ジャライ省ビエンホー村のチュダンヤ火山で、ふもとに並ぶバイクタクシーが全員女性という状態になっている。Thanh Nienが伝えたところによると、イアグリ村の住民でつくる隊は10人弱。往復およそ5kmの山道を1回5万ドン(1万ドン=約57円換算、2026年11月時点で約285円)で運び、受け取った金はその日の終わりに全員で等分する。
観光地のバイクタクシーで旅行者が身構えるのは、坂道の怖さよりも客の取り合いと乗る前の値段交渉だ。チュダンヤのふもとでは、その二つが隊の運用で消えている。車が入れない急坂の先にある標高975mの火口で、地元の女性たちが都市とは別の手順で同じ問題を片づけた現場として読める。
ふもとで待つ10人弱が、往復5kmを5万ドンの一律にした
隊が待機するのは火山のふもとで、イアグリ村の集落から山道に入る地点にあたる。客が来ると順に乗せ、頂上まで上がって戻ってくる。料金は走った距離ではなく「往復1本」で決まっているため、乗客が金額を詰める場面がそもそも発生しない。
料金は乗る前に決まっていて、繁忙期の割増も表に出ている
| 金額が決まる場面 | ドン建ての額 | 円換算(1万ドン=約57円) |
|---|---|---|
| 通常日の往復1本 | 50,000 dong | 約285円 |
| 祭り期間とテトの往復1本 | 7万ドン | 約400円 |
| 客の多い日の1人あたり分配 | 40万〜50万ドン | 約2,280〜2,850円 |
祭りやテトの7万ドンは、繁忙期の割増をあらかじめ公表した形になっている。旅行者から見ると、混雑日に割増を持ち出されて初めて知るのではなく、上る前に2段階の料金表を把握できる。
運転しているのは畑仕事の合間に出てくる住民
- グエン・ティ・トゥイエット・チン(44)は、村の男たちが遠くへ働きに出るか畑で重い仕事を担っているため、女性が家のことをしながら運転で収入を足していると話す
- グエン・ティ・チュックはさつまいもを作る農家で、農閑期に自分のバイクで客を乗せている
- 頂上までの道は急な上りと連続する曲がりが続くため、初めて乗る客のときはとくに速度を加減し、曲がりごとに慎重に走ると、チュックは運転の勘所を挙げた
- ダナンから来た観光客のグエン・ティ・クックは、観光地で女性だけのバイクタクシー隊を見たのは初めてだと述べ、運転ぶりを評価している
その日の売上は夕方に人数分へ割られる
金の流れは単純だ。1本走るごとに料金を本人が懐に入れるのではなく、隊の1人が全額を預かる。その日の営業が終わると、預かった金を人数で割って配る。客の多い日は1人あたり40万〜50万ドンになる。
何本乗せたかが手取りに直結しない
- 料金が1本5万ドンの一律なので、長い客を引いた人が多く稼ぐという差が最初から存在しない
- 売上は1人が預かって終業後に等分するため、自分が何本走ったかは分配額を動かさない
- 先に客を掴んでも報酬が増えないので、声をかけ合う競争に見返りがなくなる
- 待ち時間が長かった人も、走った人が持ち帰った売上から同じ額を受け取る
この配り方は、観光地のバイクタクシーで起きがちな景色を裏返している。1本ごとの歩合で動く個人営業なら、客が1人現れた瞬間に複数人が同時に声をかけるのが自然な反応になる。売上を等分する前提に置き換えると、その反応が割に合わなくなる。
急すぎて車が通れない区間があるから、隊はふもとで待つ
- 山へ向かう道のうち急すぎる区間は車が上がれず、女性の隊がふもとで客を待つ形になっていると、ビエンホー村人民委員会のダン・カン・トアン副委員長は説明する
- 村はバイクタクシー隊や電動バイクの事業者、宿泊施設に対して安全対策の実施を求めている
- 山へ上がる各ルートには案内図が置かれ、客が自分でルートを選べるようにして混雑時間帯の集中を散らしている
- 村は観光客に接する事業者に、親しみやすい観光大使として振る舞うよう働きかけた
中部高原へはハノイかホーチミン市から国内線を1本足す
日本からのベトナム旅行で中部高原は後回しになりやすい。ダナンやホイアン、ダラットが候補に並び、ジャライ省は名前が出てこない。ただ11月という時期で切ると、火口の斜面が黄色くなる期間と催事の日程が重なり、同じ移動で2つを拾える。
プレイク空港に入っているのはハノイ線とホーチミン市線
- 空の便はプレイク空港(PXU)で、ハノイとホーチミン市からベトナム航空とベトジェットが入っている
