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ハノイの朝は、フォーの香りで目覚める。
路地裏の小さな店から湯気が立ち上り、プラスチックの椅子に腰掛けた地元の人々が黙々と麺をすする。観光地として整えられていない、生活の中に溶け込んだフォー文化がここにはあります。ベトナムの首都ハノイは、フォー発祥の地として知られ、牛骨を何時間も煮込んだ透明で軽やかなスープが特徴です。南部のホーチミンとは異なり、あっさりとした味付けに新鮮なハーブを控えめに添えるスタイルが主流で、素材本来の味わいを大切にしています。
旧市街を歩けば、数メートルおきにフォー屋の看板が目に入る。どの店も朝6時から営業し、昼過ぎには売り切れて閉店することも珍しくありません。地元民が通う名店は、観光ガイドブックには載っていないことも多く、看板すら目立たない路地の奥にひっそりと佇んでいます。
本記事では、ハノイで絶対に食べたいフォーの名店10軒を厳選してご紹介します。ミシュラン掲載店から地元民だけが知る隠れた名店まで、アクセス情報・営業時間・人気メニューとともに詳しく解説していきます。
フォーはベトナム全土で愛される国民食ですが、ハノイのフォーには他の地域とは異なる独自性があります。
透明で軽やかなスープ。これがハノイのフォーを象徴する最大の特徴です。牛骨をシナモン、八角、クローブなどのスパイスと共に何時間も煮込みますが、油や脂肪で味を圧倒することはありません。その結果、牛肉とハーブの自然な味を際立たせる、さっぱりとしたスープが生まれます。

ハノイのフォーは通常、米麺、薄くスライスした牛肉、軽やかで透明なスープという少数の食材のみで提供されます。コリアンダーやネギなどの新鮮なハーブは控えめに加えられ、このミニマリズムによってスープと牛肉の風味が際立ちます。
南部のホーチミンでは、ホイシンソースやスリラチャなどの幅広い追加調味料やトッピングを含む可能性がありますが、ハノイのフォーは通常これらの追加なしで提供されます。焦点は、スープと肉の繊細な味のバランスにあり、追加の調味料は食べる人の裁量で加えられます。
ハノイでフォーが準備され、提供され、消費される方法は、この都市の歴史と料理遺産への深いつながりを反映しています。多くのフォーレストランは家族経営で、レシピは世代を通じて受け継がれ、フォーの一杯一杯を都市の生きた伝統の一部にしています。
プラスチックの椅子に座り、周囲の会話を聞きながら食事をする時間は、観光というより滞在に近い感覚です。
旧市街のバッダン通りに位置するこの店は、2024年にミシュランガイドに掲載されたばかりの名店です。ハノイNo.1の呼び声も高く、朝6時の開店直後から地元民と観光客で賑わいます。
メニューはたった3種類。TAI NAM(半生+煮込みの牛バラ肉、60,000ドン/約365円)、TAI(軽く湯通しした半生の牛肉、55,000ドン/約335円)、CHIN(良く煮込んだ牛肉、50,000ドン/約305円)のみというシンプルさが、逆に味への自信を物語っています。
牛肉の旨みが滲み出たスープは、余計なものが入っていない味で、たっぷりと入った牛肉は驚くほどの量です。狭くて暑いローカル感満載の店内ですが、その分本物の味が楽しめます。中途半端な時間を狙えば、行列を避けられる可能性があります。
住所:10 Ng. Đào Duy Từ, Hàng Buồm, Hoàn Kiếm, Hà Nội
営業時間:6:00〜12:00(午前中で売り切れることも)
創業45年を誇る老舗で、ハノイ市内に1日2,500人が訪れるという驚異的な人気店です。日本にも池袋、新宿、吉祥寺に店舗を展開しており、その味は国際的に認められています。
この店の最大の特徴は、牛肉を玉ねぎ、ニンニク、新鮮な生姜と炒めてからボウルに加える独自の調理法です。通常のフォーが牛肉をスープで軽く湯通しするのに対し、Phở Thìnでは牛肉を炒めることで香ばしさと旨味を最大限に引き出しています。その結果、スープも濃厚で、上に風味豊かな脂肪の層があり、パンチの効いたガツン系のフォーが完成します。

