FEATURE
05

ベトナム最大の都市・ホーチミン市は食の宝庫です。
年間を通して常夏の東南アジアらしい強い日差しの下で、バイクが絶え間なく走る通りにはプラスチックの小さな椅子に腰掛けて食事をする人たちが並びます。
一方でそびえる高層ビルには高級レストランが入り、屋上では洗練されたルーフトップバーが客を出迎えます。その足元では昔ながらの食堂が営業し、数メートル先の小道にはバイクで引いた屋台が並ぶという新旧混濁した街、それがホーチミンです。
この街での食事スタイルは、大きく分けて屋台、食堂、レストランの3つに分類されます。
屋台は路上に椅子とテーブルを並べただけのスタイルで、朝、昼、夜の食事時間帯にそれぞれ出現します。営業年数の長い有名店はグーグルマップにも載っていますが、その多くは不掲載です。そして基本的に売り切りスタイルなので食材が無くなったら閉店し、いなくなってしまいます。お店探しが宝探しのようです。
食堂は日本でいう大衆食堂のような雰囲気で、定食屋か麺料理屋などの一品特化型のお店が多いです。朝早くから開いている朝ごはん専門のお店や、狭い店内に入りきらない程の人気店ではしばしば路上にはみ出して営業している所もあります。夜になると食堂が飲み屋に様変わりしてローカルの楽しそうな声が響く場所です。
レストランはほぼ日本と同じです。空調の効いた店内で、メニューにはたくさんの料理が並びます。多くの店には英語や日本語のメニューも置いてあります。国際都市だけあって観光客に慣れている店員さんが多いので行きやすいです。ベトナム人にとってレストランは特別な日に利用する高級な場所というイメージで、誕生日などのパーティーを開いていることもあります。
| 店舗の特徴 | メニュー | 価格帯 | |
| 屋台(路上店) | 持ち帰り専門か路上に椅子とテーブルを並べている | おやつ系やバインミー、シンプルな麺料理など | 150円から350円程度 |
| 食堂 | 店舗が小さくオープンエアーな半屋外の店が多い | 庶民的なベトナム料理屋、飲み屋など | 500円から2,500円程度 |
| レストラン | 空調のしっかり効いた屋内 | 地方の名物料理や高級なベトナム料理など | 2,500円から10,000円程度 |

価格は日本と比べると、だいたい半分から高くても3分の2程度です。ローカルに寄れば寄るほどその安さに驚くことでしょう。ベトナムは日本に比べて外食の機会が非常に多い国です。共働きの世代が多いですし、住宅事情の問題で家にキッチンがない無いという人も多いので、自炊をせずに毎食を外食することが文化として根付いています。
そのため、食事の価格帯もピンからキリまで充実しているのです。
バックパッカーの為のホテルが集まるファングラーオ通りにある24時間営業の人気店です。
たくさんの種類のフォーが一杯500円ほどで選べるほか、朝ごはんにぴったりな目玉焼きとパンだけのメニューが180円で頼めたりと旅人たちのオアシス的なお店です。
人気メニューは「フォーボーコー」と呼ばれるフォー入りのビーフシチュー。シチューといっても日本の物ほどとろみは強くなく、サラッとしたスープです。ホロホロに煮込まれた牛肉と西洋料理を感じさせる香草の香りがフランス統治時代を思わせるようなベトナムらしい一品です。
ボーコーはフォーの代わりにパンセットで注文するのもおすすめです。パンをスープに浸して食べると軽めのパンが何個でも食べられてしまいます。もちろんパンを単体で追加注文することも出来るので、フォーを食べた後に頼むのもいいでしょう。心ゆくまで堪能できますよ。
観光客にも大人気でいつも混んでいる、ホーチミンでバインセオを食べるならここ!という有名店です。店先にたくさんの鍋が並び、次から次へと焼いている様子は見ごたえがあります。
米粉にターメリックを混ぜて焼いた薄い生地にエビや豚肉、もやしがぎっしり詰まっています。レタスやわさび菜などいくつかの種類の葉っぱがたくさん出てくるので、一口サイズに切ったバインセオを葉っぱでくるんで食べてください。そのままでも塩コショウで味が付いていますが、ヌクマム(ベトナム定番の魚醤)などの卓上調味料を駆使するとよりアジアな味わいを楽しめます。
2人前のエクストラサイズを頼んでも1,000円ほどと安いですが、びっくりするほど大きいので2人で食べてもかなり満腹になります。他のメニューも食べたい時や、昼食を軽くと考えているなら1人前のレギュラーサイズをシェアする方がいいかもしれません。
写真付き、英語併記のメニューもあるので注文は安心です。生春巻きや揚げ春巻きなどは10本セットでメニューに載っていますが、店員さんに頼むと5本セットで半額にしてくれますよ。
ローカルご飯の名店が集まっていることで有名なグエンティミンカイ通りから、一本細路地の中に入ったこちらの店は提供しているメニューがそのまま店名という小さいながら地元民に愛された名店です。
ベトナム南部の名物料理「ブンティットヌン(bun thit nuong)」はそうめんの様に細い米粉麺の上に豚の焼肉、揚げ春巻き、なます、ピーナッツなどが載った汁なしの混ぜ麺です。テーブルにプラスチック容器に入ったタレがあるのでそれをおたま1杯分かけて食べます。ベトナム感の強い甘めのスープが癖になる食べ応え満載な一品です。
11時まではモーニングメニューとして「バインクオン(banh cuon)」という蒸し春巻きのみの提供になります。モチモチの皮の中にひき肉がたくさん詰まっていて、丁寧に巻かれた技術にも感動します。