- 日本からの直行便はないため、どちらかの都市で国内線を1本足す形になる
- ホーチミン市かハノイに数日滞在する旅程へ、中部高原を2〜3日はめ込む組み方ができる
高原の山で地元が足と道を仕切る例は他にもある
山の案内が地元の手で整うのはチュダンヤだけではない。ダラット近郊ではランビアン山で登山客を先導する黄色い犬を住民が地図に登録したという話があり、こちらは住民の1人がGoogleマップの地点として登録したもので、観光地の運営側が動いた話ではない。
- 登録した地点はアプリの技術的エラーで削除され、現在は再登録を待っている段階にある
- 観光地の管理者側からは、この案内役について公式な説明が出ていない
- チュダンヤで整っているのは案内役ではなく、1本5万ドンという料金と売上を等分する取り決めだ
車が上がれない急坂で、値段の会話だけが消えた
ベトナムの都市部では、バイクタクシーの料金を乗る前にアプリが提示する。金額が確定してから乗るので、運転手と客が金額を話し合う場面がない。ホーチミン市やハノイで旅行者が気楽に後部座席に乗れるのは、交渉の腕ではなく表示の順番のおかげだ。
その表示額の裏側は固定ではなく、E10への切り替えで27,080ドンになったガソリン価格とGrabの運賃のとおり、燃料が上がってもアプリの運賃表には自動で乗らず、まず運転手の手取りが削られる。それでも元ミス・ワールドがバイクタクシーでハノイ旧市街の4品を食べ歩いたような使い方が続いているのは、観光の足としてバイクが選ばれ続けているからだ。チュダンヤの急坂区間には、そもそも車が上がれない。
旅行者が負う判断は3通りに分かれる
| 乗る場所 | 料金の決まり方 | 旅行者がする判断 |
|---|---|---|
| 都市部の配車アプリ | 乗車前にアプリが金額を提示 | 行き先を入力するだけ |
| 観光地で客待ちする個人のバイク | その場で口頭提示、交渉が入る | 相場を知らないまま金額の妥当性を判断 |
| チュダンヤ火山のふもとの女性の隊 | 往復1本5万ドン、祭り期間とテトは7万ドン | 上るか上らないかだけ |
等分は取り合いを止めるために選ばれている
- 隊は客の取り合いを避けるために売上をまとめて等分する形をとっており、分配は親睦ではなく運用の手段として機能している
- 一律料金と等分を組み合わせると、価格で客を引く動機も、順番を抜いて客を掴む動機も同時に消える
- 都市のアプリが料金表示で解いている不安を、チュダンヤでは隊の内部ルールで解いている
- 隊の側からは、村がもっと本格的に組織化と宣伝を手伝ってほしいという要望が出ている
プレイク坊から約30km先の火口で催事は11月8日まで続く
チュダンヤ火山はプレイク坊の中心から北東へ約30km、標高は約975m。火口のくぼみを縁取るように畑と草地が広がり、斜面をダクイ(dã quỳ、ベトナムの野生ヒマワリ)の黄色が覆う時期に人が集まる。現在はプレイク坊(phường Pleiku)と表記され、火山があるビエンホー村と同じジャライ省に属している。
ダクイの時期と祭りの日程が重なっている
| 火山と催事 | 位置・標高・日程 |
|---|---|
| Location | ジャライ省ビエンホー村イアグリ村(チュダンヤ火山) |
| Elevation | 約975m |
| プレイク坊の中心から | 北東へ約30km |
| 2026年の催事 | ゴング祭・ダクイ週間(10月30日〜11月8日、プレイク坊とビエンホー村で開催) |
| 開幕地 | イアグリ村のニャーロン(集会所) |
| 催事の継続 | 2017年から毎年開催 |
頂上まで行くなら足はふもとで決まる
- 往復1本5万ドン、祭り期間とテトは7万ドン。支払い先は隊の1人にまとまる
- 現地での足は事前予約ではなく、ふもとに着いてから隊に声をかける形になる
- 車が上がれない急坂区間があるため、頂上を見るなら徒歩かバイクの二択になる
- 各ルートに案内図が置かれているため、混む時間帯でも上がる道を変えて回避できる
- 急な上りと連続する曲がりが続く道なので、速度の加減は運転する側に任せることになる
- 催事の期間中は100人を超える民間芸人がゴング隊で出演し、イアグリ村のニャーロン周辺に人が集まる
ふもとに並ぶ10人弱は、1本5万ドンを誰が走っても同じ額として受け取り、夕方にまとめて割る。チュダンヤの坂で旅行者が決めるのは、上るか上らないかだけになっている。


