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ベトナムは世界第2位のコーヒー生産国として知られています。フランス植民地時代から続く歴史の中で育まれた独自のコーヒー文化は、濃厚で香り高い味わいが特徴です。
そんなベトナムコーヒーの世界には、「アラビカ種」と「ロブスタ種」という2つの主要品種が存在します。この2種類の豆の違いを知ることで、ベトナムコーヒーの奥深い魅力をより深く理解できるようになるでしょう。
あなたは普段何気なく飲んでいるコーヒーの豆の種類を意識したことがありますか?

今回は、ベトナムコーヒーの味わいを決定づける重要な要素である「アラビカ種」と「ロブスタ種」の違いについて、特徴や栽培方法、風味の比較など、様々な角度から詳しく解説していきます。
アラビカ種は、世界で生産されるコーヒー豆の約60~70%を占める主要品種です。その起源はエチオピアの高地にあり、繊細な気候を好む特徴があります。
ベトナムでは、標高の高い地域でアラビカ種の栽培が行われています。特にダラットは標高が1,500m前後で年間平均気温が17℃と冷涼な気候を持ち、アラビカ種の栽培に適した環境となっています。
アラビカ種は栽培に手間がかかり、病気や害虫に弱いという特性があります。標高の高い場所での栽培が必要で、気温や湿度などの環境条件にも敏感に反応します。
そのデリケートな性質ゆえに、ベトナム全体のコーヒー生産量のうち、アラビカ種はわずか5%程度にとどまっています。

ベトナムで栽培されるアラビカ種の多くは「カティモール」と呼ばれる品種です。カティモールはアラビカ種とロブスタ種の遺伝子を一部持つハイブリッド種で、病虫害への耐性が強く、比較的育てやすいという特徴があります。
ロブスタ種は、その名前が示す通り「強靭」という意味を持ち、1898年にアフリカのコンゴで発見されました。病気や害虫に強く、高温多湿の環境でも育つため、アラビカ種が育ちにくい低地での栽培が可能です。
ベトナムはロブスタ種の生産量で世界一を誇ります。国内のコーヒー生産量の90%以上がロブスタ種で、主に標高300~800mの中部高原地帯で栽培されています。
バンメトートはベトナムのロブスタ種の主要産地として知られています。標高が低いエリアでも十分に育つロブスタ種は、アラビカ種に比べて生産コストが低く、1本の木からより多くの収穫量を得られるという利点があります。
こうした特性から、ベトナムが1986年のドイモイ政策後にコーヒー産業を強化する際、ロブスタ種の大規模栽培に注力したことで、現在の世界第2位のコーヒー生産国としての地位を確立しました。

ベトナムコーヒーの独特な味わいを生み出す要因の一つが、このロブスタ種の特性を活かした栽培方法と抽出スタイルにあるのです。
アラビカ種とロブスタ種は、その味わいと香りに大きな違いがあります。この違いがベトナムコーヒーの個性的な味わいを形作っているのです。
アラビカ種は繊細で複雑な風味が特徴です。フルーティーな酸味やフローラルな香り、ナッツのような香ばしさ、チョコレートを思わせるコクなど、多彩なフレーバーを持っています。産地や精製方法によって異なる個性を見せ、浅煎りでは柑橘系の爽やかな酸味が、中煎りではキャラメルやナッツの甘さが、深煎りではダークチョコレートのようなビターな味わいが楽しめます。
一方、ロブスタ種は力強い苦味と厚みのあるボディが特徴です。アラビカ種のような華やかさや複雑さはありませんが、力強くパンチの効いた味わいが魅力です。「土のような」と表現される独特の香りがあり、深煎りにすることでその苦味がさらに際立ちます。
両者の大きな違いの一つがカフェイン含有量です。ロブスタ種はアラビカ種の約2倍のカフェインを含んでいます。このカフェイン量の違いが、ロブスタ種の強い苦味の一因となっています。
ただし、ロブスタ種特有の苦みはカフェイン量だけでなく、クロロゲン酸類と呼ばれる成分の影響も大きいとされています。
この強い苦味と濃厚な味わいが、ベトナムコーヒーにコンデンスミルク(練乳)を加えて飲むスタイルを生み出しました。苦みの強いロブスタ種のコーヒーに甘いコンデンスミルクを入れることで、絶妙なバランスの味わいが生まれるのです。

あなたはどちらの味わいが好みですか?酸味と複雑さを楽しみたいならアラビカ種、力強い苦味とコクを求めるならロブスタ種がおすすめです。
ベトナムコーヒーの独自性は、使用される豆の種類だけでなく、その抽出方法と飲み方にもあります。
ベトナムでは「カフェ・フィン」と呼ばれる金属製の独自フィルターを使ってコーヒーを抽出します。このフィルターは、フランス植民地時代に使われていたパーコレーターをアレンジして作られたものと言われています。
ロブスタ種の強い苦味を活かすため、ベトナムコーヒーは一般的にコンデンスミルク(練乳)を加えて飲みます。コーヒーの下にコンデンスミルクが沈んだ状態で提供され、かき混ぜて飲むのが一般的です。
ベトナムでは、伝統的なコンデンスミルク入りコーヒーの他にも、様々なユニークなコーヒースタイルが楽しまれています。
エッグコーヒーは卵黄、砂糖、加糖練乳を加えた独特のコーヒーで、ヨーグルトコーヒーはヨーグルト、砂糖、加糖練乳を加えたものです。これらのアレンジは、ロブスタ種の強い苦味と力強い風味を活かした、ベトナム独自のコーヒー文化の表れと言えるでしょう。
一方、アラビカ種は主にスペシャルティコーヒーとして、より繊細な味わいを求める層に向けて提供されています。ベトナムのカフェ文化の多様化に伴い、アラビカ種を使った高品質なコーヒーの需要も徐々に高まっています。
ベトナムコーヒーの魅力を最大限に引き出すためのポイントをご紹介します。
まず、豆の選び方です。ロブスタ種の力強い風味を楽しみたいなら、深煎りのベトナム産ロブスタ豆を選びましょう。より繊細な味わいを求めるなら、ベトナム産のアラビカ豆も試してみる価値があります。
抽出方法としては、本格的なベトナムコーヒーを楽しむなら「カフェ・フィン」の使用がおすすめです。ゆっくりと時間をかけて抽出することで、豆の特性を十分に引き出せます。
ロブスタ種を使う場合は、コンデンスミルクとの相性が抜群です。甘さと苦味のバランスが絶妙なハーモニーを生み出します。アレンジとしては、エッグコーヒーやココナッツコーヒーなど、ベトナム独自のスタイルも試してみると新たな発見があるでしょう。
あなただけのベトナムコーヒーの楽しみ方を見つけてみませんか?
ベトナムコーヒーで使われるアラビカ種とロブスタ種、それぞれの特徴と違いについて解説してきました。
アラビカ種は繊細で複雑な風味が特徴で、ベトナムでは主に高地で栽培されています。一方のロブスタ種は力強い苦味とコクが特徴で、病害虫に強く低地でも栽培可能なため、ベトナムのコーヒー生産の90%以上を占めています。
ベトナムコーヒーの独特な味わいは、ロブスタ種の特性を活かした抽出方法と、コンデンスミルクを加えるという飲み方によって生み出されています。
両者の違いを知ることで、あなたの好みに合ったコーヒーを選ぶ目が養われるでしょう。ぜひ、ベトナムコーヒーの奥深い世界を、アラビカとロブスタ、両方の視点から楽しんでみてください。
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