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ベトナムはブラジルに次ぐ世界第2位のコーヒー生産国で、特にロブスタ種の生産では世界トップクラスを誇ります。
本記事では、ベトナムコーヒーの特徴や種類、人気ブランド、お土産の選び方までを在住者の視点で解説します。

日本で一般的なコーヒーはアラビカ種を使ったすっきりとした風味が主流です。日本の大手カフェチェーンで出されるコーヒーの多くはアラビカ種を使用しています。
一方でベトナムコーヒーはロブスタ種ならではの力強い苦味とチョコレートのような濃厚な香りが特徴です。
最初はその独特な苦味に慣れないということもあるでしょう。
しかしベトナムコーヒーが発展してきた歴史や特徴を知ることで、その味わいがベトナム独自の風土や文化から生まれた魅力であることが理解できます。
ベトナムコーヒーは130年以上にわたり、植民地支配・戦争・経済開放という激動の現代史と歩みをともにしてきました。その歩みを年表で振り返ります。
| 年代 | 主な出来事 |
|---|---|
| 1850年代 | フランス宣教師がアラビカ種をベトナムへ持ち込む |
| 1880年代 | 最初の商業用コーヒー農園を設立。中部高原での本格栽培が始まる |
| 1975年 | 南北統一。コーヒー産業が国営化される |
| 1986年 | ドイモイ政策により市場経済化。生産量が一気に増える |
| 2000年代 | 世界第2位のコーヒー輸出国に躍進。国際的な評価が確立 |
■ 1850年代〜1900年代初頭:植民地支配とコーヒー栽培の始まり
当時ベトナムを支配していたフランスにより、コーヒーがもたらされました。1880年代に中部高原で最初の商業農園が設立され、ロブスタ種が現地の土壌と熱帯気候に見事に適応したことで栽培が急拡大します。
■ 1945〜1975年:戦争によるコーヒー産業の停滞
独立運動からベトナム戦争(〜1975年)にかけての長期的な戦争が、コーヒー農園に壊滅的な打撃を与えました。
1975年の戦争終結に伴い、コーヒー産業が国営化されます。
■ 1986年〜:ドイモイ政策がコーヒー大国への扉を開く
1986年に採択された「ドイモイ政策」で市場経済化が進み、農民は自由に作物を栽培・販売できるようになりました。
生産意欲の高まりとともに栽培面積・生産量は急拡大。2000年にはブラジルに次ぐ世界第2位のコーヒー輸出国に躍進し、現在に至るまでその地位を維持しています。
今日では国内外でスペシャルティコーヒーへの関心も高まり、ベトナムコーヒーの評価は新たな局面を迎えています。

引用:Coffee: World Markets and Trade(2025/12)
米国農務省(USDA)によるとベトナムのコーヒー生産量は、ブラジルに次ぐ世界第2位を誇ります。
世界のコーヒー総生産量の約20%を占め、ロブスタ種に限れば生産量世界トップクラスです。ベトナムとブラジルの2カ国だけで、世界全体の生産量の半分ほどを担っています。
日本においても、ベトナム産コーヒー豆の輸入量は年々増加しており、国別にみるとブラジルに続き第2位となっています。
私たちが日常的に飲んでいるインスタントコーヒーや缶コーヒーには、ベトナム産のロブスタ種が多く使われています。「ベトナムコーヒーを飲んだことがない」と思っている方でも、知らず知らずのうちに口にしているかもしれません。
コーヒー豆には大きく分けてアラビカ種とロブスタ種(カネフォラ種)の2種類があります。
ベトナムは全生産量の約90〜95%をロブスタ種が占める世界最大のロブスタ大国ですが、近年はアラビカ種の栽培も増えており、スペシャルティコーヒーとしての評価も高まっています。
| 項目 | ロブスタ種 | アラビカ種 |
|---|---|---|
| 種類 | ロブスタ種(カネフォラ種) | アラビカ種 |
| 栽培適地(標高) | 低地(300〜800m) | 高地(900m以上) |
| 味の特徴 | 強い苦味・コク・土っぽさ | 芳醇な香り・程よい酸味・コク |
| カフェイン含有量 | 約1.7〜4%(アラビカの約2倍) | 約0.8〜1.4% |
| 病害虫への耐性 | 強い | 比較的弱い(さび病など) |
| 主な用途 | インスタントコーヒー・缶コーヒー・ブレンド用 | ドリップコーヒー・エスプレッソ・スペシャルティ |
| 価格帯 | 比較的安価 | やや高価 |
ベトナムがロブスタ種の栽培に特化してきた背景には、主に気候・標高の2つの理由があります。
気候
ベトナムの中部高原は高温多湿な熱帯性気候で、標高の低いエリアが多く広がっています。アラビカ種は標高1,000m以上の冷涼な高地を好みますが、ロブスタ種は300〜800mの低地でも育ちます。ベトナムの気候・土壌条件はロブスタに最適でした。
生産効率
ロブスタ種は病害虫への耐性が高く、1本の木から収穫できる豆の量も多いため、安定した大量生産が可能です。
アラビカ種に比べて栽培コストが低く抑えられるため、国策としてロブスタの栽培に力を入れた結果、世界最大のロブスタ生産国となったのです。

