顔認証しないと口座が止まる、ベトナム在住者の生体認証チェック

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ベトナムの銀行口座を持つ人にとって、生体認証の登録は「やっておけばいい」段階を過ぎ、「済ませていないと使えない」段階に入った。ベトナム国立銀行(SBV)の主導で進む本人確認の刷新は、休眠口座の大量削除から始まり、2026年1月には未登録者のネットバンキング停止にまで踏み込んだ。ハノイやホーチミンで生活する日本人、あるいは出張で口座を持つ人が、自分の口座は無事なのか、何をすれば凍結を避けられるのかを判断できるよう、確定している事実だけを整理する。

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すでに8600万口座が消えた、という前段

話の出発点は2025年9月1日にさかのぼる。SBVは、本人確認が済んでいない口座や長期間動いていない口座、あわせて8600万件超を削除した。国内の口座はおよそ2億件あったとされ、その約4割が一掃された計算になる。残ったのは、生体データと紐づいた個人口座1億1300万件と、法人口座71万件あまり(2025年7月時点の集計)。削除の狙いは、他人名義の受け取り口座やマネーロンダリングに使われる「幽霊口座」をなくすことだと説明されている。

この削除は将来の予定ではなく、すでに実行された過去の出来事だ。ネット上には「9月1日に8600万口座が閉鎖される」という見出しが今も出回るが、それは2025年の措置を指している。2026年の今、在住者が向き合うべきなのは、その次の段階である。

2026年1月から、未登録口座はネットで動かせない

2026年1月1日、ベトナムの各行はモバイルバンキングとインターネットバンキングでの取引を、生体認証を済ませていない利用者について停止した。根拠はSBVの通達17/2024号および25/2025号で、ベトコムバンク、ヴィエティンバンク、アグリバンク、BIDVといった大手はいずれも事前に停止の告知を出している。凍結の対象になりやすいのは、旧9桁の身分証しか登録していない人、身分証の有効期限が切れている人、そしてチップ入りIDのデータと登録済みの顔情報が一致しない人だ。

口座のお金が消えるわけではない。資金は残るが、認証を済ませるまで引き出しや送金がオンラインではできなくなる。海外にいる人や、しばらくベトナムを離れている人にとっては、この「窓口に行かないと直せない」という条件が厄介になる。法人口座については代表者本人の顔認証が必要で、代表者が不在だと送金が止まる論点は、法人送金に顔認証が求められる制度の記事で個別に触れている。

パスポート不可は「市民向け」、外国人の扱いは別

報道で目立つのが「2026年1月1日からパスポートでは銀行取引ができない」という一文だ。ただし、この規定はベトナム国民を対象にしたもので、市民はチップ入り市民IDカード(CCCD)、従来型の身分証、またはレベル2の電子ID(VNeID)を使うよう求められている。外国人がパスポートを一律に使えなくなる、と読むのは早計だ。

在住外国人の実務は、市民とは経路が分かれる。オーストラリア商工会議所(AusCham)がまとめた案内では、チップ入りIDを持たない外国人は銀行の窓口に足を運び、係員の案内で対面登録するよう勧められている。つまり、アプリだけで完結できない場合は支店に行く、というのが現実的な答えになる。長期滞在者であれば、一時滞在許可証(TRC)や永住許可証を持つ人を対象にVNeIDの取得が広がっており、警察署での対面登録を経れば銀行側の認証手段としても使えるようになってきた。行政手続きがVNeIDに寄っていく流れは、入管手続きがVNeIDに一本化された動きとも地続きだ。

自分の口座を止めないための確認手順

認証の入口は二つある。スマホで完結させる方法と、支店の窓口で登録する方法だ。どちらを選べるかは、手元のIDと居住資格で変わる。

Target 主に使える認証手段 現実的な進め方
チップ入りIDを持つ長期在住者 銀行アプリ+NFCでのチップ読み取り アプリで自己完結できる可能性が高い
VNeID(レベル2)取得済みの外国人 VNeID連携/アプリ まず警察署でVNeIDを登録
チップ入りIDがない外国人 支店窓口での対面登録 取引のある支店に事前連絡して来店

アプリで行う場合の流れは各行おおむね共通で、銀行アプリにログインして「情報更新」を選び、顔を撮影し、身分証の表裏を撮り、スマホのNFCでチップを読み取ってOTPで確定する。SBVによると、支店でのチップID確認に対応した金融機関は60社、モバイルアプリ経由は49社、VNeID経由は22社に達している。手段が一つに絞られていない分、自分の口座がどの経路に対応しているかを、取引銀行の告知で先に確かめておきたい。

在住日本人が今週やるべきこと

この制度で見落とされがちなのが、「普段は現金とアプリで足りているから放置していた」層だ。生体認証を後回しにしていた口座は、2026年1月の時点でオンライン操作がすでに止まっている可能性がある。給与振込や家賃の自動引き落としを紐づけている口座なら、認証漏れは生活の詰まりに直結する。まずは自分のメイン口座で送金画面まで進めるかを試し、はねられるようなら未登録を疑うのが早い。

短期の出張者や、ベトナム再訪の予定が当面ない人も油断できない。窓口登録が必要なタイプの口座は、本人が支店に行くまで直せないため、日本にいる間は手が打てない。次回の渡越時に、空き時間を半日確保して支店に寄る、という段取りをあらかじめ組んでおくと安全だ。行政系の届け出が住所地の役所やポータルに集約されつつある流れは、一時滞在申告が新サイトに一本化された件と併せて把握しておくと、渡越時の用事をまとめて片づけやすい。

不正対策としての狙いと、これから

一連の締め付けは、詐欺対策という一点に収れんしている。SBVの不正監視システム「SIMO」は、2025年12月11日時点で213万件の詐欺アラートを利用者に発し、1億500万ドル超の被害を防いだとされる。他人名義の口座を使った振り込め詐欺やマネーロンダリングを、口座の入口で断つという発想だ。データ整理の過程では、1億2090万件の個人記録と120万件の法人口座が、チップIDやVNeIDの生体データで検証・更新された。

参考までに、10万ドン単位の少額決済まで顔認証を求められるわけではない。生体認証を毎回課される目安は1回1000万ドン(1万ドン≒60円換算で約6万円)超、または1日の合計2000万ドン(約12万円)超の送金で、日常の小さな支払いとは切り分けられている。制度の輪郭が固まった今、在住者に残された作業は、恐れることより、自分の口座の状態を一度だけ点検し、必要なら支店で30分を使うことに尽きる。

Sources

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Author of this article

In my third year living in Ho Chi Minh City, Vietnam. I launched this specialist Vietnam travel information site hoping to share local knowledge you simply can’t get by visiting as a tourist — the kind of thing you only understand by being here.

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