ニュージーランド・ヘラルド紙が8月19日に発表した2026年の読者投票で、ベトナムが「世界の美食旅行先」の1位に選ばれた。2位はイタリア、3位は日本。パスタとピザの本場も、和食の国も、フォーとバインミーの国に後ろへ回った格好だ。これから食べることを目的にベトナムへ行く人、すでに現地で暮らす人にとって、この結果は「どこで何を食べるか」を組み立て直す材料になる。
面白いのは、ベトナムが単一の料理で勝ったわけではない点だ。北・中部・南で味の設計がまるで違い、旅程を数百キロずらすだけで別の国のような食卓に出会える。1つの国で3度おいしいことが、票を集めた理由に見える。
ニュージーランド・ヘラルドの読者投票、11部門の食部門でベトナムが首位
この賞はNZヘラルド紙の読者が投票して決める「Travel Readers’ Choice Awards」で、宿や航空会社など11部門がある。そのうち食の旅行先部門で、ベトナムが定番のイタリアや日本を抑えて1位に立った。専門家が選ぶ賞ではなく、実際に旅した読者の票で決まる点が肝で、机上の評価ではなく現地で食べた記憶がそのまま順位に反映されている。上位10には地元ニュージーランドのオークランド・ウェリントン・ホークスベイも入り、ベトナムはその全てより上に位置した。
| Rank | 旅行先 |
|---|---|
| 1 | Vietnam |
| 2 | イタリア |
| 3 | Japan |
| 4 | Thailand |
| 5 | オークランド(NZ) |
| 6 | Singapore |
| 7 | ウェリントン(NZ) |
| 8 | メルボルン(豪) |
| 9 | フランス |
| 10 | ホークスベイ(NZ) |
出典: NZ Herald Travel Readers’ Choice Awards 2026(VnExpress International 2026年8月19日報道の並びに基づく)
北はあっさり、中部は辛く濃く、南は甘い——移動するほど味が変わる
NZヘラルドの評価が突いたのは、地方ごとの味の落差だった。北部のハノイは胡椒を効かせた澄んだ味付けで、素材そのままを出す一杯が多い。朝はフォー、昼はブンチャー、夜はエッグコーヒーと時間帯で店を変えるハノイ旧市街の食べ歩きは、この淡い味を一日で追える。
中部のフエは真逆で、辛くて濃く、手数が多い。牛肉と唐辛子油を利かせたブンボーフエ、小皿に盛った宮廷風の前菜など、かつての王宮の宴に根を持つ料理群で、色数も品数も多い。1日1,200円でフエの麺と米粉菓子を巡る旅のように、少額でも品目を積み上げられるのが中部の遊び方だ。同じフォーでも北のあっさりした牛骨スープと、南の甘みの立ったスープでは別物に感じる。
南部のホーチミンは甘みとコクが前に出て、ハーブをどっさり添える。国内各地から人が集まる街だけあって、地方の味を探してホーチミンへ集まる朝の一杯のように、南にいながら北や中部の郷土麺にも当たる。1都市で全国を横断できるのが南の強みになる。
旅行者の8割が「食」で行き先を決める時代
投票の背景には、食を旅の主目的に置く人が増えた実態がある。今回の調査では、海外旅行者の約8割が現地の食文化を基準に行き先を選び、66%が気取らない屋台の味を好み、64%が高級店より近所の食堂やフードホールを選んだ。星付きより路地裏、という重心の移り方は、屋台とローカル食堂の層が厚いベトナムに追い風になっている。プラスチックの椅子に座って1杯4〜500円のフォーを食べる体験そのものが、旅の目的として値打ちを持ち始めた。
日本にとっても他人事ではない。和食は3位で健闘したが、体験の入口が寿司や天ぷらといった「高い一皿」に寄りがちで、路上の安い一杯で勝負するベトナムとは打ち出し方が違う。訪日客に食で選ばれ続けるには、屋台的な気軽さをどう見せるかが次の課題になる。
この結果を旅にどう落とすか
- 1回の旅で北・中部・南のうち2地方をつなぐと、味の違いを体で覚えられる。ハノイ+フエ、ホーチミン+メコンなどの組み合わせが軸になる。
- 予算配分は屋台7割・店3割が現実的。1食10万ドン(約570円)以下でも満足度は高い。
- フエやハノイは同じ料理でも店ごとに味が振れる。1品を2〜3軒で食べ比べると当たりを引ける。
- お土産や自宅用に持ち帰るなら、乾麺・フォー用スープ・コーヒーが軽くて崩れにくい。
NZヘラルドの1位は、豪華な一皿ではなく、朝の路上や近所の食堂に価値が移った証拠だ。次にベトナムへ行くなら、地図を店単位でなく地方単位で引き、北の澄んだ味と南の甘い味を同じ旅の中で往復してみるといい。3位の日本を上回った理由が、道端の椅子に座った瞬間に腑に落ちる。
