10月10日の朝、カインホア省ドーヴィン坊の丘に立つポー・クロン・ガライ塔に、チャム族の住民と観光客が数千人集まった。バラモン教を信仰するチャム族にとって一年で最大の祭りであるカテー(Katê)が、2026年は10月9日から11日の3日間で行われている。Tuổi Trẻは古塔のふもとが参詣者の足音で賑わい、祭礼の楽が鳴り響いたと伝えている。
ただ「10月10日にポー・クロン・ガライ塔へ行けば見られる」と理解すると、日程も場所も取り違える。儀式は3か所で同時に進み、開幕の引き金を握っているのはチャム族ではない。以下、金額は1万ドン=約61円(2026年10月13日時点)で換算した。
儀式は10月10日朝、ポー・クロン・ガライ塔とポー・ロメ塔、ポー・イヌ・ヌガール寺で同時に始まった
Tiền PhongとVietnamPlusによると、10月10日の午前、カインホア省のチャム・バラモン教聖職者評議会(Hội đồng Chức sắc Chăm Bàlamôn)と習俗委員会(Ban Phong tục)が3か所で一斉に儀式を執り行った。国家特別史跡のポー・クロン・ガライ塔(ドーヴィン坊)、フオックフウ社ハウサン村のポー・ロメ塔、同社フウドゥック村のポー・イヌ・ヌガール寺である。
塔での式次第は、衣装を迎える行列(rước y trang)、塔の扉を開ける儀、神像を水で清める儀、神像に衣装を着せる儀、大祭という順で進む。供物は鶏肉、米飯、酒、ビンロウ、果物。Tuổi Trẻの取材に答えたフオックフウ社の村に住む67歳のダン・ティ・トアさんは、塔での儀式に加われることが喜びだと語り、その価値が保存され観光客にも知られることを望むと述べている。
人数の表現は媒体で揺れた。Tuổi Trẻは「数千人(hàng ngàn)」、Tiền Phongは見出しで「数千人」としながら本文冒頭では「数万人(hàng chục nghìn)」と書いた。公式集計は見当たらない。
女神の衣装はフオックハー社のラグライ族が預かり、10月9日午後に内院へ運ばれた
読み落とされやすいのが祭りの起点だ。VietnamPlusによると、10月9日午後、女神ポー・イヌ・ヌガールの衣装(y trang)がフオックハー社に住むラグライ族(người Raglai)のもとから、フウドゥック村の内院(Đền trong)へ行列で運ばれた。翌10日朝には内院から外院にあたるポー・イヌ・ヌガール寺へ、ハウサン村ではポー・ロメ塔へと衣装が上げられた。
チャム族最大の祭りは、別の民族が保管する神衣を受け取るところから動き出す。塔の扉が開くのは衣装が届いた後で、順序を入れ替えられない。行列を出すのもフウドゥック、タンドゥック、タインドゥックの3村の住民であって、省の観光部門ではない。カインホア省文化遺産保存センターが整えたのは景観、式場の空間、来訪者の受け入れと警備で、儀式そのものは評議会と村の側にある。
チャンパの神像が今どう扱われているかは観光地の外でも時々ニュースになる。クアンガイでは漁師の網に入ったハヌマン像の扱いが問題になり、20億ドンの買い取りを断って博物館に渡した経緯が報じられた。塔の中の像が毎年洗われ着替えさせられている事実は、それが展示物ではないことの裏付けでもある。
会期は10月9日からでも塔の儀式は10日の朝、2025年のカテー祭は10月21日だった
日程を1本の記事から決めると外す。カテーはチャム暦7月1日に始まるため西暦では毎年動く。Tiền Phongは10月10日の朝をチャム暦7月1日とし、この日を開幕と書いた。一方でTuổi Trẻは会期を10月9日から11日までとし、VietnamPlusは9日午後の衣装の行列を一連の儀式の始まりに置いている。塔での正日を指すのか会期の初日を指すのかで、同じ「開幕」が1日ずれる。Tuổi Trẻが前年分として並べた2025年のカテーは10月21日(チャム暦7月1日)で、1年で11〜12日ずれている。
この幅は1年前から航空券と宿を押さえる旅程と相性が悪い。確定日は省の文化遺産保存センターか主宰側の聖職者評議会の告知を待つしかない。ベトナムの祭りは旧暦や民族暦に紐づくものが多く、カンジオでクジラを神として迎える海の祭りも同じ理由で年ごとに日が変わる。
一方、前後には固定日程の催しがある。10月5日から9日までフオックフウ社でバレーボールとサッカーの交流戦、5日から12日まで史跡とフウドゥック村の展示館で写真と実物の展示。11日にはミーギエップ、チュンミー、バウチュックの各村で村の守護神への祭祀が入る。本番2日に合わせられなくても、数日前に入れば見るものはある。
ニントゥアン省の名は消え、塔の住所も検索結果もカインホア省に置き換わった
実務でいちばん引っかかるのはここだ。3か所の祭祀場所はいずれも旧ニントゥアン省にあったが、現在の表記はカインホア省である。ポー・クロン・ガライ塔はカインホア省ドーヴィン坊、ポー・ロメ塔とポー・イヌ・ヌガール寺はフオックフウ社ハウサン村・フウドゥック村という書き方になる。