テーブルにはニンニク酢、唐辛子、ライムなど自由にカスタムできる調味料が並び、自分好みの味に調整できます。価格は1杯約60,000ドン(約350円)前後で、朝イチの来店が行列を避けるコツです。
住所:13 Lò Đức, Hai Bà Trưng, Hà Nội
営業時間:6:30〜20:30(朝は大行列)
出典 株式会社ワンダーテーブル「Pho Thin TOKYO吉祥寺店オープン」(2023年6月)より作成
ホアンキエム湖近くのリークオックスー通り10番地に位置する、本格的で風味豊かな牛肉麺スープで称賛される名店です。スープは牛骨を何時間も煮込んで丁寧に準備され、人工添加物を使用せずに自然な甘みと旨味を生み出しています。
柔らかい牛肉のスライスから新鮮な米麺まで、各成分は調和のとれた満足のいくフォーのボウルを保証するために注意深く選ばれています。tai(レア牛肉スライス)、chin(よく煮た胸肉)、nam(フランク牛肉)、bap tran(牛フィレ)など、様々なフォーオプションを専門としています。
このブランドは長年にわたり市内の複数の場所に拡大してきましたが、本店の味は格別です。
住所:No. 10 Ly Quoc Su Street, Hoan Kiem District
営業時間:6:00〜14:00、17:00〜22:00
価格帯:50,000〜130,000ドン/杯
旧市街の細い路地にひっそりと佇むこの店は、フォーではなくブンモクの専門店ですが、ハノイのローカルフード文化を語る上で欠かせない存在です。鶏団子と筍スライスの米粉麺スープヌードルは、優しい味付けで朝ごはんに最適です。
つみれもスープもたまらなく美味しく、個人的ハノイお気に入りローカル店ベスト3に入るという声も多数。車が入れない細い路地にあるため、タクシーで近くまで行って歩く必要があります。営業時間がお昼までなので注意が必要です。
住所:10 Ng. Đào Duy Từ, Hàng Buồm, Hoàn Kiếm, Hà Nội
営業時間:早朝〜12:00頃(売り切れ次第終了)

ローカル感満載ですが、ミシュラン掲載の実力店です。汁なし鶏フォー混ぜ麺が絶品で、早朝も深夜もやっているという驚異的な営業時間が特徴です。
店内はいつも混雑していますが、調理場が見える配置になっており、清潔感があります。値段も手頃で、地元民に愛される理由がよくわかります。
住所:5b P. Phủ Doãn, Hàng Trống, Hoàn Kiếm, Hà Nội
営業時間:早朝〜深夜(ほぼ24時間営業)
ナッツも入っていて食感も楽しい、日本人は絶対好きな味の混ぜ麺専門店です。野菜もお肉も入った甘辛具沢山混ぜ麺は、改装されて外国人観光客の方も行きやすい雰囲気になりました。
大忙しな大人気店で、ランチタイムは特に混雑します。しかし、回転が早いため待ち時間は比較的短く済みます。
住所:73-75 Hàng Điếu, Cửa Đông, Hoàn Kiếm, Hà Nội
営業時間:10:00〜21:00
フォーではありませんが、ハノイのローカルフードを語る上で欠かせないバインミーの名店です。どのガイドブックにも載っている知らない人はいない名店で、待ち列も珍しくありません。
注文は道路側で行い、道を挟んで向かいにイートインスペースがあります。アボカドスムージーやマンゴースムージーもめっちゃ美味しいと在住者の間で人気です。行く度に欧米人客が7割くらい占めていて、スタッフさんは超外国人慣れしています。
住所:25 P. Hàng Cá, Hàng Bồ, Hoàn Kiếm, Hà Nội
営業時間:7:00〜22:00
大聖堂近くのワゴンで販売されているバインミーは、ベトナム人の方々からの人気が高い店です。安くて美味しく、5,000ドンのハチミツバターバインミーも絶品です。
隣のカフェでドリンクを頼んでイートインさせてもらうこともできます。ベトナムのカフェは持ち込み可能なところが多いため、このスタイルが一般的です。
