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ベトナムは実はコーヒー生産量で世界第2位を誇る大国です。特にロブスタ種の生産では世界トップを走り、その濃厚な風味は多くのコーヒー愛好家を魅了し続けています。
ブラジルに次ぐ生産量を持ちながら、ベトナムコーヒーの独特の味わいと文化は他国とは一線を画しています。
本記事では、他国のコーヒーと比べた決定的な違いをご紹介します。記事を読むことでベトナムコーヒーの独特な文化を知ることができるでしょう。
| アラビカ種 | ロブスタ種 | |
|---|---|---|
| 主な産地 | ・ブラジル ・コロンビア | ・ベトナム(ロブスタ最大の生産国) ・インドネシア、インド、ウガンダ、ナイジェリア など |
| カフェイン含有量 | 約1.2〜1.5%と少なめ | 約2.5〜4.5%と高い |
| 味わいの特徴 | バランスが良く、繊細 | 強い苦みと深いコク |
| おすすめの飲み方 | ・フレンチプレスやハンドドリップ | ・フィンを使った抽出 ・練乳や氷と合わせた伝統的なベトナムコーヒー |
世界で主に流通しているのはアラビカ種とロブスタ種です。
ベトナムでは主にロブスタ種が栽培されています。国内生産量の約97%がこのロブスタ種で、世界のロブスタ種生産量の第1位を誇ります。一方、ブラジルやコロンビアといった中南米の国々では、アラビカ種の栽培が主流となっています。
ベトナムで主流となっているロブスタ種は、濃厚でパンチの効いた味わいが特徴です。
ベトナムコーヒーが苦いと言われる理由はロブスタ種の以下の特徴が原因といわれています。
一方、アラビカ種は酸味が特徴で、フルーティーな香りと繊細な風味を持っています。一般的なドリップコーヒーやエスプレッソに使われるのは、このアラビカ種が中心です。

ベトナムコーヒーの最大の特徴といえば、「フィン」と呼ばれる独自の金属製フィルターを使った抽出方法です。
このフィンによる抽出は、他国のドリップ式とは異なるベトナム独自のコーヒー文化といえます。
フィンは、コーヒーカップの上に直接セットして使う小さな金属製の器具です。上部に粉を入れ、熱湯を注ぐと、ゆっくりとコーヒーが下のカップに滴り落ちていきます。
シンプルながら効果的なこの器具は、電気や特別な設備がなくても使えるという実用性も兼ね備えています。
日本を含む他の国では、ドリップ式やエスプレッソマシン、フレンチプレスなど様々な抽出方法が使われていますが、このフィンによる抽出法はベトナム独自のものです。時間をかけてゆっくり抽出することで、ロブスタ豆の持つ苦みと濃厚さを最大限に引き出しています。

アメリカーノやカフェラテに慣れていると、練乳やココナッツクリームと合わせるベトナムコーヒーは甘く感じる方もいるでしょう。
伝統的なベトナムコーヒーは、ロブスタ種の独特の苦味と甘さのコンビネーションが魅力です。
ここでは、ベトナムコーヒーの特徴、歴史的背景、バリエーションを解説します。
ベトナムコーヒーが甘い理由は、主に「ロブスタ種の強い苦味」と「歴史的な背景」にあります。
ベトナムで主に生産されているロブスタ種は、アラビカ種に比べて苦味が強く、コクが濃いのが特徴です。その苦味を和らげるため、練乳を加えて飲むスタイルが広まりました。
また、ベトナムではかつて新鮮な牛乳の流通が限られていたため、保存が効く練乳がコーヒーに使われるようになったともいわれています。
濃厚なロブスタコーヒーと甘い練乳の組み合わせは、現在ではベトナムコーヒーを象徴する味わいとして多くの人に親しまれています。


