ハノイ中心部、ホアンキエム区のプフ・ドアン通りにある鶏フォーの店が、中国人観光客の投稿で連日にぎわっている。店名はフォーガー・グエット(Phở gà Nguyệt)。近くの大きな病院にちなんで「病院フォー」とも呼ばれる小さな店だ。中国のSNS「RedNote(小紅書)」で訪問レポートが広がり、旅行の途中で毎日通う人や、出国前にもう一杯食べに戻る人まで現れている。日本から旧市街を歩く人にとっても、行列の意味を知っておくと一杯の選び方が変わる。
朝6時から深夜まで開く小さな鶏フォー店に何が起きたか
この店を有名にしたのは、中国からの旅行者による口コミだった。ある女性客はハノイ滞在中に「毎日通った」と投稿し、別の男性客は3回訪れたうえで、ベトナムを離れる前にもう一度立ち寄ったという。こうした体験が写真と一緒にRedNoteへ次々に上がり、中国語圏の旅行者の間で「ハノイで外せない一杯」として共有されていった。ガイドブックに載る有名店ではなく、地元の食堂が海外のSNSきっかけで一気に知られていく流れは、いまのアジアの旅行者行動をよく映している。
店を切り盛りするのはレー・ティ・ミン・グエットさん。人気の理由をスープに置いている。鶏のうまみを20時間以上かけて引き出し、さらに豚骨を16時間加えて深みを重ねる。仕上がりは鶏の脂による黄色みと、調味料に頼らない自然な甘さが特徴だという。この一杯はミシュランの廉価版評価「ビブグルマン」に4年連続で選ばれている。ハノイの鶏フォーは牛のフォー(フォーボー)に比べて澄んだスープが身上で、鶏の脂と身のうまみをどこまで引き出せるかが店の力量を分ける。20時間という煮込み時間は、その勝負どころに手間をかけている証と読める。
中国人客が驚いた価格、日本人の感覚とどう違うか
投稿で繰り返し話題になっているのが値段だ。ある中国人客は、この鶏フォーを自国通貨に換算して「13元ほど」と紹介し、中国では同じような一杯が50〜90元することと比べて破格だと書いている。日本円と現地通貨で並べると、その落差が分かりやすい。以下は客が語った金額をもとにした目安で、為替は1円=約170ドン(2026年9月時点)、1元=約3,500ドンで換算した参考値だ。
| Comparison | 客が語った金額 | おおよその換算 |
|---|---|---|
| ハノイのこの店 | 約13元 | 約4万5000ドン/約270円 |
| 中国での同種の一杯 | 50〜90元 | 約17万〜31万ドン/約1000〜1850円 |
換算はあくまで客の投稿を起点にした目安で、日により為替も店頭価格も動く。ただ、現地の物価水準に慣れた在住者でなくても、旧市街の名店の鶏フォーが数百円で食べられるという感覚はつかめる。この価格差は、中国からの旅行者がハノイの食を「安くて質が高い」と受け止めてリピートする大きな理由になっている。ハノイのフォー行脚の熱気は、ハノイのフォー、国慶節の朝に老舗とミシュラン店へ列が伸びたでも見たとおりで、値段と評価のつり合いが観光客を動かしている。
並ぶなら朝か、それとも夜か
営業時間は朝6時から午後1時まで、そして夕方5時から翌午前1時までの二部制だ。最も混むのは夕方5時から深夜にかけての時間帯とされる。写真をゆっくり撮りながら味わいたいなら、開店直後の朝が狙い目になる。夜のにぎわいを含めて雰囲気ごと楽しみたい人は、混雑を承知で夕方以降に向かう選択もある。
場所はホアンキエム区のプフ・ドアン通り。ホアンキエム湖から歩ける距離で、旧市街の散策と組み合わせやすい。近くの病院が目印になるため、地図アプリで「Phở gà Nguyệt」を検索するか、病院フォーの通称で現地の人に尋ねると見つけやすい。夜遅くまで開いているので、到着日の夕食や、夜歩きの締めの一杯として使い勝手がいいのも、この店が旅行者に選ばれる理由のひとつだ。
SNS発の人気店に日本人が並ぶ前に知っておきたいこと
中国人客のRedNote投稿で火がついた店だけに、時間帯によっては行列が長い。小さな店なので回転を待つ場面もある。相席や短い待ち時間はハノイの人気店では珍しくないと考えておくと、気持ちよく並べる。注文は鶏フォーが主役だが、鶏のもも肉や砂肝など部位の指定ができる店も多く、好みを一言添えられると満足度が上がる。ミシュランの評価がついた食を旅の軸にするなら、鶏フォーだけでなく、ミシュラン3年連続のうなぎ春雨、娘が米国のネイル店を閉じて継いだのような一皿も候補に入る。麺料理を食べ歩くなら、同じホアンキエム周辺で複数の名店を一日にまとめて回る計画が立てやすい。
中秋の時期にハノイを歩くなら、食のあいだにカフェを挟む回り方もある。5 Hanoi cafés for Mid-Autumn photos, without waiting for the full moonと組み合わせれば、朝は鶏フォー、昼はカフェ、という無理のない一日ができる。人気店を一つだけ目指すのではなく、徒歩圏の店を線でつなぐと、旧市街の朝から夜までを飽きずに歩ける。
外国人客が支えるハノイの町場の食堂
この店の人気は、SNSの口コミが国境を越えて小さな食堂に客を運ぶ時代を映している。中国人旅行者のリピートが、家族経営の鶏フォー店を一躍「名所」に押し上げた。日本からの旅行者にとっては、こうした店を訪ねること自体が、ガイドブックの外にあるハノイに触れる入り口になる。旧市街を歩く予定があるなら、朝の一杯にこの鶏フォーを組み込み、通称と正式名の両方をメモしておくと迷わない。行列を見かけたら、それは味の裏づけだと考えていい。混雑の山を外して朝に訪ねるか、あえて夜の熱気に飛び込むか、その日の旅程に合わせて時間を選べば、この一杯を心地よく味わえる。
Sources:Dan Tri「ハノイの鶏フォー店が中国人客に人気」