住所:54 P. Lý Quốc Sư, Hàng Trống, Hoàn Kiếm, Hà Nội
営業時間:7:00〜20:00
フォーを食べた後のデザートに最適なプリン専門店です。日本のプッチンプリンより好きという声も多く、気軽に入れるお店として地元民に愛されています。

ベトナム北部ではフランス語の影響でカラメンと呼ぶことが多く、アメリカの影響の強い南部はバインフランと呼ばれることが多いそうです。その辺でご飯を済ませて、「あー、ちょっとでいいんだけどスイーツ食べたいなぁ」という時に最適です。
プリン1個だけ注文して店内で食べることも可能で、他のココナッツ系のメニューもあります。ベトナム人の方はバイクで乗り付けて、よく大量にプリンを買って帰っています。
住所:5 P. Nguyễn Trường Tộ, Nguyễn Trung Trực, Ba Đình, Hà Nội
営業時間:8:00〜22:00
赤い看板のある通路を抜けると広い空間が広がる、トマト感がしっかりあるブンジュウの専門店です。酸味が少しあって暑い時期に最適で、なんと2万ドン(約120円)という驚きの安さです。
朝行った時、野菜がシャキシャキでキレイでした。ドンスアン市場から近いので、市場に行くついでに立ち寄るのがおすすめです。
住所:14 P. Hàng Lược, Hàng Mã, Hoàn Kiếm, Hà Nội
営業時間:6:00〜14:00
The ローカルという雰囲気の店で、せっせと作っている姿が見える調理場が魅力です。ブンチャーはつけ麺のように食べる料理で、米粉麺と野菜やハーブを肉の入った汁へつけていただきます。
揚げ春巻きとのセットがおすすめで、サクッとしていて身もぎっしり詰まっています。そのままでも良し、汁につけても良し。店によって肉はスライス肉だったり、ハンバーグのような形状だったり様々です。
住所:34 Hàng Than, Ba Đình, Hà Nội
営業時間:10:00〜20:00
ハノイのフォーを最大限に楽しむためには、いくつかのポイントがあります。
テーブルに置かれた野菜やハーブは、フォーに入れて食べるのが基本です。バジル、コリアンダー、ライムのくし切りなどをスープに加えることで、香りと味わいが一層豊かになります。ただし、ハノイのフォーは控えめな味付けが特徴なので、入れすぎには注意しましょう。
ニンニク酢、唐辛子、魚醤などの調味料を少しずつ加えて、自分好みの味に調整できます。最初は何も加えずに本来の味を楽しみ、その後少しずつ調味料を足していくのがおすすめです。
フォーは朝食として食べるのが一般的で、多くの店は朝6時から営業しています。早朝に訪れると、地元の人々と一緒に新鮮なフォーを楽しめます。ただし、人気店は昼過ぎには売り切れることも多いので、早めの来店がおすすめです。
ハノイのフォーは、単なる料理ではなく、この街の文化そのものです。
ミシュラン掲載の実力店から地元民だけが知る隠れた名店まで、それぞれの店に独自の味と歴史があります。透明で軽やかなスープ、シンプルな食材構成、そして何世代にもわたって受け継がれてきた家族の味。これらすべてが、ハノイのフォーを特別なものにしています。
旧市街の細い路地を歩き、プラスチックの椅子に座り、周囲の会話を聞きながら食事をする。その時間こそが、ハノイという都市を理解する最良の方法かもしれません。予定を詰め込みすぎず、歩く時間、立ち止まる時間を多く取ることで、この街の本質が見えてきます。
地図に載らないカフェ、偶然入った路地、何気ない風景。その一つひとつが、ハノイという都市を形づくっています。フォーを通じて、ハノイの静かなリズムを感じてみてください。帰る頃には、その余韻が身体に残り、ふとした瞬間に思い出すはずです。
ハノイを訪れたら、ぜひ本場のフォーを堪能してください。一杯のフォーが、あなたのハノイ体験を忘れられないものにしてくれるでしょう。
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