ベトナムのコーヒー生産地は中部高原地帯が中心で、産地によって栽培品種や味わいに特徴があります。
ダクラク省バンメトートは、年間を通じて温暖で降水量が多く、火山性の肥沃な土壌に恵まれています。この環境がロブスタ種ならではの深いコクと強い苦味を育み、インスタントコーヒーやブレンド用原料として世界中に輸出されています。
TrungNguyen(チュングエン)をはじめとするベトナムを代表するコーヒーブランドも、バンメトートを拠点にしています。
コーヒー農園だけではなく、「チュングエンコーヒービレッジ」や「世界コーヒー博物館」など、コーヒーについて知識を深められる施設もあり、「ベトナムコーヒーの首都」ともよばれます。
ベトナムではロブスタ種がメインで生産されていますが、ラムドン省ダラットは、標高約1,500mに位置するベトナム有数のアラビカ種産地です。年間平均気温が約17〜18℃と涼しく、フランス植民地時代には避暑地として開発されました。
ダラット産のコーヒーの中でも特に有名なのが「La Viet」。ハノイやホーチミンといった大都市でも専門店があります。ロブスタ種独特の苦みが苦手という方はぜひお試しください。
ソンラー省はベトナム北西部に位置する比較的新しいコーヒー産地です。ターイ族やフモン族などの少数民族が伝統農法を守りながらコーヒーを生産しており、アラビカ種の栽培が中心です。
ハノイやホーチミンの本格的なカフェではソンラー地域の豆を使ったコーヒーを味わうことができます。雑味のないすっきりとした味わいはベトナム滞在中にぜひ味わいたいものです。
ベトナム旅行の際には、ぜひ現地のカフェでその場の雰囲気ごとコーヒーを楽しんでください。各都市でおすすめのカフェを紹介します。
首都のハノイでは歴史あるカフェから最近オープンしたおしゃれなカフェまで幅広いラインナップが楽しめます。
ホーチミンは近年スペシャルティコーヒーの新興スポットとして世界的に注目を集めています。
ホーチミンの中心地には、ニューウェーブカフェと呼ばれる高品質なアラビカ種を使ったシングルオリジンコーヒーを提供するカフェが続々とオープンしており、ブラックで飲める爽やかな味わいを楽しむことができます。
ビーチリゾートとして人気のダナンは、海沿いのオープンテラスカフェや、ミーケービーチを見渡せるロケーション抜群のカフェが点在しており、眺めを楽しみながらベトナムコーヒーを味わうことができます。
ベトナムコーヒーはインスタントから、本格的なコーヒー豆まで幅広い選択肢があります。渡す相手や用途に合わせて選びましょう。

