ホーチミン市の空の玄関口タンソンニャット国際空港が、地下鉄で市街と直結する。同市が7月27日に公表したメトロ6号線は、全長約23kmのうち19kmを地下に通し、第1〜第3ターミナルすべてを地下駅で結ぶ。年内着工、2030年完成を目指す。渋滞が慢性化する空港周辺で、在住者の通勤も出張者の空港アクセスも変わる計画だ。
23km中19kmが地下、ST02・ST03が全3ターミナルを結ぶ
計画では6号線は全長約23kmで、うち約19kmが地下区間。駅は地下13駅と地上系4駅の計17駅で構成される。核となるのが空港直下のST02・ST03の2駅で、この2駅がタンソンニャット空港の全3ターミナルを地下でつなぐ。到着後にスーツケースを引いて炎天下のタクシー乗り場に並ぶ、という現在の動線が、駅まで屋内で完結する形に変わる。車両は最高時速80〜110kmで、開業時は3両編成、需要増に応じて6両まで増結できる設計とされる。
ST12で1号線と接続、乗り換え一回で市中心部へ
6号線の実利は、空港を既存・計画中の他路線に縫い合わせる点にある。公表資料で示された接続は次のとおりだ。
| 接続先 | 接続駅 | 路線の性格 |
|---|---|---|
| 2号線(ベンタイン〜タムルオン) | バークェオ駅 | 市中心部と北西部を結ぶ基幹線 |
| 4号線(ドンタイン〜ヒエップフオック) | ST03 | 南北を縦断する計画線 |
| 1号線(ベンタイン〜スオイティエン) | ST12 | すでに開業した東部方面の主力線 |
| トゥーティエム〜ロンタイン鉄道 | ST16以遠 | 新空港ロンタインへの連絡鉄道 |
とりわけ1号線との接続が大きい。ベンタイン〜スオイティエンを走る1号線はすでに営業運転中で、6号線がST12でつながれば、市中心部から空港までを乗り換え一回で結べる。
「2号線の国産化」とは別路線——混同しないために
ホーチミンのメトロを巡っては、7月に2号線の技術国産化が話題になった。詳しくはホーチミンの地下鉄、国産化へ—2号線で技術移転の覚書に署名にまとめたが、あれは既存2号線の車両・システムをベトナム側で内製化する取り組みで、今回の6号線新設とは別軸の動きだ。市は複数路線を並行して進めており、「どの路線の、何の話か」を切り分けて追うと全体像がつかみやすい。
タクシー一択だった深夜・雨季の空港移動が変わる
現状、タンソンニャットから市中心部への移動はタクシーかGrabが中心で、朝夕は空港周辺の渋滞に巻き込まれる。ベンタイン方面まで車で30分と読んでいたのに1時間かかった、という経験は在住者なら珍しくない。6号線が全ターミナルを地下で結べば、天候にも渋滞にも左右されにくい定時性の高いルートが生まれる。大きな荷物を抱えた移動や、雨季のスコールの時間帯、深夜・早朝便の利用でも、料金交渉に神経を使わずに済む鉄道という選択肢が増える。ハノイでも複数路線の同時着工が動き出しており、その全体像はハノイが5路線を同時着工、空港アクセスは本当に変わるのかで追った。空港と都心を鉄道で結ぶ整備は、両都市とも「計画」から「着工」の段階へ進んでいる。
完成は2030年、ロンタイン連絡鉄道とも接続する設計
完成は2030年で、それまでの数年は現行の空港アクセスが続く。あわせて、2026年12月開業予定の新空港ロンタインとの使い分けも今後の論点になる。ロンタインの位置づけは巨大空港ロンタイン12/1開業、SGNとどう使い分ける?で整理した。6号線がトゥーティエム〜ロンタイン鉄道とも接続する点は、二つの空港を鉄道で束ねる将来像を示している。空港直下の地下駅は周辺不動産と商業の地図も書き換え、市街地に近く拡張余地の乏しかったタンソンニャット周辺の混雑を和らげる効果も見込まれる。用地取得や資金面で工程が前後する可能性は残るが、全ターミナル直結という骨格は市の交通計画の本気度を映している。ホーチミンを繰り返し訪れる出張者や在住者は、進捗を追いつつ、いまのうちから「どのターミナルを、どう抜けるか」を頭に描いておくと、開業後の移動が一段と軽くなる。
