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毎朝の一杯から、仕事の合間のリフレッシュまで。実は日本は世界第3位のコーヒー輸入国であり、その消費量は世界的に見ても高い水準を誇ります。2024年の日本のコーヒー消費量は約40万トンに達し、前年比でもほぼ横ばいの堅調な推移を見せています。
では、私たちが日々口にするコーヒーは、どこから来ているのでしょうか?
この記事では、日本のコーヒー輸入の実態を徹底解説します。主要産地の特徴から最新の市場動向、さらには国際情勢が及ぼす影響まで、データに基づいた正確な情報をお届けします。
日本のコーヒー輸入は、明治時代の開国とともに始まりました。現在では世界中のさまざまな国から豆を輸入しており、その規模は年々拡大しています。
2024年のコーヒー生豆の輸入量は約36万トンに達しました。これは60kg入りの袋に換算すると約600万袋に相当する膨大な量です。日本は世界第4位の消費国として、グローバルなコーヒー市場において重要な位置を占めています。

輸入されるコーヒーの形態も多様化しています。生豆が中心ですが、レギュラーコーヒーやインスタントコーヒー、コーヒーエキスなども輸入されており、消費者のニーズに応じた多様な製品が市場に流通しています。
近年注目されているのがデカフェコーヒーの輸入増加です。健康志向の高まりとともに、カフェインレスコーヒーの需要が着実に伸びており、輸入統計にもその傾向が反映されています。
日本のコーヒー輸入量で断トツの1位はブラジルです。2024年の輸入量は約14万6千トンに達し、全体の約40%を占めています。
ブラジルは世界最大のコーヒー生産国でもあり、世界シェアの約3分の1を生産しています。広大な国土と理想的な気候条件により、高品質なアラビカ種を安定的に供給できる点が強みです。酸味と甘みのバランスが良く、クセのない味わいが日本人の嗜好に合致しています。
コストパフォーマンスにも優れており、ブレンド豆のベースとしても広く使用されています。
第2位はベトナムで、輸入量は約10万トンです。世界第2位の生産国であるベトナムは、ロブスタ種の最大生産国として知られています。
ロブスタ種は苦味が強くコクのある味わいが特徴で、インスタントコーヒーやエスプレッソブレンドに欠かせません。日本ではあまり馴染みがないかもしれませんが、缶コーヒーやブレンド用として大量に輸入されており、実は私たちの生活に深く浸透しています。

ベトナム政府もコーヒー産業を重要な輸出品目と位置づけており、生産拡大に力を入れています。
第3位はコロンビアで、輸入量は約4万7千トンです。コロンビアは高地で栽培されるマイルドなアラビカ豆で世界的に有名です。
豊かなコクと酸味の中に際立つ甘みを感じるバランスの取れた飲みやすさが特徴で、日本でも高い人気を誇ります。エメラルドマウンテンのような高級ブランドも日本市場で確固たる地位を築いています。
コロンビアでは農家の約4分の1がコーヒー生産に関わっており、国を挙げてのコーヒー産業が確立されています。
第4位のインドネシアからは約2万5千トンを輸入しています。マンデリンやトラジャといった高級銘柄が有名で、独特の香りと重量感のあるコクが人気です。
スマトラ島やスラウェシ島など、島ごとに異なる風味特性を持つ豆が生産されており、スペシャルティコーヒー市場で高い評価を得ています。
グアテマラは第5位で約2万トンの輸入量です。世界の生産量では11位ですが、日本では非常に人気があり、喫茶店のメニューでもよく見かけます。
ホンジュラス、エルサルバドル、コスタリカ、パナマなど、中米諸国からの輸入も着実に増加しています。これらの国々は生産量こそ少ないものの、高品質なスペシャルティコーヒーの産地として注目されています。
エチオピアは第6位で約2万トンを輸入しています。コーヒー発祥の地として知られ、花や果実のような香りを持つ豆が特徴です。シダモ産のコーヒーは「コーヒーの女王」とも呼ばれています。
タンザニアは第7位で約1万3千トン。キリマンジャロのブランド名で昔から日本で根強い人気があります。世界の生産量では15位ですが、日本市場での存在感は大きいです。

