2026年3月の訪越客統計では、欧州の一部市場が前月から大きく減り、日本は39%増えた。まず押さえたいのは、いずれも2026年2月との比較であり、前年同月比ではないという点だ。中東の航空便の混乱は旅行業界が挙げた減少要因の一つだが、この数字だけで日本人の旅行熱や現地の空き具合まで判断することはできない。本稿では3月の動向を振り返り、四半期の数字との違いと、旅行を予約する際に役立つ確認点を整理する。
欧州の一部市場で減少:数字はすべて前月比
ベトナム政府の広報サイトが4月6日に国家観光局の数字として伝えた、主な欧州市場の増減は次のとおり。比較対象は2月であり、欧州全体の前年比を表す一覧ではない。訪問者数の増減率なので、同じ減少率でも実際に減った人数は市場の規模によって異なる。
- Norway: -42%(いずれも2026年2月比)
- Poland: -38%
- Sweden: -37%
- Denmark: -26%
- Czechia: -23%
- Switzerland: -21%
比較対象を前年3月に変えると、文化・スポーツ・観光省の4月6日付記事では、ノルウェーは12.0%増、スウェーデンは9.2%増だった。前月より減っていても、前年よりは多かったことになる。また、国家統計局の第1四半期資料では、欧州からの訪問は約123万人で前年同期比55.6%増。「3月の前月比減少」と「四半期全体の前年比増加」は両立する。短期の変動を、そのまま長期的な縮小と読み替えないことが大切だ。
中東経由の航空便で何が起きたのか
3月には中東情勢の悪化に伴う空域制限で、航空便の欠航や運航縮小が起きた。カタール航空は3月11日、通常の定期運航の一時停止を伝える一方、当局が認めた限定的な経路を使う便も案内している。「通常運航の停止」と「すべての便が飛ばない状態」は同じではない。影響は日付と路線で変わるため、当時の運休記事を現在の運航状況として読み替えるのは避けたい。
ドバイやドーハなどを乗り継ぐ旅程では、最初の便が飛んでも、接続便の欠航で目的地へ進めないことがある。ただし、欧州とベトナムの移動手段がなくなったわけではない。ベトナム航空の3月の公式発表にも、パリ、フランクフルト、ロンドンなどとの直行便ネットワークが示されている。利用する航空会社だけでなく、予約票にある全区間と乗り継ぎ空港を見ることが重要になる。
VnExpressの4月11日付報道は、旅行業界が挙げる背景として、乗り継ぎ拠点の混乱と燃料費の上昇を紹介している。ただし、同記事には国別の減少分を原因ごとに分解した分析はない。迂回による時間や費用も路線次第だ。自分の旅程では、所要時間、追加の宿泊、荷物料金まで含めた総額を比較したい。運賃だけが安くても、乗り継ぎで一泊必要なら予算は変わる。
日本の39%増も前月比:アジア各市場の違い
同じ国家観光局の発表では、次のアジア市場で2月からの増加が報告された。一覧の増加率は3月単月の前月比であり、年間や第1四半期の成長率ではない。
- Japan: +39%
- Indonesia: +34%
- Thailand: +26%
- Laos: +25%
- Singapore: +23%
- India: +19%
- China: +4%
一方、同じ発表では韓国は26%減、台湾は19%減で、アジア全体が一様に増えたわけではない。日本の39%増についても、この発表だけでは過去最高の伸び率とは確認できず、何が増加をもたらしたかまでは分からない。休日配置や季節の違いを検討するには、複数年の月別データや予約動向が必要になる。
日本発の旅程では、ベトナムへの直行便なら中東の空港で乗り継ぐ必要がない。接続便を待つ工程がないことは、休暇日数が限られる旅行では比較の材料になる。ただし、それだけで欠航や運賃上昇の影響がゼロになるわけではない。出発前には往路だけでなく、帰国便まで含めて航空会社の案内を確認する必要がある。
直行便の選択肢では、ベトジェットエアの静岡〜ハノイ線が2026年4月28日に就航したことを、静岡県が7月の公式記事で報告している(Vietjet Hanoi–Shizuoka route launch April 28)。これは3月の統計より後の出来事なので、39%増の実績を説明する根拠にはならない。地方空港を使う人には、自宅から空港までの移動も含めて比べられる選択肢だ。第1四半期全体の動向は、期間を分けて読むと分かりやすい(Q1 2026 foreign visitor numbers set a record)。
全体では3月は前月比減、前年同月比では増加
政府広報が国家観光局の数字として示した3月の訪問者数は約208万人。前月比では6.7%減だったが、前年同月比では1.3%増だった。どの月と比べるかで見え方が変わるため、「減少」とだけ覚えてしまうと実態を取り違えやすい。欧州の一部市場だけを全体の減少原因と断定することもできない。
