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コラム

ベトナムでスターバックスが苦戦する理由と現地コーヒー文化

世界的に人気を誇るスターバックスですが、コーヒー大国ベトナムでは意外にも苦戦を強いられています。2013年2月にベトナム市場に進出したスターバックスは、当初、現地のコーヒーチェーンにとって大きな脅威になるとの見方が多数でした。

しかし、進出から10年以上が経過した2025年現在、ベトナム国内の店舗数はわずか49店舗程度にとどまっています。これは、他の東南アジア諸国と比較しても非常に少ない数字です。

ベトナムの街角にある伝統的なカフェの風景

一方、ベトナム国内のコーヒーチェーンは圧倒的な店舗数を誇っています。Highlands Coffeeは1100店舗以上、Trung Nguyen Coffeeは1200店舗以上を展開。さらに、スターバックス進出後に誕生したThe Coffee HouseやPhuc Long Coffeeといった新興チェーンも、すでにスターバックスの店舗数を上回っているのです。

なぜ、世界的な人気ブランドであるスターバックスがベトナムで思うように店舗数を伸ばせないのでしょうか?

ベトナム独自のコーヒー文化と嗜好

ベトナムは世界第2位のコーヒー輸出国として知られています。フランス植民地時代から続く歴史の中で育まれたコーヒー文化は、ベトナム人の日常生活に深く根付いています。

ベトナムコーヒーの最大の特徴は、その濃厚さと独特の味わいにあります。ベトナムで生産されているコーヒー豆の97%はロブスタ種。このロブスタ種は、すっきりとしたキレがあり、カフェイン量が高く、酸味が弱く苦味が強いという特徴を持っています。

伝統的なベトナムコーヒーの淹れ方とフィン

ベトナム人は、このロブスタ種の深い苦味を好み、独自の抽出器具「フィン」を使って淹れたコーヒーに練乳を加えて飲む「カフェ・スア」というスタイルが一般的です。この濃厚な苦味と甘さのコントラストが、ベトナム人の舌に合っているのです。

一方、スターバックスで提供されているのは、フルーティーな香りで苦味が少ないアラビカ種のコーヒーです。スターバックス・ベトナムのCEOは「世界のどの国でも同じ風味を提供する」という方針を掲げており、ベトナムの飲食文化やベトナム人の嗜好に合わせたローカライズを行っていません。

ロブスタ種の深い苦味に慣れているベトナム人にとって、アラビカ種で作られたスターバックスのコーヒーは物足りないと感じる人が少なくないのです。「スタバのドリンクメニューに飲みたいものがない」「スタバのコーヒーは自分が思うコーヒーではない」という声もよく聞かれます。

価格競争力の問題

ベトナムのコーヒー市場におけるスターバックスの苦戦理由として、価格の問題も見逃せません。ベトナムでは、街のいたる所にカフェが溢れ、誰もが気軽に低価格のコーヒーを楽しめる環境が整っています。

ローカルのコーヒーショップでは、1杯1ドル(約150円)程度でコーヒーを提供しています。一方、スターバックスのコーヒーは、最も安いアメリカーノ(グランデサイズ)でも8万4000ドン(約512円)と、現地の価格帯と比較すると割高感は否めません。

ベトナムの街角カフェでくつろぐ人々

ベトナムのローカルコーヒー企業は、コーヒー豆の生産から販売までを一貫して行えるという大きなメリットを持っています。これにより、自社でコーヒーの品質管理がしやすく、中間コストも削減できるため、低価格での提供が可能になっているのです。

さらに、ベトナム人は「コーヒーを飲む」という行為そのものを楽しむ文化があります。街角の小さなカフェで友人と語らいながら、ゆっくりとコーヒーを楽しむ時間を大切にしています。この文化的背景も、スターバックスのようなグローバルチェーンが浸透しにくい要因の一つと考えられます。