| 種類 | ベトナム語 | 特徴 |
|---|---|---|
| ブラックコーヒー | Ca phe den(カフェデン) | 「フィン」とよばれる金属製のドリッパーを使用したブラックコーヒー |
| 練乳入りコーヒー | Ca phe sua(カフェスア) | コンデンスミルク入りコーヒー |
| ミルク入りコーヒー | Bac Xiu(バクシウ) | ベトナム版アイスラテで、カフェスアと似ているが、バクシウの方がミルクの量が多い |
| ココナッツコーヒー | Ca phe dua(カフェズア) | 濃いめのコーヒーにココナッツミルク、コンデンスミルクをミックスしたもの |
| エッグコーヒー | Ca phe trung(カフェチュン) | 卵の黄身と砂糖のフォームがのったコーヒー |
| ソルトコーヒー | Ca phe muoi(カフェ ムォイ) | アイスラテのミルクの層に塩を加えたもの。コーヒーと塩気が意外にも合う |
| コールドブリューコーヒー | Cà phê cold brew (カフェコールドブリュー) | 長時間かけて冷水または常温の水でコーヒーを抽出する。桃やオレンジ、ライチをブレンドしたものが定番。 |
「エッグコーヒー」は、卵黄と練乳を泡立てたクリームをコーヒーの上にのせた独特の飲み物です。まるでティラミスのような味わいで、他国では見られない独創的なコーヒーです。
また「ココナッツコーヒー」も、ココナッツミルクの風味とコーヒーを組み合わせた、ベトナム独自の一杯です。
こうした独創的なバリエーションは、ベトナムのコーヒー文化の象徴です。
他国のコーヒー文化はコーヒーそのものの味わいを重視する傾向があるのに対し、ベトナムでは様々な食材との組み合わせを楽しむ文化が根付いているのです。
ベトナムのカフェは朝から深夜まで、さまざまな人が集まります。
仕事をする人、会話を楽しむ人、SNSにアップするための写真を撮る若者など、日本と比べるとベトナムのカフェは自由であり、人々の日常に深く根付いています。
そんなベトナムのカフェは、大きく3つのタイプに分けることができます。

ベトナムには、国内で独自に発展したカフェチェーンが数多く存在します。なかでも代表的なのが、800店舗以上を展開する最大手「HIGHLANDS COFFEE(ハイランズコーヒー)」や、約700店舗を持つ老舗の「TRUNG NGUYEN LEGEND(チュングエンレジェンド)」です。
日本人旅行者にもなじみ深い「CONG CA PHE(コンカフェ)」は、北ベトナム軍をイメージした緑を基調とした個性的な内装が特徴で、名物のココナッツコーヒーを目当てに訪れる人も多いです。
価格帯はブラックコーヒー1杯あたり45,000VND~70,000VND(約270~420円)となります。


近年、空間づくりにこだわったカフェが急増しています。InstagramやTikTokの普及が後押しし、インテリアや提供するドリンクのビジュアルにとことんこだわった店が若者を中心に人気を集めています。
「映えカフェ」とされる写真スポットになっているカフェや、静かで落ち着く大人の雰囲気のカフェなどさまざまです。
価格はチェーン店と変わらず、ブラックコーヒー1杯あたり45,000VND~70,000VND(約270~420円)となります。
チェーン店やおしゃれカフェとは一線を画す存在が、街角に点在するローカルカフェです。簡素なプラスチック椅子が並ぶ小さな店で、フィンから一滴ずつ落ちる濃厚なコーヒーをすすりながら、地元の人たちが語らいを楽しんでいます。価格は1杯10,000〜20,000VND(約50〜100円)ほどと、日常使いの値段です。
最初は入りにくいと感じるかもしれませんが、それこそがリアルなベトナムの日常。伝統的なコーヒー文化を体験したいなら、ぜひローカルカフェに足を踏み入れてみてください。
世界第2位の生産量を誇るベトナムは、ロブスタ種を主役に、他国とは一線を画す濃厚でパンチのある味わいを作り上げてきました。フィンによるゆっくりとした抽出は、単なる調理工程ではなく、時間を楽しむ文化です。
そしてカフェは、ローカルの小さな店から映えを意識したおしゃれな空間、全国展開するチェーン店まで、どの形態であっても「人が集い、時間を共にする場所」として機能しています。
ベトナムを訪れる機会があれば、ぜひ一杯のコーヒーを手に、その時間と場所をじっくり味わってみてください。きっとコーヒーを通じて、ベトナムという国の奥深さが見えてくるはずです。