かわいらしいカニの看板が目印のカニ料理専門店です。近年、移転・改装したので食堂でありながらレストランの様にきれいで広い店内は清潔感があって安心です。
ベトナムで食べるカニは主に「CUA(クア)」と言われる淡水ガニです。こちらでは生きたカニも売っていて、様々なカニ料理が楽しめますが、おすすめは「BANH CANH CUA(バンカンクア)」というベトナム風のカニうどん。
うどんの様な見た目ですがタピオカ麺なので、プチプチとした歯切れの良さがあります。ほぐしたカニの身がたくさん入っていて、カニの出汁が効いたスープが本当に美味しいです。中華揚げパンに汁をたっぷり浸して食べると口の中でジュワッと溢れて病みつきになります。カニをたっぷり味わって一杯500円ほどなのでお得感が嬉しいです。
美味しそうなお店を見つけたら、遠慮なく入りましょう。
案内を待たずに空いている席に座って大丈夫です。入店時にスタッフに一声かける感じで(指さしでテーブルを指せばでOK)着席しましょう。これで入店は完了です。
写真つきメニューや英語のメニューがあれば、指さしでも簡単に注文できます。メニューがベトナム語しかなくて分からなくても、隣の人が食べているものなどを指さしでジェスチャーしましょう。これで多分通じるはずです。
ガイドブックの写真やスマホで料理の写真などを見せるのも効果的です。バインミーの屋台などは具材を指さしなどで頼めば適当に作ってくれます。意図した注文と違ってもそれは愛嬌ってことで美味しくいただきましょう。
食堂などの箸や取り皿が気になる場合はウェットティッシュで拭いてから使うようにしましょう。これはベトナム人も普通にすることなのでマナー違反にはなりません。お店のウェットティッシュは基本的に有料です。1つ30円ほどで、使った分だけ請求されます。
日本の様に無料のお水が出されることはありません。そのかわり、ペットボトルなどを持ち込むのは大丈夫です。
基本的にどこのお店でも卓上に数種類の調味料、唐辛子、ライムなどが置いてあります。そしてフォーなどの麺料理は注文すると山盛りのハーブ類が運ばれてきます。それらを駆使して好みの味を自分で作り上げるのがベトナム流です。あれこれ試してみましょう。ただ葉物は店によっては状態の良くないものが混じっている場合もあるので、しっかり選別してから千切って使うと良いでしょう。
ベトナムではお皿を持ち上げて、器に直接口を付けるのはマナー違反になります。汁物はスプーンなどを使って口に運ぶようにしましょう。また麺をすする行為もマナー違反になるので、食事中はなるべく音を立てないようにしましょう。
会計は基本的に席に座ったままで行います。お金を払う仕草をするか、手のひらを広げて反対の手の人差し指で横に「~~」の様に波型を書くジェスチャーをすると通じます。もしくは「ティン ティエン」と言いましょう。ティン ティエンとはベトナム語でお会計という意味です。
通じれば食事代が書かれた紙やレシートなどを持ってきてくれます。基本的に会計は席で済ませればそのまま帰って大丈夫です。日本のようにレジがある所はまだ少なく、ローカルの食堂ではほとんどありません。

ホーチミンには本当にたくさんのお店がありますので、街歩きをする中で美味しそうな匂いに惹かれることもあるでしょう。知らないお店に飛び込んで食べてみたい。そんな時、おいしいお店かどうかを見分けるコツがあります。
まず客で賑わっているかどうかです。地元民が多く集まる店は、味も価格も間違いありません。本当においしいベトナム料理が食べたければ、観光客ばかりの店よりも地元の人たちが日常的に利用している店を選ぶ方が賢明です。
また賑わっているお店は回転率も高いので、食材が新鮮です。ベトナムでは食材を常温保存している所がまだまだ多いので、鮮度はおいしさの重要なポイントになります。客の出入りが多い店ほど、食材の鮮度が保たれている可能性が高くなります。
まずは卓上調味料の保存状態など、テーブル周りを見ると清潔度がうかがえます。清潔さに気を配っているお店は調理にも気を配っている所が多いので期待できます。さらに調理場を見てみるのもいいでしょう。食材の扱い方や調理過程は衛生面での良い判断材料にもなります。
お店の床がゴミだらけで驚くことがあるかもしれません。ベトナムでは習慣として、テーブルの下にゴミを捨てることが普通です。もちろんゴミ箱が設置されている所ではゴミ箱に入れます。一見、不衛生に見えますが、営業終了後に水を撒いてまとめて掃除する所が多いので、ゴミの多さは繁盛店の証でもあります。
ベトナムの食堂には、それぞれ得意な時間帯があります。朝食専門の店、ランチタイムのみ営業の店、夜だけ開く屋台など、時間帯によって営業スタイルが異なります。味が一番安定しているのは、そのお店が一番賑わっている時間帯なのです。また、閉店間際に行くと売り切れているメニューも多いです。
特にフォーなどの麺料理は朝食として食べることが多いため、朝早い時間帯に訪れるのがおすすめです。夕方以降は閉まっている店も多いので注意しましょう。

思わず写真を撮りたくなるような立派な内装のレストランから、炉端の七輪で焼かれた屋台グルメまで。ホーチミンでは街の中心部で様々なグルメを楽しむことが出来ます。
中でも食堂は店員や他の客との距離が近く、よりベトナムらしさを感じることが出来ます。
ベトナム語が話せなくても身振り手振りでコミュニケーションを取って、初めて食べる料理を楽しんでいる時、味だけでなく街の一部に溶け込んでいる感覚を楽しめることでしょう。
さあ、あなたもホーチミンの食事を心ゆくまで楽しんでください。
小さなプラスチックの椅子に腰掛けて、この街のリズムを感じながら、絶品のベトナム料理を味わう時間は、きっと忘れられない思い出になるはずです。
コメント