ケニア、ルワンダ、ブルンジなど、他のアフリカ諸国からの輸入も増加傾向にあり、個性的な風味を求める消費者のニーズに応えています。
日本のコーヒー市場で最も顕著なトレンドが、スペシャルティコーヒーへの関心の高まりです。2018年度にはレギュラーコーヒー輸入量全体の11.0%だったスペシャルティコーヒーの比率は、その後も着実に増加しています。
消費者は「誰が、どこで、どのように育てた豆なのか」を意識するようになり、シングルオリジン(単一農園)への注目が集まっています。産地表示や焙煎プロセスの透明性を重視する「サードウェーブ・コーヒー」の流れが、日本でも定着しつつあります。
首都圏を中心に、新しいコンセプトのカフェが次々とオープンしています。コンビニコーヒーの普及により手軽にコーヒーを楽しめる環境が整った一方で、専門店では体験価値を重視した店舗が増加しています。
自家焙煎所を併設したロースタリーカフェや、バリスタが一杯ずつ丁寧に淹れるスタイルの店舗が人気を集めています。コーヒーは単なる嗜好品から、ライフスタイルの象徴へと変化しています。
健康意識の高まりとともに、デカフェ(カフェインレス)コーヒーの需要が急増しています。妊娠中や授乳中の女性、カフェインに敏感な方でも楽しめるデカフェは、輸入統計でも明確な増加傾向を示しています。
プラントベース・ラテなど、オートミルクを使った商品も拡大しており、多様なライフスタイルに対応する商品開発が進んでいます。
2025年4月、アメリカのトランプ政権が打ち出した大規模な関税政策が、世界のコーヒー市場に波紋を広げています。これまでアメリカはコーヒー生豆にほとんど関税をかけてこなかったため、まさに異例の事態です。
特にベトナム産コーヒー豆には合計46%という超高率の関税が課され、世界第2位の生産国であるベトナムにとっては大打撃となる可能性があります。インドネシアにも32%の関税が課されました。
この影響で、米国向け輸出が減少したベトナムやインドネシア産の豆が、ヨーロッパや日本市場に流れ込む可能性があります。ロブスタ豆の供給過多による価格下落が予測される一方、アラビカ種の価格は不安定な動きを見せています。
コーヒー産業は気候変動の影響を大きく受けています。地球温暖化により気温が上昇し、病害虫の発生や収穫量の減少が深刻化しています。
特に高地で育つアラビカ種は温度上昇に弱く、2050年までに栽培適地が半減するとの予測もあります。各国では耐暑性品種の開発やアグロフォレストリー(森林農法)の導入など、持続可能な生産に向けた取り組みが進められています。

生産国の多くでは小規模農家が生産を担っており、価格変動や流通構造の不安定さが課題となっています。こうした中で注目されているのが、フェアトレードやレインフォレスト・アライアンス認証です。
これらの仕組みにより、生産者が適正な価格で取引できるよう支援し、環境保全と生活向上を両立させる動きが広がっています。消費者も「安さ」より「倫理的な選択」を重視するようになり、コーヒーを通じた社会的な意識変化が生まれています。
日本のコーヒー輸入は、ブラジル、ベトナム、コロンビアの上位3カ国で全体の約4分の3を占めています。しかし、スペシャルティコーヒーへの関心の高まりとともに、中米やアフリカ諸国からの輸入も着実に増加しています。
2024年の消費量は約40万トンに達し、日本は世界第4位の消費国として重要な市場です。人口減少が進む中でも消費が伸びている事実は、日本人のライフスタイルにおけるコーヒーの重要性が増していることを示しています。
今後は、国際情勢の変化や気候変動の影響を受けながらも、品質重視のスペシャルティコーヒー市場の拡大、健康志向に対応したデカフェやプラントベース商品の成長、サステナビリティへの取り組み強化が予想されます。
コーヒーは単なる飲み物を超えて、世界の多様性を映す存在です。一杯のコーヒーの背景には、生産国の気候、文化、人々の営みが凝縮されています。データを知ることで、私たちが日々口にするコーヒーの価値をより深く理解できるのではないでしょうか。
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