ところが旅行情報サイトの多くは旧表記のままで、塔の住所を「Đô Vinh, Phan Rang – Tháp Chàm, Ninh Thuận」と案内している。省のサイトや公的な告知を「Ninh Thuận」で検索すると更新の止まったページに当たりやすい。塔を調べるときは省名を外して「Pô Klong Garai」で引くほうが早い。
塔は国道27号沿いの丘の上にあり、旧パンラン市街の中心からの距離は出典によって5kmから9kmまで記述が分かれる。開門時間と入場料は、旅行情報サイトでは7時30分から17時30分、大人20,000ドン(約122円)・子ども10,000ドン(約61円)、丘の上まで電動カート往復25,000ドン(約153円)と案内されている。公式告知で確認できた数字ではなく、祭りの期間は運用が変わる可能性が高い。
陶器づくりを2026年に緊急保護リストから出す計画、予算は2,050億ドン超
2026年のカテーには観光振興とは別の時間軸が重なる。カテー祭そのものは2017年に文化スポーツ観光省が国家無形文化遺産(伝統祭礼の部門)に登録した。一方、同じチャム族の文化であるチャム陶器の技術は、2022年11月29日にモロッコのラバトで開かれたユネスコ無形文化遺産保護条約の第17回政府間委員会で「緊急に保護する必要がある無形文化遺産」に登録された。ベトナムの無形文化遺産としては15件目だが、この一覧は栄誉だけでなく消滅の危険を示す。
カインホア省は2025年12月3日の決定2332/QĐ-UBNDで、2025年から2028年とその後を対象にした保護事業を承認した。Tạp chí Công Thươngによれば予算は2,050億ドン超(約12.5億円)で、2026年に緊急保護の状態から脱し、2027年に製品の品質基準づくりと「Gốm Chăm」の商標登録、2028年から2030年に人類の代表的無形文化遺産一覧への登録を狙う段取りだ。2025年10月には文化スポーツ観光省が、似た遺産を持つ少数民族の集落を観光ルートでつなぐ事業を承認し、その中に「バウチュック〜ミーギエップ」の遺産観光ルートが入った。
粘土はソン・クアオ川沿い、村から約1kmの場所で採られ、ろくろを使わず、職人が土の塊の周りを回りながら手だけで形を作り、焼成は約400〜800℃で行われる。都市化で採土地が削られ若い世代の参入が減れば、工程の一部が欠けるだけで再現できなくなる。
第1回バウチュック陶器祭は10月10〜12日、ニャチャンでは1月に再現版があった
計画が形になったのが、カテーの会期に差し込まれた第1回バウチュック・チャム陶器祭だ。10月10日から12日までニンフオック社で開かれ、11日には同社人民委員会のホールで学術会議も設定された。会場にはバウチュックの陶器、ミーギエップの錦織(thổ cẩm)、OCOP認定商品、伝統料理の売り場が並び、児童の絵画、民謡、陶芸技能の競技が組まれている。祭りの人出をそのまま作り手の販路に接続する設計で、別日程にしなかったのは意図的だ。
会期に合わせられない場合の受け皿も動き出している。1月25日、ニャチャン坊のトラムチュン観光区で30人を超えるチャム族の担い手がカテーを再現した。衣装の行列、塔の扉を開ける儀、神像の沐浴と衣替え、大祭の4つを見せ、少女たちの扇の舞(múa quạt)にパラヌン太鼓、サラナイ笛、ギナン太鼓が入る構成だった。同観光区は2026年に月1件、計12件の祭りを再現する予定だという。
ただし再現は観光商品であって塔の儀式ではない。VietnamPlusは、観光が聖なる空間と習俗を尊重し、チャム族の共同体が主体であることを崩さない必要があると書いている。バーデン山頂で菩提樹の葉を紙幣代わりに使う中秋の市のように、信仰の作法が入場体験として紹介される例も増えている。2026年のカテーは11日で終わるが、陶器づくりが緊急保護リストを出られるかどうかの答えが出るのは年内だ。次に塔を訪ねるときには、バウチュックの窯の数のほうが祭りの人出より先に変わっているかもしれない。
参照元
- Tuổi Trẻ「Khai hội Katê 2026, tháp Chăm rộn ràng người trẩy hội」
- Tiền Phong「Hàng nghìn người về dự Lễ hội Katê của người Chăm」
- VietnamPlus「Khánh Hòa sẵn sàng đón Lễ hội Katê 2026」
- Nhân Dân「UNESCO ghi danh nghệ thuật làm gốm của người Chăm」
- Tạp chí Công Thương「Khánh Hòa: Giữ lửa nghề gốm Chăm」
- Báo Văn Hóa「Khánh Hòa: Tái hiện Lễ hội Katê giữa lòng phố biển」