国家統計局の第1四半期資料では、1〜3月の累計は約676万人、前年同期比12.4%増だった。VnExpressも四半期として過去最高と報じている。ここでいう訪越客数は国全体の規模を見る指標で、個別のホテルの稼働率や、ある観光地の待ち時間を示すものではない。月次の変化、四半期の累計、訪れる地域の状況を分けて考えると、ニュースを予約判断に使いやすくなる。
The practical meaning for Japanese travelers
日本から旅行を考えるなら、訪問者数の増減を「安くて空いているはず」と読み替えるより、自分の希望日に確認できる条件へ落とし込む方が役に立つ。特に混雑、費用、乗り継ぎは、それぞれ別に確かめたい。
1. 混雑は施設と訪問時間で確認する
ハノイ、ホーチミン、ホイアン、ダナンの混み具合は、国内旅行者や催し、曜日でも変わる。今回確認した統計・報道には、食堂の行列が短くなったという調査結果はない。人気店なら予約できるか、観光施設なら日時指定券があるかを先に調べたい。静かに過ごしたい場合は、国別訪問者数よりも、滞在地区の行事や宿に伝えられる部屋の希望を確認する方が具体的だ。
2. 料金は同じ条件の総額で比較する
全国の客数だけでは、ホテルの値下がりや空室増加を確かめられない。ホテルは宿泊日、人数、朝食、税・サービス料、取消期限をそろえて比べる。航空券は預け荷物、座席指定、変更条件、空港までの交通費を足した総額で見るとよい。安い返金不可プランを選ぶ前に、日程変更が起きた場合に失う金額も確認しておくと、価格差の意味が分かりやすい。
3. 経由地と全区間の運航状況を確認する
直行便は乗り継ぎを一つ減らせるが、どの旅程でも運航の確約にはならない。経由便を使う場合は、往復すべての便名、乗り継ぎ時間、予約が別々かどうか、欠航時の連絡先を確認する。別切り航空券では、前の便の遅れに対して次の航空会社がどこまで対応するかを事前に尋ねたい。運休時は自己判断で取消操作をする前に、航空会社や購入先が示す振替・払い戻し条件を確認する。
日程を決める際には、行事の開催日も別に調べておこう。関連記事にあるダナンの水かけイベント(Da Nang Songkran Festival 2026)やフエの宮廷料理イベント(Hue Royal Cuisine Festival 2026)は2026年の開催情報を扱うものだ。過去の記事を翌年の日程として使わず、主催者の案内とホテルの空室を合わせて確認したい。行事を見る旅なのか、混雑を避ける旅なのかで、同じニュースから選ぶ日程も変わる。
その後の運航再開:路線数と輸送力を分けて読む
その後、エミレーツ航空は2026年5月4日に、世界の就航ネットワークの96%を回復し、輸送力は混乱前の75%に相当すると発表した。就航先の復活と、便数・座席数の回復は同じ速度では進まないという例だ。これは5月時点の同社全体の発表で、特定のベトナム便や、これから予約する便の運航を保証するものではない。
今後の需要を考える場合も、日本やインドなど一部市場の1か月の増加を、そのまま持続的な成長とみなすことはできない。旅行事業者なら、市場別の人数、航空座席数、予約や取消の動きを同じ期間で追う必要がある。旅行者なら、統計の更新を待つより、候補便の最新の運航案内と、予定変更に対応できる予約条件を確かめる方が直接役立つ。
Summary
3月のニュースを読む鍵は、比較期間と、統計から分かる範囲をそろえることにある。欧州の一部市場の減少、日本の増加、四半期全体の好調は、互いに矛盾する話ではない。中東の航空便の混乱も重要な背景だが、すべての増減の原因や、その後の旅行費用まで一つの数字で説明することはできない。
旅行計画では、まず行きたい場所と日数を決め、次に往復の航空便と総額を比べ、最後に宿や施設の予約条件を確かめたい。「今がお得」という印象より、自分の旅程で確認できた条件を頼りにする。その方が、ニュースの変化に振り回されずに準備を進められる。
当時の関連報道:
・VnExpress: Vietnam sees drop in European arrivals in March amid disruption in air travel
・Bloomberg: Middle Eastern airline suspensions spread after Iran's attack
・ACCESS Online: Vietnam flights canceled one after another amid Middle East airspace closures


