンの目印は、淡いピンクに塗られたタンディン教会。観光客に人気の撮影スポットで、SNSでもよく見かける一枚になっている。すぐ近くのタンディン市場は絹地の店が集まることで知られ、生地選びや仕立ての街としての顔も持つ。教会や市場の周りには、家庭的な食堂や個人経営のカフェが点在し、昼と夜で違う表情を見せる。派手な観光施設ではなく、日常の暮らしが濃く残る点が、この地区らしさの核になっている。
2026年版・世界のクールな街 上位
| Rank | District | City |
|---|---|---|
| 1st | チョンノ3街(Jongno 3-ga) | 韓国・ソウル |
| No. 2 | ロセアン(L’Ocean) | モロッコ・ラバト |
| 3rd | ネオス・コスモス(Neos Kosmos) | ギリシャ・アテネ |
| 4th | チャイナタウン | 米・ロサンゼルス |
| 5th | ゴヴァンヒル(Govanhill) | 英・グラスゴー |
| 12位 | タンディン(Tân Định) | ベトナム・ホーチミン市 |
誌面がすすめる歩き方
タイムアウトは、タンディンで立ち寄りたい店をいくつか具体的に挙げている。米粉の蒸し春巻きバインクオンの「Bánh Cuốn Tây Hồ 127」、南部のお好み焼きバインセオの「Bánh Xèo 46A」、路地裏の老舗喫茶「Đỗ Phủ café」、レコード店の「Hãng Đĩa Thời Đại」、料理人ホアン・トゥン氏の店「Ö by Hoàng Tùng」、バーの「PK Maltroom」といった名前が並ぶ。観光名所を数珠つなぎにするのではなく、食・喫茶・音楽・酒を路地単位で味わう構成が、この地区らしい回り方だ。
教会の裏に広がる街
ベトナムのメディアは、市の再編で街区の呼び名が変わるなかでのランクインを前向きに報じている。タイムアウト自身も、多くの観光客がピンクの教会を撮るとすぐ中心部へ戻ってしまう、と紹介文で指摘している。だが教会の裏手に一歩入れば、観光地の喧騒とは違う、生活の匂いのする路地が続く。写真を一枚撮って満足するか、その奥まで歩くかで、この地区の見え方は大きく変わる。
日本人が歩くなら
1区の主要スポットを回り終えた人にこそ、タンディンは向いている。教会と市場を起点に、バインクオンやバインセオで軽く腹ごしらえをし、路地の喫茶で一服する半日コースが組みやすい。市場では絹地を眺め、気に入った生地を土産にする楽しみもある。夜は個人経営のバーが灯り、昼とは違う静かな賑わいが生まれる。中心部からタクシーやバイタクですぐの距離なので、午前は中心部の観光、午後はタンディン散策という組み立てが現実的だ。路地裏の喫茶文化に触れたい人は、路地に初出店したサイゴンの路地裏スターバックスの記事もあわせて読むと、街歩きの視点が広がる。
観光・土産市場への波及
「クールな街」への選出は、その地区の個人店や地場の食に光を当てる効果が大きい。大型施設ではなく、路地の喫茶や市場の絹地といった小さな担い手が評価の対象になるからだ。旅行者の関心が中心部から一歩外へ広がれば、地元の食堂や工房にも来客が回り、街全体で稼ぐ形につながりうる。日本の旅行者や事業者にとっては、絹地やベトナム喫茶の道具、路地の食にまつわる商品など、「タンディンで見つけた」という物語を添えやすくなる。サイゴンの酒場文化を知りたい人は、ビールに氷を入れて飲むサイゴン流の飲み方もあわせて押さえておきたい。
次の一歩
次にホーチミン市を訪れるなら、旅程の半日をタンディン散策に充ててみてほしい。ピンクの教会で一枚撮ったら、そのまま裏手の路地へ入り、食・喫茶・市場を自分の足で拾っていくのがこの地区の正しい歩き方だ。世界12位という評価は入り口にすぎず、路地の一軒一軒を巡ってこそ、この街のクールさが腑に落ちる。夜まで居たいなら、路地の食堂で一杯やるのもいい。日本の居酒屋がサイゴンの路地に根づいた一軒もあるように、路地の店を一軒ずつ訪ねてこそ、街の奥行きは見えてくる。
Sources
VnExpress「TP HCM có khu phố trong top hấp dẫn nhất thế giới」
Time Out「The 40 coolest neighbourhoods in the world in 2026」