ベトナム人にとって、コーヒーは単なる飲み物ではなく、日常生活の一部であり、文化そのものなのです。

ベトナムのコーヒーチェーン事情

ベトナムのカフェ市場全体は、2023年時点で約590兆ドンに達していると推計されています。年率10~12%程度の成長が続いており、今後も拡大が見込まれる有望な市場です。

この市場で首位を走るのは、Highlands Coffeeです。店舗数・売上高ともにトップを維持しており、2019年7月末時点で1124店舗を展開しています。2位争いは当初The Coffee HouseやStarbucksが有力でしたが、Phuc Long Coffee & Teaが急成長し、売上面で第2位に浮上したとみられています。

エッグコーヒーやココナッツコーヒーなどベトナム独自のコーヒーバリエーション

ベトナムのコーヒーチェーンの強みは、ベトナム人の嗜好に合わせた独自のメニュー開発にあります。例えば、卵白と練乳を泡立てたクリームをコーヒーに乗せた「エッグコーヒー」や、ココナッツミルクを加えた「ココナッツコーヒー」など、ベトナム独自のコーヒーバリエーションを提供しています。

また、ベトナム人は個人経営の隠れ家的なカフェを好む傾向もあります。街のあちこちに点在する個性豊かなコーヒー専門店や喫茶店は、それぞれが独自の魅力を持ち、固定客を獲得しています。

このように、ベトナムのコーヒー市場は非常に競争が激しく、スターバックスのようなグローバルチェーンが簡単に参入できる環境ではないのです。実際、オーストラリアのコーヒーチェーンGloria Jeansは、2017年にベトナムから完全撤退しています。

スターバックスのベトナム戦略と今後の展望

スターバックス・ベトナムは「できるだけ早めに店舗網を広げる」ことを目指していないようです。むしろ、都市部を中心に慎重に出店戦略を進めています。

ホーチミンやハノイといった大都市では、若い層を中心にスターバックスの利用者も徐々に増えているようです。特にホーチミンの中心部には至る所にスターバックスがあり、テーブルのサイズも大きく、日本よりもゆったりとした空間を提供しています。

また、ベトナムのスターバックスでは、現地の暑い気候に合わせてアイスドリンクが主流となっています。さらに、ココナッツミルクを使ったいちごのリフレッシャーや、TEVANAの茶葉を使った冷たいドリンクなど、フレーバーバリエーションも充実しています。

フードメニューも他国と比べて充実しており、パスタやパン、デザートなど幅広い品揃えが特徴です。さらに、ベトナムの都市をデザインしたマグカップやタンブラーも多数販売されており、観光客向けのお土産としても人気を集めています。

スターバックスは、コーヒーのサードウェーブが到来しつつあるベトナムの都市部において、徐々に顧客層を拡大している段階と言えるでしょう。今後は、ベトナム人の嗜好に合わせたメニュー開発や、現地コーヒー文化との融合が、さらなる成長のカギとなりそうです。

まとめ:異なるコーヒー文化の共存

ベトナムでスターバックスが苦戦している理由は、深い歴史と独自の発展を遂げたベトナムのコーヒー文化にあります。ロブスタ種の深い苦味を好むベトナム人の嗜好、低価格で提供される現地のコーヒー、そして日常生活に溶け込んだカフェ文化が、グローバルチェーンの浸透を難しくしているのです。

しかし、都市部を中心に若い世代の間では、スターバックスのような国際的なカフェチェーンの人気も徐々に高まっています。ベトナムのコーヒー市場は、伝統的なコーヒー文化と新しいカフェ文化が共存する、多様性に富んだ市場へと発展しつつあるのです。

コーヒー大国ベトナムを訪れる際には、スターバックスだけでなく、現地のカフェで「フィン」を使って淹れる本場のベトナムコーヒーも是非体験してみてください。そこには、グローバルチェーンでは味わえない、ベトナム独自のコーヒー文化が息づいています。

ベトナムの活気ともに事業を伸ばしていく。
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