暗い浜を、生まれたばかりの子ガメが波打ち際へ懸命に進んでいく——ベトナム南部の離島コンダオで、アオウミガメの子ガメ累計3万5,000匹超が孵化・放流されたことが7月25日に報じられた。高級リゾート「シックスセンシズ・コンダオ」と国立公園が2018年から続けてきた孵化事業が、一つの到達点に達した。世界有数のウミガメ保全地であるコンダオは、「見て楽しむ」だけでなく「守る現場に立ち会う」エコツーリズムの目的地として存在感を増している。
2018年開始、シックスセンシズと国立公園が累計3.5万匹超を放流
Thanh Nien(7月25日付)によると、放流された子ガメは累計で3万5,000匹を超えた。事業はシックスセンシズ・コンダオとコンダオ国立公園の協働で2018年に始まり、リゾート敷地内に孵化場を整備。これは同諸島で2カ所目のウミガメ孵化拠点にあたる。危険な場所に産みつけられた卵を安全な砂浜へ移し、約60日間見守ったうえで海へ還す仕組みだ。単発のイベントではなく、2018年からの積み重ねである点に重みがある。
孵化成功率83%を支えるダットドック浜の照明・動線管理
ここ数年の孵化成功率は83%に達し、世界平均とされる60〜80%を上回る。リゾートが面するダットドック・ビーチ(全長1.8km)は国立公園の緩衝地帯にあり、モーター付きのウォータースポーツを禁止し、夜間の照明を最小限に抑えるといった配慮が、産卵に来る親ガメと孵化を支えている。コンダオは刑務所島としての暗い歴史を持つ一方、開発の波から比較的守られてきたことが豊かな海洋生態系を残す結果になった。夜間照明を抑え、砂浜を厳重に管理する地道な取り組みの積み重ねが、この数字に表れている。
放流を見られるのは繁殖期5〜12月、宿泊者向けと公開ツアーの二択
ウミガメの繁殖期はおおむね5月から12月で、この間に産卵・孵化・放流が集中する。訪問時期を合わせれば、子ガメが海へ向かう場面に立ち会える可能性が高まる。
| Item | Details |
|---|---|
| Target | アオウミガメ(green sea turtle) |
| 放流実績 | 累計3万5,000匹超(2018年〜) |
| 孵化成功率 | ここ数年83%(世界平均60〜80%) |
| 見られる時期 | 繁殖期5〜12月 |
| 主な舞台 | ダットドック・ビーチ/国立公園内の産卵地(バイカイン島など) |
見学には二つのルートがある。ひとつはシックスセンシズ・コンダオの宿泊者向けで、リゾートの浜で行われる放流体験に宿泊者が参加できる。もうひとつは国立公園が運営する公開ツアーで、産卵地として知られるバイカイン島などへ渡り、夜間に産卵・孵化を観察する。公開ツアーは事前予約制で、季節と天候、そしてウミガメの状況に左右されるため、日程には余裕を持たせたい。裏の取れない料金の具体額はここでは示さないが、いずれも予約と現地の指示に従うことが前提になる。
昼は海鮮と海、夜は保全の現場——41万人が訪れる島の作法
コンダオへは2026年1〜7月に41万人超が訪れ、141軒の宿(約2,900室)が平均62%の稼働で受け入れてきた。人が増えるほど、自然への負荷とどう折り合うかが問われる。ウミガメ観察では、照明を落とし、フラッシュを使わず、ガイドの指示どおりに距離を保つ——こうした作法を守ることが翌年の産卵につながる。旅行者一人ひとりの振る舞いが保全の成否に直結する現場だ。島の魅力は生き物だけではない。朝市や漁村で珍しい海鮮を安く味わう楽しみは月ガニにヴーナン貝、コンダオ島の珍海鮮を朝市と漁村で安く食べるにまとめた。昼は海と食、夜はウミガメ——一日の組み立て次第で、島の時間は驚くほど濃くなる。採石跡の湖を守りながら楽しむアンザンの例など、自然を壊さずに巡る旅は各地で形になっており、その一つは採石跡が翡翠色の湖に、アンザン七山に点在する絶景6湖の巡り方で紹介した。コンダオのウミガメも同じ「守りながら見る」文脈にある。
空路と海路のみ、繁殖期に狙うなら早めの手配を
コンダオは本土から離れた離島で、アクセスは空路と海路に限られる。空路ならホーチミンなどから国内線でコンダオ空港へ入るのが早く、海路は本土南部の港からの高速船が使われる。便数も座席も限られるため、繁殖期の5〜12月に狙って訪れるなら、航空券と宿を早めに確保したい。島内の移動はバイクタクシーやレンタルが中心で、夜のウミガメ観察は主催者の車で移動する形が一般的だ。天候次第で船が欠航することもあり、日程には予備日を持たせておくと安心できる。放流や産卵は、訪れたその夜に必ず見られるものではない。だからこそ、昼は島の海や食を楽しみ、夜に運よく立ち会えたら儲けもの——そのくらいの構えで臨むと期待外れになりにくい。孵化成功率が世界平均を上回る事実は、保全と観光を両立させたモデルとして発信力を持ち、リゾートが保全に投資してその体験を宿泊価値に変える循環は、他の離島リゾートにとっての参照点にもなる。この夏から年末にかけて、コンダオは「守りながら見る」旅を実践できる数少ない目的地だ。