コーヒー通の方への贈り物には、ダラット産やソンラー産のアラビカ種のスペシャルティコーヒーが喜ばれます。
コーヒー専門店で購入する豆は、スーパーで購入できる市販品よりも香りが違います。アロマや豆の配合は、店によって異なるので、購入前に確認しておきましょう。
おすすめ購入場所
ハノイの旧市街にはコーヒーの専門店が軒を連ねています。来店客の8割が日本人というAnne’s Maisonは、アラビカ種やロブスタ種、ジャコウネココーヒー(コピ・ルアック)などベトナムを代表するコーヒー豆に出会えます。
特に香り高いアラビカ種やオリジナルブレンドの豆はお土産にぴったりです。

職場や友人へのばらまき土産に最適なのが、個包装のインスタントコーヒーです。G7(写真)は1箱に20~30袋入りで軽量コンパクトながら、本格的なベトナムコーヒーの味わいが手軽に楽しめます。
おすすめの購入場所
Vinmart、Lotte Martなどの大手スーパーには、コーヒーコーナーがあり、様々なブランドのインスタントコーヒーが揃っています。時間がなくて市内で購入できなかった場合や、追加で購入したい場合は、空港のお土産ショップが便利です。

本格的なベトナムコーヒーを自宅でも楽しみたい方にはフィン(Cà Phê Phin)とコーヒー豆のセットがおすすめです。
アルミ製またはステンレス製のカフェ・フィンは数百円程度で現地のスーパーやお土産店で入手でき、使い方もシンプルです。
おすすめ購入場所
フィン付きのコーヒーはお土産店やLotteMartといった大型スーパーなどで購入可能です。
日本でもベトナムコーヒーを入手する方法はいくつかあります。
| 購入場所 | 特徴 |
|---|---|
| カルディコーヒーファーム | 一部店舗でベトナムコーヒーの取扱あり |
| 成城石井 | 一部店舗でベトナムコーヒーの取扱あり |
| アジア輸入食材店 | 大都市にあるベトナム・東南アジア食材店では、ベトナムコーヒーの取扱あり |
| 通販サイト | 大手通販サイトやベトナムコーヒー専門サイトでは気軽にベトナムの有名ブランドのコーヒーが購入可能 |
また最近はベトナムコーヒーの認知度が高まり、本格的なベトナムコーヒーを味わえるカフェも全国で広がってきています。
ベトナムコーヒーが苦い主な理由は、使用されるコーヒー豆の品種と焙煎方法にあります。ベトナムでは主にロブスタ種が使われますが、ロブスタ種はアラビカ種に比べてクロロゲン酸という苦味成分を多く含んでいます。
さらに、ベトナムでは深煎り(フレンチロースト)が主流なため、苦味がより強調されます。
練乳を使う習慣は、フランス植民地時代に確立されました。ロブスタ種のコーヒーは苦味が強くそのままでは飲みにくいため、フランス人は生乳(牛乳)をたっぷり入れて飲んでいたとされています。ところが当時のベトナムでは牛の飼育が盛んでなく、新鮮な牛乳は輸入品で非常に高価でした。
コンデンスミルクは牛乳を濃縮・加糖したもので、開封後も保存しやすく、熱帯の気候でも傷みにくいのが最大のメリット。コスト面でも優れており、庶民のコーヒーに欠かせない存在として定着しました。
ベトナムコーヒーは、フランス植民地時代に持ち込まれたコーヒー文化がベトナムの風土・食文化と融合して生まれた、世界でも独自のコーヒー文化です。
世界第2位のコーヒー生産国であるベトナムは、ロブスタ種だけでなくダラット産アラビカ種のスペシャルティコーヒーも注目を集めています。G7やハイランドコーヒーなどのブランドはお土産にも最適で、カフェ・フィンと豆のセットがあれば自宅でも現地の味を再現できます。
ベトナムを訪れた際は、ぜひ路地裏のローカルカフェから洗練されたスペシャルティカフェまで、さまざまなスタイルのベトナムコーヒーを体験してみてください。
より詳しいベトナムコーヒーの情報については、以下の記事もご参照ください: